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第一編第三章 蔓延る悪意
偶然の落とし物
しおりを挟むカントを出た一行は最南端の漁港町
リューグウの入り口まで辿り着いていた。
漁港に並べられた漁船の数や漁師の
賑わいに歓迎される様に町へと足を
踏み入れて行く中でポアラが口を開く。
「ランスさん、だっけ?ロードが探している人って」
「ああ、親を探すには先ずランスを見つけねーとな」
「ええ、此の様に賑わいある町では何かしらの情報があるかもしれませんし、良い判断かもしれません」
ポアラもシャーレから聞いている。
此の旅はロードの親を探す旅であり
ランスという人物が鍵を握っている。
だが、其れ以上に踏み込もうとすると
ロードは困った様に唇を紡ぐ。
気持ちを理解してだろう、ポアラも
シャーレの反応を見て其れ以上に
踏み込もうとはして来なかった。
一行が人の流れに沿ってリューグウを
進んで行く最中、薄暗い路地裏から
包みを抱えた男が背後をチラチラと
確認しながら駆け込んで来る。
「…ッ…いってぇ」
前方に意識が削がれていた其の男と
ロードが思い切りぶつかると二人は
道の真ん中で尻餅をついて倒れ込む。
「大丈夫?ロード」
心配したポアラとシャーレがロードに
手を貸そうと駆け寄る目の前で
ぶつかった男は道に放り出された物を
必死に掻き集めている。
「やべぇ、やべぇ…」
何やら掻き集めた物をまた包みに
詰め込むとロード達には目を向けずに
バタバタと走り出して行く。
「お、おい!謝るぐらいしろっての!」
ロードの言葉は届かず其の男は一目散に
逃げ去って行くのを目で追うしか無かった。
突然の出来事に呆気に取られていた
一行だったが、ロードの足の下に一つ
潜り込んだまま忘れ去られた物を見つける。
ロードが手に取った其れは、透明な真空の
パックに入れられた“白い粉”だった。
「ん。何でしょうコレは?」
「白い粉…砂糖か?」
「いや、慌てて砂糖抱えて走ってるってどんな状況よ」
「それは“SD6”だよ」
一行の会話に突如として割り込んで来たのは
サスペンダー付きの服にハンチング帽を
被った男の声だった。
「えすでぃー、なんて?てかアンタ誰だ?」
「これは失礼。僕はサバネ。さっきの男が落として行ったそこのSD6、いわゆる“麻薬”を追っている記者さ」
「コレ麻薬なのかよッ!?」
一行はS D6と呼ばれた目の前の
白い粉を麻薬と知り驚きの表情を浮かべる。
「此処リューグウの裏で違法に配られているそれを追っているんだ、僕は後を追うから、その薬渡して貰えるかな」
「乗り掛かった舟だ。俺も追うぜ?サバネさんよ」
「え?どうして」
「見過ごせないと言う事でしょう。言ったら聞かないのが彼の特徴なので。取り敢えず追いましょう」
シャーレの言葉に頷いた一行は、記者サバネ
と共に麻薬を持って逃げた男を追って
一気に走り出して行く。
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