RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一篇第二章 拳術道場の女

武闘家のもう一つの顔

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其の後、出血も止まり立てる様になった
シャーレと共にマーシャルの元へ行く。



「マーシャルさん、騒がせた上に治療まで。感謝します」


「ポアラと約束しちまったから、また来てもいいか?」


「其れはポアラも喜ぶ。是非俺からも頼むよ、此の道場じゃ今彼女と本気で立ち会える武闘家は居ないからな」


「マーシャルさん、アンタ強いだろ?」



ふと、ロードから掛けられた言葉に
マーシャルは困った様に笑う。



「少し前なら否定しなかったかもしれんな。だが、もう俺は…」



話したく無い事なのだ、と悟った二人は
マーシャルから答えを求める事は無かった。

握手を交わした後に二人はマーシャルの
拳術道場を出ると市場町カントの方向に
目を向けて、緩りと歩を進める。



「そう言えば、ポアラさん。もう居なかったな」


「何か仕事があるとかで、慌ただしく走って出てってたぞ。つか、腹減ったな、何か食おうぜ?」



ポアラと話したかったと肩を落とした
シャーレの事は無視とばかりに市場町の
外れに見えた団子屋ののぼりにロードは
目を輝かせていた。



「シャーレ!オイ、シャーレ!団子屋だ、腹減った、食いに行こう!」


「君は正に花より団子だな」



呆れた様に着いて行くシャーレとは
裏腹にロードは既に団子屋の長椅子に
腰掛けて居た。



「すんませーんっ!二人分、団子と茶を下さいな」


「はーいっ!お客さん待っとってね!」



奥から元気な女性の声が聞こえ少し
元気を取り戻したシャーレがロードの
横にゆっくりと、腰掛ける。

数分して、団子と茶を持ってきた女性の
顔を見て、ロードとシャーレを驚きの
表情を浮かべた。

其の驚きは二人だけでなく、団子屋の
女性も同じ感情を抱いていた。



「ポアラ?」


「アンタ達、さっきの」



綺麗な着物に身を包んで現れたポアラ。

道場で見た時とは打って変わって
女性らしい姿で現れた其の姿に
二人は頬を赤らめる。

シャーレは頬を赤らめる程度では
済んでは居ない様だが。

取り敢えずは、とばかりに団子を口一杯に
頬張り茶で流し込んだロードは
満面の笑みを浮かべて手を合わせる。



「ふう、ご馳走さんっ」


「「いや、早ッ!!」」



声を合わせる程驚いたシャーレとポアラは
驚きの表情で口をあんぐり開けていた。

幸せそうな表情で爪楊枝を手にする
ロードの目の前の長椅子に腰を掛けた
ポアラはゆっくりと口を開く。



「市場町の中に入れば美味しい物がたくさんあるのにまさか、こんな町外れの団子屋に来るなんて変わってるねアンタ達」


「ん?何言ってんだ。美味かったぞ」


「ふふ、ならいいんだけど」


「綺麗な着物で笑ってる君も素敵だ…」



顎を拳に乗せて屈託の無い笑顔を見せた
ポアラにシャーレは完全に射抜かれていた。



「座ってていいのか?」


「いいよ。お客さんはアンタ達だけだし、あたし一人でやってるお店だからね」



優しい陽射しが差し込む中、二人は
ポアラとの会話を緩りと交わして行く。
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