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第四編第二章 絶望のオアシス
家族の存在
しおりを挟む夜を迎えたダフマの町の最南端でシャーレと
ポアラはシャラムの宮殿から奪ってきた宝物
を町の至る所に置いては動き役目を終えた。
そして約束の時間を迎えた二人は砂の街
コルドデザートで最初に訪れたルイソールの
駅前へと戻ろうと足を踏み出した。
だが、シャーレはほんの少し足が進んで
居ないポアラを見て、ふと足を止める。
「気になるなら見てくるといい。私は此処で待とう」
「でも、待ち合わせの時間だし…」
「ふふ、変わらないさ。ロードはそんな事で目くじらを立てる様な男じゃない」
「…ありがと。シャーレ!」
微笑みを浮かべたポアラは踵を返して
フィオナが暮らす陋屋へと走り出した。
そして息を切らして辿り着いたポアラの
視界に灯りが灯された陋屋が映り込む。
其の陋屋の窓から太陽の様な笑顔を見せる
フィオナとラムスの二人が見える。
其の光景から、確かに外見は破損が目立ち
ボロボロの家、正に陋屋と表現するのは
間違いは無いのかもしれないが暖かな親子の
笑顔を包み込む家は輝いて見える。
すると窓からポアラを見つけて外へと
走って向かって来たのはフィオナだった。
「ポアラお姉ちゃんっ!」
「フィオナちゃん…!」
天真爛漫に抱き付いて来たフィオナをポアラ
は膝を着いて優しく抱きしめフィオナの肩に
其の顔を埋めて笑顔を見せた。
「ありがとう…またパパと会えたよっ」
「うんっ、良かったねぇ。また一緒にいれるね、お父さんと」
抱き合うポアラとフィオナの元へ緩りと
向かって来たのはラムスであった。
「ポアラさん…何故初対面の私達親子の為に此処までして頂けたのでしょうか?」
「アタシ…親がもう死んじゃったんです…最近になってまた親代わりをしてくれていた人も死んじゃって…もう会えないの。だからこそ…会えるのに一緒に居れないなんて寂しすぎるから…」
「お姉ちゃん…?」
「あ、アレおかしいな。涙が出て来た…」
ラムスに理由を訊かれたポアラはフィオナを
抱き抱えながら本心を話すと涙が溢れる。
其れを見たラムスはそっと寄り添い膝を着く
とフィオナとポアラの肩を抱いて話す。
「ポアラさんは優しい人だ。そして私達を救ってくれた恩人です…貧乏な私には何のお構いが出来るか解りません。それでもポアラさん…またいつでもいらしてください」
「…え?」
「フィオナと一緒に此処でいつまでも元気で居ますので…ポアラさんも寂しさに負けそうになったらおいでなさい。貴女さえ良ければ此処は貴女の帰れる場所と考えて下さい」
「…ら、ラムスさぁん…」
「えへへ、お姉ちゃん泣き虫だっ」
本当の家族では無い。
だがポアラはラムスのその暖かさに心を
動かされラムスの胸に顔を埋めると顔を
真っ赤にしながら涙を流した。
同じ様にラムスに抱かれるフィオナに
優しく頭を撫でられながら笑顔で泣いた。
平穏を取り戻したダフマの町の夜闇の中で。
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