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第三編第三章 ロジャーズグリフの戦い
密林に響く剣客同士の宴
しおりを挟むギルドは力強く太刀の鞘を地面に突き刺すと
其処を起点に大地が激しく地鳴りを起こす。
ドーマンを多少足をよろめかせるが何とか
踏ん張って下段に刀を構えると走り出す。
「大地のギフトの特性の一つ“振動”か…足場の悪い密林ではまた厄介な特性の敵と出会った物だな…」
ドーマンは片手で右脇腹の辺りから斜め上に
刀を振り上げると其れを太刀でガードした
ギルドの動きに合わせて身体を回転させる。
そして最中に刀を右手から左手に持ち替え
身体の回転を利用した裏拳をギルドの
首元に勢い良くヒットさせる。
ギルドは籠手による裏拳に血を吐き出し
よろけるが下段から太刀を真上に振り上げ
ドーマンを近距離から退避させる。
「…はっ…ただの裏拳かと思ったが…テメェは鉄鏡のギフトの特性…“硬化”の使い手ってわけだ…!」
「手加減はしなかったのだが。元より頑丈な男の様だな…貴公は…」
「痛がってる間に戦いの愉しみを失っちゃあ困りモンってだけだ…行くぜェ!?」
ギルドは片足を力強く地面に踏み込むと
其処を起点にまた大地が地鳴りを起こす。
そして、太刀を振り上げると同時に大地から
石の礫が幾つも紫檀色のオーラを纏って
宙に舞い、太刀を振り下ろすと同時に
其の礫達がドーマンに一斉に襲い掛かる。
礫の嵐の背後からギルドは地鳴りを起こし
ながらドーマンの元へ突っ込んで行く。
「目眩しのつもりであろうが、意味は為さない」
ドーマンは地鳴りで視界を揺らしながらだが
身体自体を最大硬力に仕立て上げ目を開けた
まま礫を全て身体で受けると、ギルドの太刀
での攻撃を正面から硬化した長刀で受ける。
鍔迫り合いの中でギルドは怖さのある
笑みを浮かべて押し込みながら口を開く。
「はっ…意味を為さねぇってのは違ぇなあ…足元の振動にも表情一つ崩さねぇしよ…やるじゃねぇか…だが、これならどうよ!?」
ギルドは鍔迫り合いを起こす太刀から
ドーマンの長刀に振動を流し込む。
其れに気付いたドーマンは多少表情に
焦りを浮かべて長刀を滑らせて鍔迫り合いの
状態から抜け出ると、真横に距離を取る。
「へへっ…やっと少し表情が変わったな、オイッ!」
ギルドは裏拳を食らった時から流れ出る
口元の血を舌で舐め取るとニヤリと笑う。
「反乱軍幹部ギルド・ラーケイド…確か異名は暴刃。其の儘だが納得の行く物だな…」
「そんなのは何の足しにもならねぇ。さあ、俺達はツイてるんだ…愉しもうぜ!?此の暗闇の中での宴をよォォ!!」
静まり返っていた密林の夜の帳を掻き消す
程の剣客達の派手なぶつかり合い。
両者当初の目的から外れた一戦は
大地を揺らしながら白熱の一途を辿る。
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