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第二編第一章 辻斬り事件
人違いの可能性
しおりを挟む本町を目前にした一行はとある木製の
掲示板を発見すると揃って目を通す。
其処には、噂の人斬り事件の犯人と
思われる男の特徴などが記されていた。
特徴其の一、赤髪の男
特徴其のニ、刀を腰に帯刀
特徴其の三、黒い外套を纏う。
一行は其の掲示板の最後に書かれた
「顔、年齢は外套着用の為不明」という
言葉を見て顔を見合わせる。
「オイ!これって、さっきのヤツの事じゃねぇかッ!?」
「毛先しか赤くなったけどフードまで被ってるなら一瞬だけ誰かに見られた、と思えば赤髪で通る事もあるわね」
一行は先程会った不審な男が辻斬り事件の
犯人では無いかと話し始める。
すると、シャーレがふと疑問の表情を
浮かべて、黙り込む。
「だが。何だか此の書き方だと他にも心当たりがあるのだが…」
「…じ、実はアタシも…」
シャーレとポアラが満を辞して
隣に居たロードの顔を覗き込む。
「…は?」
「「赤髪で…刀を帯刀…」」
二人が声を合わせると、ロードが頭に
血を昇らせて騒ぎ始める。
「バッカ!何言ってんだオメー等!昨日まで違う所で一緒にいたろーが!」
「そんなのわかってるさ…」
「でもあの男が荒れるって言ってた意味が何となくわかったわね…」
「ああ。辻斬りと言っても無差別じゃない。全て反政府の人間…もしも、既に目的を終えているなら姿は現さない…」
「後数人狙ってるにしても何も知らないロードが街に入って追われ始めたら格好のチャンス到来とも言えるね…」
考え事をしながら呟く様に声を交わす
二人を見てイライラが最高潮に達する。
「どっちにしたって俺は無罪だろーがッ!」
「そんなの知ってるって!」
「ある意味、此れは強運だと捉えよう…ロード、君は町の外で待て」
「…何で?」
シャーレが町の入り口となる煉瓦調の
アーチの先を指差して見せる。
其処にはワラワラと帝国軍の一般兵が
何やら隊列を成して進軍している。
「もしかして…探されてるんじゃない?辻斬りの件で…」
「あの飯屋の店主か、はたまたあの不気味な男本人かが軍に知らせた可能性は高いかもな…」
「という訳で!ロード!ごめん。アタシ達で買い出ししてくるから、ロードは見つからない所で待ってて…?」
完全な濡れ衣。
なのだが、今日光の街に入った事を
堂々と証明しようにもアリバイを証言
するのは同じ所を進んできた此の二人。
身内の証言になり、良い結果は
もたらせられないかもしれない。
ロードは呆れ返って、ふくれた表情で
二人が買い出しを終えるのを待つ事に。
暇だったロードはギリギリ町の内側にある
建物の屋根に登って景色を眺める。
「チッ…ニャロウ…なんで俺が留守番なんだよ…」
ロードが目を向けた真下の道には
慌ただしく駆け巡る帝国軍の姿があった。
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