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第三編第三章 ロジャーズグリフの戦い
想いが別けた二つの道
しおりを挟む場面は、革命軍のアジト内へと戻り行く。
冷たい鉄の壁に覆われた内部の部屋で
純白と漆黒、対照的な団服に身を纏い
対峙する二人の女性の姿があった。
何方の表情にも笑顔は全くと言っていい程に
浮かべる事は無く、只々重い沈黙が続く。
漆黒の団服に身を包む空色の髪の女性も
純白の団服に身を包む茶色の髪の女性も
心の内で今直ぐに目を逸らしたい想いを
胸の内にひた隠しながら刻の流れに其の
心も身体も全てを委ねていた。
すると漆黒の団服の女性が折れた様に冷たく
深い重い溜息を吐いて身体にギフトを纏う。
空色(明るく淡い水色)のオーラが冷気へと
変わり其の冷気が形を成して弓となる。
「はぁ…両軍は何度も戦いを重ねて来たけれど…貴女とは十年前のあの日以来ね…ティア…!」
「あらあら…もうそんなになりますか…。貴女の大人びた眼は変わりませんわね…アドリー…」
反乱軍参謀アドリーの言葉に応えるティアも
哀しげな瞳を一度閉じて意を決した様に目を
見開き撫子色(紫味のある薄い桃色)のオーラ
が身体に渦を巻く様に纏われる。
手にした三叉槍型の大業物、百合織守を構える
ティアの眼にも覚悟が宿った様に見える。
「はぁ…昔は私の後ろを笑顔でくっついてくるだけだった貴女が、そんな物騒な物を携えるなんてね…」
「其の頃に戻りたくても戻れません…わたくし達は…対立する運命を選んでしまったのですから…」
「…はぁ、そうね。恨みは無いわ…でも…エルヴィスの道に立ち塞がるなら…貴女が相手でも容赦しない…!」
アドリーが氷で創り上げた弓を構える。
アドリーが授かった氷雪のギフトの特性
其の一つ“造形”自身のイメージを頼りに
其れを氷で創り出す特性の一つ。
「…わたくしもノアの為に出来る事を全身全霊を掛けて実行します…尽くし切る事こそわたくしの想いです…!」
ティアは桃色の逆巻く水を纏った三叉槍の
鋒をアドリーに向けて突き立て言い放つ。
アドリーがギフトで造形した矢を弓から
ティアに放つと同時に戦闘が開始される。
ティアは其の矢を跳躍し避けると槍から
渦巻く水流を放ちアドリーの足元を狙う。
アドリーは宙を浮遊する氷の板を造形し
其れに乗って回避するが、目の前のティア
とは逆方向から水流がアドリーを襲う。
「…ティアの得意とする流水のギフトの特性は…“泡沫”…水の分身を用いて幻覚を見せ、撹乱するチカラね…!」
アドリーは造形した氷の板を使って宙で
一回転すると回転している間に前後に見える
実体と分身、双方同時に矢を放つ。
何故、恨みこそ無い二人が此れを受け入れて
殺し合いを、続けるのか、二人は重苦しい
辛さと苦しさ、悔しさを胸の内で押し殺し
ながら、只々磨いて来た技を放つ。
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