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第三編第三章 ロジャーズグリフの戦い
内通者の疑惑
しおりを挟むアジト内に息を切らしながら駆けて戻る
一人の赤髪の男の姿があった。
其の赤髪の男は、走りながらアジト内での
波動とギフトのぶつかり合いを察知して
更に焦りを深めながらシェリー達と別れた
退避通路の入り口を目指していた。
其処にやっとの思いで戻ってきた赤髪の男
の視界に映ったのは、黒髪の少年のみ。
「お前は…確か…アレン…だったな…。シェリー達はどうした?」
「…何でアンタなんかに教えなきゃいけないの…?」
アレンと対峙したロードは眉間に皺を寄せ
湧き上がる苛立ちを隠しきれていない
アレンの発言の心の底の真意を探っている。
「…んだよ…その言い方は…」
アレンは深い溜息を吐いてコツコツと
ブーツの音を鳴らしながらロードに近寄る。
「俺は此処に来たばっかりだったからさ…。ティアさん達から聞いたよ…アンタ等…革命軍に呼ばれたんだって?…で、入隊の勧誘をされて其れを断った…」
聞き手のロードはアレンの言葉から其の
苛立ちの正体が未だ見えず口を挟む事は
避ける様に耳を傾けたまま動かない。
「断ったくせに…何でまだ姫にも革命軍にも付き纏ってんの?…あーてかさ…アンタが姫の屋敷に入った途端に刺客が来てんだわ…今回もアジトの位置がこんなに明確にバレた…」
「何が言いたい…?」
「回りくどかった…?アンタが敵に情報バラしてんじゃねぇのかって聞いてんだけどなあ…」
アレンは明確に殺気をロードにぶつけると
腰に据えたカットラスの鋒を首元に突きつけ
疑いを込めた眼差しで睨み付ける。
「バカ言うなよ…。俺は此の街で知り合った親子に危険を知らせに行ってきただけだ…」
「へぇ…其れを信じろと?」
「信じる気がねぇからそんだけの殺気をぶつけてきてんだろ…?」
ロードは首元に向けられた鋒からほんの少し
首を横にずらしてアレンに一歩近付くと
額を合わせる様に睨み返す。
「良い度胸じゃん…俺とやるつもり?」
「先に剣を向けたのはテメェだ…!」
「ああ…そうだったな。だったら見せてみなよ…アンタのチカラをさ…!」
アレンは背後に距離を取るとカットラスを
前に構えて集中力を高めて行く。
しょうがない、とばかりにロードは背中から
刀を抜刀して真紅の炎を刀に纏わせる。
其の炎を見たアレンは不思議そうな
表情を浮かべると心の中で呟く。
「(ウォッカさんの言ってた話とは少し様子が違うんだけど…此の炎の純度の高さ…本当にコイツは力を扱い切れて無いのか…?)」
アレンもまた流水のギフトを解放し
淡藤色(薄い青紫色)のオーラを纏い始める。
「…少し試させて貰うよ…!」
ロードには聞こえない程度の小さな声で
呟いたアレンは脱力して刀を下げる。
そしてアレンは足元に流した流水の流れに
自らの足を沿わせて滑る様にロードの懐へと
潜り込むと片手で下から斬り掛かって行く。
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