RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一篇第一章 旅路の出逢い

元極道のケジメ

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「済まんかったな。小僧共、泣き付かれて来てみりゃあ活きの良いお前等が暴れとるんで血が騒いだ。コイツ等のケジメ、儂に任せては貰えんか?」


突然の申し入れに困惑した表情を見せた
二人だったが、ロードはシャーレの答えを
待つ様に口を噤み黙り込む。


「長屋町の皆にこれ以上危害が加えられないのなら私は構わない」


「恩に着る。お前等名前は?」


「シャーレ」


「ロードだ」


「ほうか。なら戻って怪我の手当てをした方がええぞ。血流し過ぎだ」


そう言って背を向けたアドラスの足音を
感じながら頭を垂れて這いつくばる
バズーとドノバンはガタガタと震えたまま
顔を上げれずに居た。


「ロード…ありがとう。君と会えた事は本当に強運だった」


「しししっ、良いって事よ。さあ、帰ろうぜ」


ロードとシャーレはフラつきながらも
緩り緩りと歩を進めて長屋町へと戻る。

足下のおぼつかない二人がシャーレの
長屋に辿り着いたのは既に夕陽の沈んだ
夜の事であった。

お互いに疲れ切った身体に鞭を打って
お世辞にも上手いとは言えない止血を
包帯を巻き付けて済ませた。

二人は、そのまま布団に寝転ぶと
疲れがどっと来たのか、いつの間にか
眠りに付くのであった。

寝相が悪くイビキを響かせるロードと
姿勢良く眠るシャーレは対照的な姿で
戦いの疲れを癒していた。



ー父さん、母さん…?



ーねぇ、ランス。父さんと母さんは?



ー何処に行ってしまったの?



ーねぇ、ランス。何で黙ってるの?



ー会いたい、会いたいよ…!




「…ランス…」


長屋の窓から差し込む光にはっと、目を
覚ましたロードは唐突に身体を起こす。


「ん、もう朝か…」


「良く寝てたな。ロード」


「もう起きてたのか…」


「ああ。独り言を言ってたぞ。ランスって誰の事なんだ?」


シャーレは囲炉裏の火箸でつつきながら
ロードの独り言について言及する。


「口に出してたのか…。俺を育ててくれた人だよ、父親代わりみたいなもんだ」


「そうか。そういえば今迄聞いた事が無かったが、何故旅をしているのだ?君は」


「親を探す為だ。その為に、そのランスって男を探してる、二年前に別れてそれっきりだがな」


「そうか…」


ロードの表情を見て、余り話したく
無さそうにしているのを察して
シャーレは其れ以上は踏み込まなかった。

それと同じくして、長屋町のドノバンの
一件もおそらく解決した今、きっと
ロードはまた流れて旅に出るのであろうと
頭に過ると寂しさが込み上げる。

シャーレにとってはもう既に友人と
呼べる間柄になったのであろう。

ロードも同じ想いを抱いていたのは
知る由も無い事であろう。

その時息を切らした少年がシャーレの
長屋の扉を開けて駆け込んで来た。


「シャ、シャーレ兄ちゃん…」


「ケーシーか?」


「噴水広場に来て!急いで!」


何やらまた何かあったらしいが、二人は
今回は慌てなかった。

其れも其の筈、ケーシーの表情は
笑顔に満ち溢れて居たからだ。
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