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第二編第三章 護る為の決意
見えない目的
しおりを挟む「ですが、貴方は今。此処は退くと仰った。見逃して頂けるという事と捉えても宜しいのだろうか?」
レザノフは目の前に現れたディルの考えの
奥底が未だ読めず、構えた拳銃はそのままに
臨戦体勢は解かずに問い掛けた。
「フフフ…そう捉えて貰って構わない」
「…お言葉ですが、ディル様…其れでは依頼主に面目が立たないのでは…?」
「カグラ…我々が彼等に尻尾を振る意味は無い、私から“失敗した”と伝えて置くとしよう…フフフ…怒り狂うだろうな」
味方すら読めないディルの言動に其の場が
静まり返ると、合図の下、死蜘蛛狂天は
退却を始め、ディルもまた背を向ける。
「待てよッ…!」
ロードの言葉にディルが立ち止まる。
「訳わかんねぇ事が山程ある…死蜘蛛…なんちゃらってのは何で、テメェは何の為にまた俺等の前に現れた?テメェが人斬りだったんだろ?オイ」
「フフフ…質問が多いな…」
ロードは正直な所、頭の中が物凄く
ゴチャゴチャしてしまった為に早口で
ディルに疑問を投げ掛ける。
「死蜘蛛狂天とは傭兵武族の名…元は、何でも屋の万屋であった…だが時代に於いて求められて居るのは武力…金さえ貰えれば基本、何でもするのさ…私達は…」
ディルは傭兵武族・死蜘蛛狂天の成り立ちを
不気味な笑みを浮かべて話し始める。
そして、此処へは任務の中断を伝えに
来た事も簡単に明かしてくれた。
「残りの質問は…フフフ…辻斬りか。其れもまた任務内の話さ…」
「やっぱりテメェが…。いや、今は其れよりもシェリーを狙ったのは誰の差し金だ?」
「フフフ…依頼主の個人情報は明かせない…其れが義務さ…では、此れで失礼する…」
最後の質問は明かさないままディルは
また前方へと歩みを進めて行った。
「ニャロウ…待ちやがれってんだ…!」
声を荒げて一歩踏み出したロードを両側から
ヴィスタとレザノフの手が静止する。
「ロード殿…行かせて構いません」
「誰が狙ってんのか解らないままでいいのかよッ!?」
「諦めよう…彼はベリーストロング…バトルは回避するのがベストさ…」
ロード達は驚きを隠せない。
レザノフとヴィスタ、間違い無く強者。
彼等程の実力の男が二人も揃って居る中で
ディル・ウォンリザードという一人の男に
勝てない、と思わせて居たからだ。
二人は言葉を交わさずとも其の意見で
恐らく一致したのだろう。
其れからまた風の街への移動は再開された。
帝国軍、革命軍、反乱軍とはまた別に
青藍色の羽織を纏った傭兵武族・死蜘蛛狂天
という謎の存在が絡み合って来た。
ロード達は先ずはシェリーの安全を保証する
為に改めて風の街ヴェントへの旅路の足を
段々と早めて行くのであった。
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