153 / 885
第四編第三章 親を探す最大の手掛かり
探し続けた男
しおりを挟むマムナック遺跡の入り口外で激化し始めた
反乱軍幹部ガルダと帝国軍少将オーズの戦闘
から逃れランスを探して遺跡内に足を運んだ
ロードは道なりに奥へと向かっていると
大きく開けた空洞の前へと辿り着く。
ロードは其処で二人の人影を確認すると
一度岩陰に隠れて様子をこっそりと伺う。
最初に目に付いたのは先刻先に遺跡内へと
向かった翠色のマントを羽織った長身の男。
其の男はマントの下にベストを着た洒落た
スーツを身につけ先の長い革靴と手袋は
蛇の模様を思わせる柄が目を引く。
「いやはや…こんな寂れた場所でまた会えようとは…ランス殿…!」
黒と黄色のツートンカラーで短髪のパーマに
顎下に薄く髭を生やし綺麗に整えた其の男が
立ち止まり睨み付けた先に一人の男が居る。
ロードも其の男の言葉で其方側に目を向ける
と其処には探し求めて居た男の姿が有った。
「何じゃ…奇跡みてぇに言ってるが追って来たんだろうのう。スネイク…!」
前髪を上げて少しうねりのある髪質と長く
伸びた黒い髭、紅白二色の着物をはだけさせ
立ち上がった其の男が下駄を鳴らす。
背中には太陽と羆の刺繍が施された見事と
言える着物を着た男を見てロードは確信を
持って其の男を見つめていた。
「(ランス…!)」
心の中で呟いたロードはやっと見つけたと
言う安心感にほんの少し胸を撫で下ろすが
スネイクと呼ばれた二メートルはあろうかと
いう細身の其の男との不穏な空気を察する。
「いやはや、此れは失礼致しました。仰る通りで御座います。ランス殿」
「何とも豪勢じゃのう。俺みたいな老いぼれにわざわざテメェんとこは幹部をぶつけて来るたぁの。よっぽど焦っとる様じゃな」
「いやはや、此れは手厳しい。私よりも…そうですね…上は焦っているのかもしれません…」
「んで、一応聞くが。俺に何の用じゃ?スネイク…」
解り切っている事であろうと、鼻で笑った
スネイクは腰に据えていた鞭をするすると
手に持つと鞭先で足元をピシャリと叩いて
笑みを浮かべたまま口を開く。
「…貴方を連れて来る様命じられましたので…。抵抗する様ならやり方は私に任せて頂いております故…ランス殿の出方次第では少し手荒になるかもしれませぬな」
「わっははは…言う様になったのお。スネイクよ…俺を超えたつもりでおる様じゃ…」
高らかに笑ったランスは一度何かを感じ取り
左側を一瞥した後で岩に立て掛けてあった
大槍に手を伸ばし其れを前に突き付ける。
「見よや見よやァァ!!王家に轟く天下の一本槍ィ…問われず名乗るも烏滸がましいがランス・テラモーノの大立ち回りィ…口上奏でて幕開けじゃあッ!!!」
歌舞伎役者の様に髪を揺らして前に手のひら
を突き出して名乗りを上げたランスを見て
岩陰のロードは引いた様な表情を浮かべる。
「(今日は何でか…名乗り口上の派手なヤツと良く会うな…つか相変わらずだぜ…)」
呆れ顔で引き続きランスとスネイクを
静かに見続けるロードであった。
70
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚
里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」
なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。
アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる