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第三篇第二章 一脈の幕間
己が信じる道
しおりを挟む「何じゃ、随分ブルーじゃの、聞いてた話とは少し違う様じゃ…」
ゲイツが座り込むとロードもまた其の場に
腰を下ろして、悩みの種を明かす。
「ロニーがそう言ってくれんのは嬉しい…でも最近伸び悩んでるっつーか…なんつーか…」
「ほう、それで?」
ゲイツは腕を組むと続きを求める。
「周りの仲間達はめちゃくちゃ上達してんのに、俺だけ上手くいかなくて…実戦も勝ててない…スランプ、って奴かな?」
ロードは不思議な気持ちになって居た。
息子を知ってたとは言え、ゲイツとは
さっき会ったばかりの初対面。
だが聞かれるまま悩みを打ち明けてしまう。
ロードは子供がの頃に親と離れた事で
父親との会話はこんな感じなのだろうかと
想像をして話をして居た事に何となくだが
話の途中で気付いて居た。
「ワシゃあな…一介の風車技師で他人様に偉そうに言える様な言葉を持ってはおらん。じゃから、ワシがロニーに言い続けてる事言わせて貰う」
「ロニーには何て…?」
「ロニーとワシは昨年母ちゃんを亡くしたからの。まあ、辛いのはよう解る。じゃが泣いてばかりじゃったロニーが最近になって自分で立ち直ろうとしとる」
ロードは口を挟む事無く、相槌を打って
ゲイツの話をに耳を傾ける。
「ロニーは誰かを護れる様な強い男になりたいんじゃと、口癖の様にワシに言う。母ちゃんを亡くした事がキッカケとなってな」
ほんの少し寂しそうな表情を浮かべて居た
ゲイツだったが、此処で一度目付きが鋭く
なり、ロードの目を真っ直ぐ見る。
「強い男になりたいんなら、努力せないかん…だが、努力も人それぞれじゃ。良いもんはあっても悪いモンは無い…努力を悪いと言うんじゃったら其れは元々努力になんて届いて無いからじゃ…だから。ワシゃあロニーに一つだけ教えた…」
「教えた事って何だ…?」
「どんな状況でも“己を信じる事”じゃ。辛い時は折れそうになる…キツイ時は逃げたくなる…人間なんじゃ、当たり前じゃろ?だから、奮い立たせるんじゃ己を。其れは自分自身にしか出来ん…」
「己を信じる…」
ロードはほんの少し俯くとぐっと拳に
力を入れて目を見開く。
「キッカケは他人でもいい。じゃが其れを受け止めて奮い立たせるのは結局は自分じゃぞ、ロード君…」
「…だな!俺行くよ、やらなきゃいけねぇ事が山程あるんだ」
ロードは慌ただしく立ち上がると
ズボンに付いた土を払って笑みを浮かべる。
「ありがとうな!ゲイツさん…俺今、アンタの言葉で奮い立てそうだ!」
手を振って其の場から駆け出して行った
ロードの背を目で追いながら立ち上がった
ゲイツは、暖かな評価で見送る。
「ロニーのヤツ。ええのと出逢ったんじゃな。応援しとるで、我が家のヒーロー!」
少し気恥ずかしそうに笑ったゲイツは
修繕作業に戻って行くのだった。
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