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第四編第二章 絶望のオアシス
終結のダフマ奪還戦
しおりを挟む「待って、シャーレ!」
焦りを隠せないシャラムに睨みを利かせて
いたシャーレを静止する声が背後から飛ぶ。
「…ポアラ…無事だったか…」
背後から現れたのはシェリファに飛ばされ
戦う場所を別けていたポアラだった。
そしてポアラは笑顔を見せ口を開く。
「天誅を下すのは私達じゃないよ。ね?」
ポアラの言葉が締めくられると同時に沢山の
ボロボロの服に身を包んだ男達がぞろぞろと
シャラムの前に歩を進めて行く。
「彼等は…?」
「えへへ。ダフマの人達…偶然見つけたから解放してきたの!」
「成る程。なら私達の出る幕は無いな」
シャーレは笑みを浮かべて踵を返すと
入り口にいるポアラの方へと歩き出す。
「この野郎…シャラム。良くもこき使ってくれたなあ…覚悟しやがれ!」
「ヒェェェェ…ゆ、許してくれェェェ!!」
町の人達に囲まれたシャラムは腰を抜かして
へたり込むと叫びを上げて許しを請う。
此れできっと変わるだろう、と二人は安堵の
表情を浮かべて笑顔を交わし合った。
「そだ…ラムスさんは、早く行ってあげて…あの子待ってるから!」
「其方の方は?」
白い髭を生やした男性に必死に訴える様に
言葉を掛けたポアラを見てシャーレが問う。
「あ、ラムスさんはね…フィオナちゃんのお父さんだよっ」
「…ッ!成る程。ご無事で良かった」
「何とお礼を言っていいのやら…言葉が見つかりません…!」
目に涙を溜め込んだフィオナの父ラムスの
言葉にポアラがそっと近付くと肩に優しく
手を置いて笑顔で言葉を掛ける。
「そんなのいいの。アタシ達はフィオナちゃんを笑顔にしたくてここに来たんだから…早く顔を見せてあげて?ね、ラムスさん」
「ええ。早く行ってあげて下さい。ラムスさん」
「…ぐっ…まさかこんな日が来ようとは…ありがとうございます…!」
大粒の涙を流しながらフィオナの父ラムスは
宮殿を駆け下りて行き一目散に家へと戻る。
そして、ふうと息を吐いたシャーレは、ふと
まだ出来る事があるとピンと閃く。
「さて、宝物庫を探すか」
「何で宝物庫?」
「私は盗賊だったからな」
「こらこら。盗んじゃダメでしょ」
少しムッとした表情を見せたポアラを見て
シャーレが違うよ、と言う様に笑う。
「配るのさ、ダフマの南端に暮らす人々に」
「…っ…!それって、盗賊じゃなくて義賊って言うんでしょ」
「盗みは盗みさ、罪である事に変わりは…ははっ…」
話の途中で突如として笑い声を上げた目の前
のシャーレを見てポアラは首を傾げる。
「いきなり何?」
「いや…そう言えばこんな会話、ロードともしたなあと思い出してさ…」
お互い其の話で笑いが収まらない。
笑顔を浮かべながら二人はダフマ宮殿の
宝物庫から持てるだけの宝物を運び出して
ダフマの最南端側へと足を早めて行く。
既に外は気付けば漆黒の闇に包まれて居た。
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