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第三篇第二章 一脈の幕間
風車技師の男
しおりを挟む手当てを終えロード達は其の儘眠りに付く。
初日の結果から言えば、シャーレとポアラは
ギフトを其々が手にする所まで進んだが
ロードはいち早くギフトのチカラを手にして
実戦を経験した割には躓く形となった。
ロードはシャーレとポアラの前では
正直、取り繕って明るく接した。
だからこそ二人が今正に成長段階にある事。
そして自分は躓いている事を心の底から
解らされてしまったのが辛かった。
翌朝、ロードはティアに頼み込んで
一度シェルターの外に出して貰った。
気分を入れ替える様に密林からほんの少し
歩くと見えて来る人里に降りて行く。
其処には和蘭風車と呼ばれる種類の風車の羽根が
幾つも地面に並べられて居り里の奥には
完成した風車が悠々と羽根を回している。
ロードは興味本位で其の里を緩り緩りと
探検していると、一人の男性が其の風車の
羽根の整備を黙々としていた。
其の男性はタンクトップにタオルを肩に
掛けて白髪と四十代ぐらいの見た目の男。
気になるのか其の整備する男性を
覗き込んで居るとロードに気付いた
男性は立ち上がり声を掛けて来る。
「何だ、あんちゃん。旅の人か?」
「ん?あ、ああ。そんな所だ。…邪魔しちまって悪ィな、オッサン」
謝ったつもりのロードに其の男性は
ズカズカと近寄ってきて晴天の霹靂かの
如くロードの頭に拳骨をお見舞いした。
「あ痛ェ…!ニャロウ…何しやがるッ!オッサン!!」
「誰がオッサンじゃい!いきなり無礼な奴じゃの…ワシゃあ、ゲイツって立派な名前があるわいッ!!」
「お、おお。悪かったな…オッサ…んじゃ無くて…ゲイツ…さん…」
ふんっ、と鼻息を鳴らして作業に戻った
ゲイツの後ろでロードは未だにヒリヒリする
脳天を両手でさすっていた。
そんな時だった。
何やら怒りに震えた声がロードの耳に
飛び込んで来ると二人は振り返る。
「あッ!アレは…兄貴ッ!アイツだよ俺達の邪魔してくれたアホの赤髪野郎はッ!!」
ロードを指差して近寄って来る五人程の
男性の一番前でタンクトップであからさまに
筋肉を見せ付けている男が騒いでいる。
「テメェ…アホの赤髪野郎…昨日は良くも邪魔してくれたなァ!?」
「…昨日…邪魔…」
妙な温度差がありそうな状況の中
ロードは沈黙を続けてしまう。
「まさか、忘れたとは言わせねぇぞ?此の筋肉をォ…!!」
ぐっとマッスルポーズを繰り返す目の前の
タンクトップの男をロードはじーっと見ては
首を振り、また凝視する作業を続ける。
「…どちら様でしたっけ?」
首を傾げて申し訳無さそうにするロードの
言葉に其の筋肉男の後ろに居た四人の内の
三人がショックを受けた様に口を開く。
「忘れられてるッ!?昨日の今日で存在すら忘れられてるだとーーーッ!!!?」
「マスタングだよォ!覚えとけって言ったろ、コンチクショーがァ!!!」
あーっ、そんな奴も居たな、とポンと
手を叩いたロードを見てマスタングは
悲しみの涙を流していた。
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