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第四編第一章 護国の旗を掲げる男
反乱軍副長の憎しみの種“憧憬”
しおりを挟むまた一つ咳払いをしてロードの斜め前に
腰を下ろしたウィルフィンが回想を始める。
反乱軍副長ウィルフィン・フィンドール。
此れは彼が今に至る迄の物語ー。
今から二十七年前、ウィルフィンは
始まりの街コミンチャーレにて産まれる。
ウィルフィンの母は息子を産み落とすと共に
絶命を迎えた事から母の事は写真でしか彼は
見た事が無く、父アーウィン・フィンドール
に男手一つで育てられる事となる。
ウィルフィンは大らかで男らしく力強く
息子と接してくれて居た父が大好きだった。
そして今から二十二年前、ウィルフィンが
五歳を迎えた頃に人生の転機が訪れる。
シャーレの過去でもあったが、此の頃は
未だバルモアとの戦争が絶えず行われており
帝国軍は尖兵としてプレジアの民から
志願兵を募る事が常並みとなっていた。
ウィルフィンの父であるアーウィンは
漁師として腕っ節が強くウィルフィンが
産まれる以前は戦場に何度も赴いていた。
ウィルフィンの産まれ故郷から今度の戦場が
目と鼻の先で行われる予想がされた事から
父アーウィンは再び戦場へ出向くと決断。
周りからまるで英雄の様に感謝される父の
姿にウィルフィンは誇らしい気持ちになる。
「おい、ウィル。ほんの少し出掛けて来るから爺様の言う事聞いていい子にしてろよ?」
「うん…!頑張ってね、父ちゃん!」
戦争の身支度を整えた父アーウィンは
見送りに訪れて居たウィルフィンの頭を
男らしく雑に撫で上げると隣に佇む爺さんに
会釈をすると踵を返して村を後にする。
ウィルフィンは隣の家の爺様に手を引かれて
父アーウィンの帰りを待つ事となった。
其れから三日後の或る日の事だった。
ウィルフィンは父が戦場へと赴いてからと
言うものの、心配に駆られて朝起きては
村の中を彷徨う様に動き回る事が日課と
なって居たが、面倒を見てくれて居た爺様
が何やら慌ただしくウィルフィンを探す。
「…はぁはぁ…おったおった…ウィルフィンや…実はの…」
「…なあに?爺様…」
息を整えた爺さんが突如として満面の
笑みを浮かべてウィルフィンに告げる。
「お前さんの父上が敵の大幹部を討ち取り手柄を上げたそうじゃ…!正にお前さんの父上は英雄じゃよ…!!」
嬉しそうに語る爺さんの笑顔と口振りから
ウィルフィンは段々と笑顔を浮かべて行く。
「…っ…ははっ…やっぱり父ちゃんは凄ぇな~~っ!!」
此度の戦場にて大殊勲をやってのけた
ウィルフィンの父であるアーウィン。
ウィルフィンの故郷の村に其の一報は
瞬く間に拡がりまるでお祭りの様な大騒ぎ。
其の中でウィルフィンも笑顔が絶えず
父アーウィンの帰還を待つだけとなった。
だがー。
お祭りムードを一掃する悲しき一報が届く。
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