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第四編第二章 絶望のオアシス
煌びやかなオアシスの裏側
しおりを挟む広大なセバラ砂漠に燦然と其の神秘の力を
宿すパワースポット、ダフマのオアシス。
オアシスを管理する宮殿周りは実際にとても
華やかで煌びやかな町並みに見える。
だが、其の一方でシャーレが目を付けて
ポアラを連れて向かう町の南側は進めば
進む程に荒廃した町並みが顔を出してくる。
そして町からまたセバラ砂漠が見えて来る
最南端に辿り着いた二人は其の町の状態を
見て呆気に取られ、立ち止まってしまう。
「ここ…おんなじ町…だよね…?アタシにはそうは見えないんだけど…」
「…正にスラム街だな…此の国が問題として孕む階級社会の写し絵にも見える…」
二人が町の最南端を見渡して居る時だった。
破損の酷い陋屋の陰から一人の少女が
二人に向かって駆け寄って来た。
「…た、食べ物を恵んで下さい…!」
両手を受け皿の様に二人に向かって差し出す
ボロボロのワンピースを着た深く多少緑掛かった黒髪で肩ぐらいまでの髪の長さの
少女は身体を震わせながら懇願している。
其の少女を見たポアラは膝を曲げて少女の
目線に目を合わせるとニコッと微笑んで
腰元から一つの巾着袋を取り出した。
「ごめんね…今は飴ちゃんしか持ってないの…これでもいいっ?」
巾着袋から見えた色とりどりの飴玉を見て
其の少女がキラキラした笑顔を見せて頬を
夕焼けの様に染めるのを見たポアラもまた
心配そうな表情から笑顔に変わる。
「アタシ、まだ持ってるから全部持って行っていいよっ」
「ほ、本当!?…お姉ちゃん、ありがとうっ」
「ちゃんとお礼言えて偉いなあ…可愛いっ」
ポアラは飴玉の入った巾着袋を渡すと其の
少女は大事そうに胸に抱き抱え、ペコっと
頭を下げてお礼をすると走り去って行く。
中身は飴玉なのだが、まるで宝石でも持って
行くかの様に大事そうに抱えた姿とキラキラ
した少女の笑顔が印象的だった。
ポアラは其れを思い出し、終始ニコニコ
しながらまたシャーレと共に歩き出す。
シャーレはポアラを様子を微笑ましく
見ながらも此のダフマの最南端にある
スラムの様な町に違和感を覚える。
陋屋の窓から見た事も無い二人の事を
覗き込む人々、其れは危害が及ばないかの
心配をしているだけであろうから違和感とは
ならないのだが、どう見ても女と子供しか
姿が見えず、働き盛りの男達が見えない。
其れがシャーレの抱えて居た違和感。
スラムの様に荒廃していたダフマの最南端部
をぐるっと一周したシャーレとポアラ。
貧しいからこそ此の時間帯は男達は出稼ぎ
に出ている可能性もあり考え過ぎかと溜息
を吐いたシャーレがポアラに向け口を開く。
「……戻ろうか?ポアラ…」
其の瞬間だった。
シャーレとポアラが通って来た道の方向で
高く響いた馬の声と軋む車輪の音、そして
建物が酷く損壊する音が耳に飛び込む。
二人は顔を見合わせて頷くと音の方向へと
慌てた様に一目散に走って向かって行った。
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