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第二編第一章 辻斬り事件
少女の気紛れ
しおりを挟む「…えっと。簡単に言うと近くを通った俺を気紛れで助けてくれたって事か?」
「ええ。まあ、気紛れと言われれば気紛れですね」
「追ってるのは帝国軍。まあ傍目に見りゃ良い奴等だよな?」
「ふふふ、そうですね」
ロードは腕組みをしたまま、俯くと
腑に落ちない事で頭がこんがらがる。
シェリーは首を傾げてロードを見つめる。
「無罪だー!とは叫んでたけどよ。俺が本当に悪いヤツ、って事は考えなかったのか?」
ロードの言葉に沈黙する少女、シェリー。
すると数秒の沈黙の先にイメージとは違う
動きと声を披露し始める。
「はわわわわわわっ!!そうでした!本当は悪い方なのですか!?」
「いやいやいや!俺は本当に無実だ!ごめん、ごめんって!」
目を丸くして絵に描いたように焦り始めた
シェリーを見て立ち上がり必死に本当の事を
伝えようと此方も慌て始めるロード。
数秒の沈黙と数秒の慌てふためきを
落ち付かせて、二人は馬車の椅子に
改めて腰を下ろす。
「(何だあ、この子?少し天然なのか…?)」
ロードは最もな疑問を浮かべて居たが
腑に落ちないモヤモヤは天然さと言う事で
綺麗さっぱり解消されていた。
「しかし、どうして。追われて居たのですか?」
「いや、それがよ。今日この街に着いたばっかりだってのに今噂の辻斬りに間違われちまってさ…」
ロードは目の前の自分よりも少し歳下に
なるだろうシェリーに溜息を付きながら
愚痴を溢していた。
「それは災難でしたね。軍の方も此の街でまだ動いている様ですし、旅の方でしたら行く当ても無いでしょう?」
「あ、ああ」
「良ければ私の屋敷にお泊まりになられてはいかがですかっ?」
何やらワクワクした様な笑顔とポーズで
シェリーはロードに声を掛ける。
「マジで!?…あー、でも。仲間が二人この街に来てるんだ、そっちと合流しねぇと」
「良ければ其のお二人もご一緒に。ロード様は出歩けないでしょうから探しに行って貰ってお連れしますよっ?」
「そんなら安心だな。恩に着るよ、シェリー!」
「はわわっ!いえ、そんな…」
ロードはシェリーと顔を見合わせて
お互いが笑みを浮かべる。
馬車は緩り緩りとセイントピア本町の
多少外れにある大きな屋敷へと到着した。
大きな庭に大きな西洋風の白い屋敷。
まるで、城の様な場所に通されたロードは
口をあんぐりと大きく開けていた。
「…そうじゃねぇかと薄々思ってはいたけどよ…シェリーって良いとこのお嬢様か?」
「ふふふ、それは後で教えますね」
何やら嬉しそうなシェリーは、近くに居た
先程の気品のある執事の様な男性に寄り
シャーレとポアラの特徴を伝える。
其の男性は一礼すると、屋敷の外へと
向かって歩き始め、ロードはシェリーに
手を引かれるまま、屋敷の中へと進む。
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