30 / 849
第一編第三章 蔓延る悪意
偶然の落とし物
しおりを挟むカントを出た一行は最南端の漁港町
リューグウの入り口まで辿り着いていた。
漁港に並べられた漁船の数や漁師の
賑わいに歓迎される様に町へと足を
踏み入れて行く中でポアラが口を開く。
「ランスさん、だっけ?ロードが探している人って」
「ああ、親を探すには先ずランスを見つけねーとな」
「ええ、此の様に賑わいある町では何かしらの情報があるかもしれませんし、良い判断かもしれません」
ポアラもシャーレから聞いている。
此の旅はロードの親を探す旅であり
ランスという人物が鍵を握っている。
だが、其れ以上に踏み込もうとすると
ロードは困った様に唇を紡ぐ。
気持ちを理解してだろう、ポアラも
シャーレの反応を見て其れ以上に
踏み込もうとはして来なかった。
一行が人の流れに沿ってリューグウを
進んで行く最中、薄暗い路地裏から
包みを抱えた男が背後をチラチラと
確認しながら駆け込んで来る。
「…ッ…いってぇ」
前方に意識が削がれていた其の男と
ロードが思い切りぶつかると二人は
道の真ん中で尻餅をついて倒れ込む。
「大丈夫?ロード」
心配したポアラとシャーレがロードに
手を貸そうと駆け寄る目の前で
ぶつかった男は道に放り出された物を
必死に掻き集めている。
「やべぇ、やべぇ…」
何やら掻き集めた物をまた包みに
詰め込むとロード達には目を向けずに
バタバタと走り出して行く。
「お、おい!謝るぐらいしろっての!」
ロードの言葉は届かず其の男は一目散に
逃げ去って行くのを目で追うしか無かった。
突然の出来事に呆気に取られていた
一行だったが、ロードの足の下に一つ
潜り込んだまま忘れ去られた物を見つける。
ロードが手に取った其れは、透明な真空の
パックに入れられた“白い粉”だった。
「ん。何でしょうコレは?」
「白い粉…砂糖か?」
「いや、慌てて砂糖抱えて走ってるってどんな状況よ」
「それは“SD6”だよ」
一行の会話に突如として割り込んで来たのは
サスペンダー付きの服にハンチング帽を
被った男の声だった。
「えすでぃー、なんて?てかアンタ誰だ?」
「これは失礼。僕はサバネ。さっきの男が落として行ったそこのSD6、いわゆる“麻薬”を追っている記者さ」
「コレ麻薬なのかよッ!?」
一行はS D6と呼ばれた目の前の
白い粉を麻薬と知り驚きの表情を浮かべる。
「此処リューグウの裏で違法に配られているそれを追っているんだ、僕は後を追うから、その薬渡して貰えるかな」
「乗り掛かった舟だ。俺も追うぜ?サバネさんよ」
「え?どうして」
「見過ごせないと言う事でしょう。言ったら聞かないのが彼の特徴なので。取り敢えず追いましょう」
シャーレの言葉に頷いた一行は、記者サバネ
と共に麻薬を持って逃げた男を追って
一気に走り出して行く。
90
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる