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第五編第一章 反乱と革命の序章
反乱と革命の序章“前奏曲”
しおりを挟む「…いいでしょう。穏やかな話ではありませんので…努努、希望など抱きませぬ様に…」
ザックの言葉に全員が息を呑む。
そしてザックがアルバムの一ページを開く。
其処に映って居たのは満面の笑みを浮かべて
気圧された様に顔を赤らめるノアの肩を抱く
エルヴィスの姿が見て取れた。
「当時二人は十歳…一足先に此のピースハウスへとやって来ていたエルヴィスと此の歳に此処を訪れたノアとのお話から…」
ザックは緩りと瞳を閉じる。
物語は十五年前に遡って行く。
ノアが十歳の頃、両親が殺された。
手を掛けたのは何とノアの兄。
両親が死に、兄はノアの前から姿を消した。
そして一人になったノアはザックに救われて
此の孤児村ピースハウスへとやって来た。
当時のノアは其の記憶に苦しみ、孤児村へ
やって来てからも一人足を抱き抱え寝室の
ベッドの上でうずくまる蹲る日々を過ごす。
其の当時、ノアを気に掛けたのはザック達
職員は当然の事だが子供達の中にもノアを
寝室から引っ張り出そうと動く子が居た。
其れが、十歳当時のエルヴィスだった。
寝室の中へと足を向けるエルヴィスの手には
食事が盛り付けられたお盆が持たれている。
「よう、ノアだっけ?少しは食わねぇと元気なんか出ねーぞ」
ノアが蹲るベッドの前で足を止めるとお盆を
置いてノアの顔を覗き込むエルヴィス。
ノアは声を発さずにエルヴィスの顔を見て
咄嗟に怯えた様にシーツを被り縮こまる。
エルヴィスがノアに声を掛けた初日は
ノアからの返答は無かった。
だが、其の日からエルヴィスは食事の度に
ノアの元へと足を運んでは食事を置いて
必死に語りかけて行く日々が始まった。
「昨日は悪かったな…。自己紹介もしないでよ。俺はエルヴィス、ノアとは同い年って聞いてるぜ?飯食ってみんなと外で遊ばねぇか?」
だが、ノアからの返答は無い。
しかし日を重ねるごとにノアの反応はほんの
少しずつでも変わって行くのだった。
食事が少しずつだが摂れる様になったノア。
其れを見たエルヴィスは毎食の様にノアの
目の前で笑顔で食事をする様になった。
エルヴィスが現れてもシーツを被って震える
事が無くなって来たのを見てエルヴィスは
嬉しそうな表情を浮かべて話し始める。
其れは孤児村に居る他の同い年達の話。
ティアという少女は生まれ持った様な気品が
あるのだが、どこか抜けていて天然。
其の日も皆で大掃除中だったのだが職員に
「後はハンカチに名前を付けてね」と言われ
間違わない様に自分の名前を書く時間が
あったのだがティアは一人悩み抜いた末に
「ジョセフィーヌ」という名前を付けて皆の
大爆笑を掻っ攫っていた。
本人は其の事に気が付いて居ないのだが。
またアドリーという少女は十歳にしては
とても落ち着きのある大人びた少女。
なのだが、午後の演習で森の中へと散歩を
しに行った時の事、怖がるティアを背中で
守って勇敢に先頭を歩いていたアドリーの
目の前で突然ピョンと跳ねたカエルを見て
アドリーも同じ様に怖がって跳ねて居た。
其の後は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに
肩を丸めていたらしい。
エルヴィスの独り言の様な話にノアは
段々と耳を傾ける様になって行く。
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