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第四編第二章 絶望のオアシス
痛ましき慟哭のワケ
しおりを挟む足を早めて現場へと駆けて行く二人の耳に
また別の声が飛び込んで来る。
ポアラは嫌な予感が脳内を駆け巡る。
何故なら其の音は少女の泣き喚く涙の声。
先程飴を渡した少女の声に他ならなかった。
其処へ辿り着いた先程の少女が地面にぺたん
と両膝を付けてわんわんと泣き叫ぶ姿を其の
目で確認すると更に足を早めて駆け寄る。
「ねぇ、どうしたの…!?」
「あ、お姉ちゃん…っ…ぐすっ…ご、ごめんなさい…せっかく貰ったのにぃ…うぇぇん…!!」
荒れた道を指差した後またも泣き叫ぶ少女。
ポアラはほんの少し少女が指差した先に
目を向けると其処にはポアラの渡した飴玉
が何かに潰された様に砂と土に塗れていた。
「…ひどい…誰がこんな事…!」
「…っぐ…わたしが悪いの…偉い人達の通行を妨げちゃったから…ぁ…ぅぅ…」
「偉い人達…?」
其の少女の言葉に何かを察しシャーレも
膝を付いて感じていた違和感が繋がりそう
だと嫌な確信を覚えてしまっていた。
ポアラとシャーレは目を合わせると先ずは
其の少女を道の真ん中から移動させ通りの
古ぼけたベンチに座らせると問い掛ける。
「何があったか話せる?」
「…ぅん…あ、あのね…」
少女は此のダフマという町の本性を身体を
震わせ恐怖に包まれた表情で話し始める。
ダフマは豪族シャラムという男の支配下に
あり、オアシスに因って儲ける北の地域には
シャラムに金を献上している者達が住む。
そして南側は其のシャラムの独裁に反発した
人間達が行き着く末路の様な場所であった。
更にシャーレの感じていた違和感の正体が
此処で繋がり判明して行く事となる。
南側の人間達の中で働き手となる男達は
全てシャラムの宮殿に連れて行かれている。
だから此処には男達の姿が無かったのだ。
理由は簡単であろう、抵抗する力を単に
奪い去り服従するしか道が無い事を示す為。
目の前の泣き叫ぶ少女すらも此の小さな
ダフマという世界の中ではシャラムが神。
その他の人間達が、奴隷である事を
幼いながらも理解してしまっている。
「…許せない…ッ…!」
「ああ。私もだ…」
二人は静かに怒りを露わにすると目が
血走る様に荒々しく変わって行く。
そして少女の父親もまたシャラムの宮殿内に
行ったっきり帰って来ていない事を知る。
するとポアラは幼いながら親と離れ離れに
なっている目の前の少女を自分と重ねる。
シャーレもまた自身の過去と重なる部分が
あるダフマの現状に危機感を覚えて行く。
「ねぇ、名前教えてくれる?」
ポアラは少女を安心させようととびきりの
笑顔を取り繕って話し掛ける。
「…フィオナ…」
「可愛い名前だねっ、フィオナちゃん…今度はお家の中で食べるんだぞっ?」
ポアラはフィオナという少女に改めて飴玉の
入った巾着袋を手渡すと頭を撫でた。
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