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Ⅴ レガリスへ
28話 龍姫と蛇龍
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私達がグランハルトに戻ってから1ヶ月が経った。
今までより難易度の高い依頼もこなせた事もあり、私達はEランクからDランクへとランクアップした。
そして、更に受けられる依頼が増えた。
正に順風満帆と言うべきだろう。
─────────────
「それじゃあ、行こうか。」
私達は何時もの様に依頼を受けてギルドを出る。
すると、少し先の噴水広場に人集りが出来ていた。
その中からは悲鳴も聞こえる。
なんだろう?
私が言う出すよりも先にラナが動いていた。
私達も後を追うように噴水広場に向かう。
すると、そこには黒い大蛇がいた。
体躯は5m以上あり、黒い鱗に覆われ、私の胴よりも太い胴体をしている。
そして、真っ黒い蛇の背中には黒いコウモリの様な翼がはえている。
その姿に見覚えがあった。
デボーチェリー時代の私の相棒である黒蛇龍オニキスの『キース』だ。
「キース?」
私が問い掛ける様に言うとこちらを向く。
他の人にはわからないだろうがキースは嬉しそうな表情で私に巻き付いた。
「やっぱりキースだね!」
「はい、姫様。お久し振りでございます。」
キースが舌をチロチロと出して言った。
「先生・・・その蛇は・・・」
「あー、ごめんね。この子はキース。私の使役する龍だよ。訳あってデボーチェリー解散後は離れていたんだ。」
ラナが驚いた表情で言った。
まぁ、いきなりだし仕方ないよね。
「蛇?龍?」
ノノがじっと見つめながら言う。
まあ、見分けつきづらいか。
「蛇龍だよ。分類はれっきとした龍だよ。ただ、他の龍より蛇に近いってだけ。」
私が言うとキースが私から離れる。
私はキースの頭を撫でてあげる。するとキースは嬉しそうにぐるぐると喉を鳴らした。
こうしていると猫みたいだ。
「え、じゃあ火とか吐けるの?」
ミーナが言った。
「ううん、火は無理かな。キースは毒が吐けるよ。後は酸かな。」
「毒に酸・・・」
エリシアが少し怯えてキースを見る。
「大丈夫だよ。そうは言っても私の指示なければ攻撃しないから。
それに、コミュニケーションも取れるし。」
「うむ。」
キースが呟く。
龍は基本的に喋れる者が多い。
キースも喋れるがキースは無口な方だ。元々蛇龍系統は音に敏感だったりするから自ら音を発する事は少ない。だからだろう。
「姫様、これからはお供致します。また、影に潜みますので、戦闘の際は御呼びください。」
キースはそう言うと私の影に頭から入っていく。
「すごっ!」
「あはは、確かに影に隠れるのは珍しいかもね。さて、気を取り直して行こうか。」
私達は本来の依頼であるリザードマンの討伐へ向かう。
本来ならBランク依頼だが大量発生によりBランク以下でもギルドマスターの許可があれば受注可能になっている。
私達はロウクさんから半ば指名依頼で受けることになった。
なんでも倒しても数が減らないらしい。
リザードマンは小龍種と呼ばれ、立派な龍だ。
龍は繁殖力が低いぶん強靭な肉体を持ち、打たれ強い。
そんなリザードマンが大量発生と言うのも少しおかしな話だ。
「リザードマンか、一度見てみたかったんだ。」
リザードマンの住み処である山に向かうと確かに普通ではあり得ない量のリザードマンがいた。
体躯2m程で赤い鱗に覆われた二足歩行の蜥蜴人間。
手には剣や鉈、斧といった武器を持っている。
知能はそこそこ高いが魔法は使わず近接戦を得意とするのがリザードマンの特徴だ。
「キース!」
「お任せください!」
私が言うと影からキースが出てきた。
「ここはお任せを。この量なら1人で充分です。」
そう言うとキースが飛び立つ。
「《酸息吹》」
そう言って黄色い煙の様な息を吐く。
するとリザードマンの鱗が落ち始める。
「あ、皆目を瞑った方が良いよ。こっから段々リザードマンが溶けていくから。」
ゆっくりと溶けていくため中々グロい。
「《竜頭蛇尾》」
そう言ってキースがリザードマン目掛けて頭から突っ込むと着地点に2m程のクレーターができる。
そしてすぐに尻尾で周囲を凪払った。
「炎牙」
そう言うとキースの牙が燃える。
正確には可燃性の高い毒に発火性の高い毒を混ぜ合わせてそれを発火させているのだ。
キースは炎を纏った牙で自分の尻尾に噛みつくと尻尾を滑らせる様に口から引き抜く。
すると尻尾が炎を纏う。
これこそキースの得意技で牙で生成した毒や炎を尻尾に纏わせる属性纏いだ。
「《炎尾》」
キースがそう言って尻尾を剣の様にリザードマンを倒していく。
するすると地面を這い、リザードマンの足元を潜り抜けながら先程の酸を食らわなかったリザードマンだけを確実に仕留めていく。
「これで終わりです。《毒霧》」
そう言って赤い煙を吐く。
そしてその煙に尻尾の炎を近づける。
「《落日》」
キースの呟きと同時に尻尾の炎が赤い霧に引火して大爆発を起こした。
キースは炎を尻尾に纏わせるだけあって火に強くあの大爆発の中心にいても傷一つつかない。
「これだけ減らせばどうでしょうか?」
キースが私の元に戻って来て言った。
周囲にいたリザードマンは1/3以下にまで減っている。
充分すぎる量だ。
「それじゃあ今回はこれで終わりだね。」
「こんな大量のリザードマンをあんな簡単に・・・」
ラナが驚いている。
他の皆も驚いているし。
「まぁ、これが龍の力って事で。一応は私の護衛してくれてた子だからそれなりに強いんだよ。」
私が言うとキースが私に巻き付く様に私を中心に蜷局を巻くと私の顔の隣に顔を持ってくる。
「ありがとう、キース。ゆっくり休みな?」
「御意。」
キースはそのまま私の影に潜って行った。
それを確認してから私達も帰路につく。
今までより難易度の高い依頼もこなせた事もあり、私達はEランクからDランクへとランクアップした。
そして、更に受けられる依頼が増えた。
正に順風満帆と言うべきだろう。
─────────────
「それじゃあ、行こうか。」
私達は何時もの様に依頼を受けてギルドを出る。
すると、少し先の噴水広場に人集りが出来ていた。
その中からは悲鳴も聞こえる。
なんだろう?
私が言う出すよりも先にラナが動いていた。
私達も後を追うように噴水広場に向かう。
すると、そこには黒い大蛇がいた。
体躯は5m以上あり、黒い鱗に覆われ、私の胴よりも太い胴体をしている。
そして、真っ黒い蛇の背中には黒いコウモリの様な翼がはえている。
その姿に見覚えがあった。
デボーチェリー時代の私の相棒である黒蛇龍オニキスの『キース』だ。
「キース?」
私が問い掛ける様に言うとこちらを向く。
他の人にはわからないだろうがキースは嬉しそうな表情で私に巻き付いた。
「やっぱりキースだね!」
「はい、姫様。お久し振りでございます。」
キースが舌をチロチロと出して言った。
「先生・・・その蛇は・・・」
「あー、ごめんね。この子はキース。私の使役する龍だよ。訳あってデボーチェリー解散後は離れていたんだ。」
ラナが驚いた表情で言った。
まぁ、いきなりだし仕方ないよね。
「蛇?龍?」
ノノがじっと見つめながら言う。
まあ、見分けつきづらいか。
「蛇龍だよ。分類はれっきとした龍だよ。ただ、他の龍より蛇に近いってだけ。」
私が言うとキースが私から離れる。
私はキースの頭を撫でてあげる。するとキースは嬉しそうにぐるぐると喉を鳴らした。
こうしていると猫みたいだ。
「え、じゃあ火とか吐けるの?」
ミーナが言った。
「ううん、火は無理かな。キースは毒が吐けるよ。後は酸かな。」
「毒に酸・・・」
エリシアが少し怯えてキースを見る。
「大丈夫だよ。そうは言っても私の指示なければ攻撃しないから。
それに、コミュニケーションも取れるし。」
「うむ。」
キースが呟く。
龍は基本的に喋れる者が多い。
キースも喋れるがキースは無口な方だ。元々蛇龍系統は音に敏感だったりするから自ら音を発する事は少ない。だからだろう。
「姫様、これからはお供致します。また、影に潜みますので、戦闘の際は御呼びください。」
キースはそう言うと私の影に頭から入っていく。
「すごっ!」
「あはは、確かに影に隠れるのは珍しいかもね。さて、気を取り直して行こうか。」
私達は本来の依頼であるリザードマンの討伐へ向かう。
本来ならBランク依頼だが大量発生によりBランク以下でもギルドマスターの許可があれば受注可能になっている。
私達はロウクさんから半ば指名依頼で受けることになった。
なんでも倒しても数が減らないらしい。
リザードマンは小龍種と呼ばれ、立派な龍だ。
龍は繁殖力が低いぶん強靭な肉体を持ち、打たれ強い。
そんなリザードマンが大量発生と言うのも少しおかしな話だ。
「リザードマンか、一度見てみたかったんだ。」
リザードマンの住み処である山に向かうと確かに普通ではあり得ない量のリザードマンがいた。
体躯2m程で赤い鱗に覆われた二足歩行の蜥蜴人間。
手には剣や鉈、斧といった武器を持っている。
知能はそこそこ高いが魔法は使わず近接戦を得意とするのがリザードマンの特徴だ。
「キース!」
「お任せください!」
私が言うと影からキースが出てきた。
「ここはお任せを。この量なら1人で充分です。」
そう言うとキースが飛び立つ。
「《酸息吹》」
そう言って黄色い煙の様な息を吐く。
するとリザードマンの鱗が落ち始める。
「あ、皆目を瞑った方が良いよ。こっから段々リザードマンが溶けていくから。」
ゆっくりと溶けていくため中々グロい。
「《竜頭蛇尾》」
そう言ってキースがリザードマン目掛けて頭から突っ込むと着地点に2m程のクレーターができる。
そしてすぐに尻尾で周囲を凪払った。
「炎牙」
そう言うとキースの牙が燃える。
正確には可燃性の高い毒に発火性の高い毒を混ぜ合わせてそれを発火させているのだ。
キースは炎を纏った牙で自分の尻尾に噛みつくと尻尾を滑らせる様に口から引き抜く。
すると尻尾が炎を纏う。
これこそキースの得意技で牙で生成した毒や炎を尻尾に纏わせる属性纏いだ。
「《炎尾》」
キースがそう言って尻尾を剣の様にリザードマンを倒していく。
するすると地面を這い、リザードマンの足元を潜り抜けながら先程の酸を食らわなかったリザードマンだけを確実に仕留めていく。
「これで終わりです。《毒霧》」
そう言って赤い煙を吐く。
そしてその煙に尻尾の炎を近づける。
「《落日》」
キースの呟きと同時に尻尾の炎が赤い霧に引火して大爆発を起こした。
キースは炎を尻尾に纏わせるだけあって火に強くあの大爆発の中心にいても傷一つつかない。
「これだけ減らせばどうでしょうか?」
キースが私の元に戻って来て言った。
周囲にいたリザードマンは1/3以下にまで減っている。
充分すぎる量だ。
「それじゃあ今回はこれで終わりだね。」
「こんな大量のリザードマンをあんな簡単に・・・」
ラナが驚いている。
他の皆も驚いているし。
「まぁ、これが龍の力って事で。一応は私の護衛してくれてた子だからそれなりに強いんだよ。」
私が言うとキースが私に巻き付く様に私を中心に蜷局を巻くと私の顔の隣に顔を持ってくる。
「ありがとう、キース。ゆっくり休みな?」
「御意。」
キースはそのまま私の影に潜って行った。
それを確認してから私達も帰路につく。
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