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第二編第二章 狙われた姫の命
決意の一歩
しおりを挟む人を信用出来なくなったシャーレは
帝国軍の手助けの手すら掴もうとはせず
其処からたった一人で長屋町へと辿り着く。
其処から今に至る迄は、また別の物語。
シャーレは過去の回想を開く事に
ピリオドを打ち、全てを話した事を
ポアラに伝え、また俯いて黙り込む。
ポアラにとっては、壮絶としか言えない
シャーレの隠されていた過去。
バルモアの人間も豪族も恨むに値する。
正直、ポアラはそう感じてしまった。
「同情して欲しい訳じゃ無かった。過去を経て、ロード、そしてポアラと出逢い。私は誰の事も信じられなかったあの時からは幾らか成長したと思う…だから決意を伝えたい」
「決意…」
シャーレが初めて顔を上げてポアラの
表情も正面から見つめる。
「ポアラの言葉、ロードの言葉、シェリー姫やレザノフさんの言葉に…ウィルフィンの言葉…全てを訊いた上での決意さ」
ポアラは最悪の道を考えてしまった。
だからこそ、黙り込み、唾をごくりと
飲み込んでシャーレの言葉を待つ。
「私はバルモアの人間が憎い。此れは此の先変わらないだろう…だがそれは、全てのバルモアの人間じゃない…」
「それって…」
「私はもし、ロードがシェリー姫の為に行動をするのなら今度こそ力に成る」
「シャーレ…!」
「私も周りの支えがあって此処まで人を信じられる様になった。ならロードを助けてくれたあの二人を信じられる様になる筈さ…またポアラに“ダサい”なんて言われたく無いからな」
シャーレの言葉を聞き終えたポアラが
何やら顔をくしゃくしゃにして胸に
抱き着いて来た、当然シャーレは顔を
真っ赤にしたのだが、そんな雰囲気では
無いとおそらく感じたのだろう。
肩をそっと抱えてシャーレは暖かい
表情でポアラを眺めた。
「…うっ…うう…アタシ達、元通りになれないのかなあ、って。シャーレ怒ってるのかなあってずっと胸が張り裂けそうだったよ…」
「ポアラ。君の言葉が“同情”では無かった事で考えさせられ救われたんだ。時間が掛かってごめん、君と共に入れた事、本当に強運に感じたさ」
ポアラの言葉は正に正論だった。
だがしかし、そんな当たり前にシャーレも
気付いて居たからこそ時間が掛かった。
シャーレからすれば、今回の一件を共にした
全ての人間の言葉は正しい。
出逢う場所が変われば、シャーレが
反乱軍に居たとしても不思議では無い。
だが、あの日ロードとアドラスを見て
実は迷いの中にあったシャーレはロードと
共に進む事を密かに決めて居た。
選択が道を分けたのだ。
久しぶりにすっきりとした表情で身体を
伸ばしたシャーレとポアラは少し遅く
なってしまったが、屋敷へと帰路に付く。
今現在、シャーレ・スティーバ、二十三の歳
大人になった彼をきっと天国の家族は
誇りに思ってくれているであろう。
シャーレ自身も自信を持って前へ前へと
強く一歩を踏み出し続けて行く。
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