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第二編第二章 狙われた姫の命
夜が来る
しおりを挟むシャーレの気持ちの闇は完全には
勿論、拭い切れていない。
それだけ本人にとっては苦しく辛い
少年時代の出来事だった。
其の日は、シェリー達の計らいに
甘える形で食事をご馳走になる。
シェリーとシャーレに開けられた溝を
違うものでその場だけでも埋めようと
普段よりもロードとポアラの会話は
明るい物が多く笑いを絶やさなかった。
シャーレにとっては、其処も胸が痛い。
気遣いの有り難みを感じながらも
対等で居た筈の仲間が自分自身の
挙動をチェックする様に表情を見てくる。
其の行動をさせてしまった自分が
正直、心の底から情けなかった。
食事をするテーブルの横でシェリーの
執事を務めるレザノフも心配そうに
此方を見ては、辛そうな表情を浮かべる。
其の後、シャーレとロードは一緒に
風呂に入り、同じ部屋で床に着くまで
必死に話題を振るロードに気の抜けた
様な返事を返すのみのやり取りが続く。
明日こそは、もう少し笑おう。
そう心を奮い立てる様に枕に顔を埋める。
そして、夜は更けて行く。
光の街セイントピアの郊外にあるシェリーに
とっては革命軍から当てがわれた仮住まい。
其処に、一人の来訪者が現れる。
勿論、招かれざる客人。
闇夜の暗闇の中、静かに殺気を押し殺した
其の人間は藪の隙間から機を伺う。
そして、其の人間が所持していた無線が
闇の中で静かに音を立てる。
其れに応答した人間は、表情を崩さぬまま
報告を訊き入れると、無線を切る。
そして、緩りと立ち上がり一言呟く。
「…時は来た、夷狄には死を…!」
立ち上がった其の男が翻したのは
漆黒の団服、そう、反乱軍の装束であった。
紺色の髪が風に揺れる。
長い前髪で完全に左目が覆われ、右側は
短く刈り上げられたアシンメトリーの髪型。
紺色の長いスカーフを纏い、青と黒の
ラインが入った籠手が両手に纏われている。
そして、風が吹いた次の瞬間。
其の男の姿は藪の中から消え、目に追えぬ
速度で屋敷の入り口の前に立っていた。
「…何者…?」
屋敷の入り口に立つ二人の護衛兵が
槍の様な武器を構えて立ちはだかる。
「此処まで来れば、もう隠れる迄も無い。バルモア国王女…シェリー・ノスタルジアの首、貰い受ける…!」
「て、敵襲…ッッ!!!!」
護衛兵が叫んだ事で瞬時に屋敷内に
灯りが灯され、続々と護衛兵が入り口に
向けて進み始める。
敵襲を知らせた護衛兵の二人は其の男に
因って既に倒され、駆け付けた護衛兵達も
次々と抜刀した刀で斬り伏せられて行く。
其処に待ったを掛けたのは二丁拳銃を
構えた執事レザノフであった。
「最大の難関の到着か。愛刀宵闇に血を吸わせてくれ…レザノフ・スタールマン」
「そうは行きませんね。お引き取り願えますかな?反乱軍副長殿…!」
レザノフの二丁拳銃の引き金が引かれ
弾丸が其の侵入者を襲う。
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