RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一篇第二章 拳術道場の女

武闘家 ポアラ・セルヴァンテス

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「いざ、尋常に。始めッッッ!!」



腕組みをしたマーシャルの声でシャーレと
ポアラの手合わせが始まった。

先手必勝とばかりに、低い構えでシャーレの
懐に潜り込んだポアラはシャーレの鳩尾を
目掛けて掌底を捩じ込む。

シャーレは其れを軽々と交わすとポアラの
背後を取るが、間合いは詰めない。

不思議そうな表情のポアラだったが
直ぐ様、踏み込んでいた右足で踏ん張り
方向転換すると回し蹴りを仕掛ける。

其れも躱したシャーレはまたも間合いを
取ったまま、微動だにしない。



「へぇ。向こうのお仲間と違ってあの高さから落ちても無傷で終えたのは伊達じゃ無いって事?」


「…ニャロウ…遠回しにバカにしやがって」



何気ないポアラの言葉で、ロードは
またも苛立ちを露わにする。

だが、手合わせ中のポアラは違う事に
気を取られて居た。

シャーレに対して掛けた言葉に其の
シャーレは反応するどころか何かを
ブツブツと発している。

ポアラにとって其れはとても不気味な事。

何故なら真面目な表情でブツブツと声を
発しているシャーレは時折何やら幸せそうに
顔をニヤけさせて居たのだから。



「…良い尻…良い身のこなし、身体。そして良い匂いっ」


「何言ってるかわかんないんだけど、そろそろ真面目に掛かって来たらどうなの?」



一気に間合いを詰めたポアラの掌底が
迫っているが、シャーレは其れも軽々と
躱して、身体を回転させて背後に回る。


ーーだが、決着は突然に現れた。


回転を加えた事で足が縺れたシャーレは
体勢を崩してしまう。



「…そこっ!!」



ポアラの回し蹴りが頬にクリーンヒット
したシャーレはなんとも言えない呻きと
共に縁側に座るロード等の元に飛ばされる。



「アホ…綺麗に負けやがって。つか何だその腑抜けた幸せそうな面は」



ロードの足元に転がったシャーレは
普段からは想像も付かない程、ニヤケ面で
鼻血を垂らしていた。



「ふふ、私が女性を殴れる訳が無いだろう」


「其れじゃ、手合わせにならないだろ」



呆れた様な表情を浮かべたロードの視線は
次にシャーレを蹴り飛ばしたポアラへ向く。



「ポアラって言ったか?やるな。アンタ」


「嬉しく無いよ。少しは見所ある男かと思ったけど女だからって仕掛けても来れないビビりを蹴飛ばしたって」



溜息を吐くポアラを見て、そりゃそうだ。
と納得した表情を見せるロード。

ロードは多少の痛みを堪えて立ち上がると
ポアラの元に歩き出す。



「次は俺とやらねぇか?」


「遠慮しとく」


「…は?何でだよ」


「身体痛いんでしょ?今動くと痛みが増すよ、やめときなって」



舐められた様な言動にピクピクと眉を
動かして苛立ちを深めるロード。



「もし、急ぐ旅じゃ無いんなら、また明日おいでよ。其の時は手合わせしてあげるから」



ニコッと笑顔を浮かべたポアラを見て
仕方ない、とばかりに髪を掻くロード。



「わあったよ。そん時は其の減らず口叩けねェ様にしてやる」



ポアラの笑顔に笑顔で返したロードは
諦めて背中を向けた。
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