最強少女は雑用が嫌なのでパーティーを抜けてスローライフを。

ALICE

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Ⅲ 指名依頼

16話 虹の魔女

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「やっと見つけた。」

1人の女性がそう言って私の肩を叩く。
私が振り替えるとそこには身長180cm程でくせっけの黒髪ロングでパッチリとした紫色の瞳の眼に整った目鼻立ち。
黒いとんがり帽子に黒いローブを羽織っており中には白いブラウスに胸元には赤いリボン、黒いロングスカートを穿いている。
靴は茶色いヒールの付いたくるぶし丈のブーツで正に魔女と言った出で立ちで左手には竹ホウキを持っている。

「ノエル!?久し振りだね!」

「だね。元気してた?」

「うん。ノエルも元気そうで何よりだよ。」

私とノエルは抱き合って喜ぶ。

「えっと、先生、その人は?」

「あー、ごめんごめん。この人は元デボーチェリーの魔術師で・・・」

「虹の魔女。ノエルと申します。貴女達がノワールの言ってたアリスちゃんの新しいパーティーメンバーね?よろしくね。」

ノエルがそう言って微笑む。
4人も自己紹介をした。

「立ち話もなんだしそこのカフェで食事でもしながらどう?」

私が言うと嬉しそうに頷いた。

「マスター、何時もの下さい。」

「あ、私も!」

「私もいつもので!」

「私は・・・オムライス定食にします。」

「じゃ、私はAランチプレート。」

私に続いて皆が注文する。
実はグランハルトでの昼食はここと決まっているレベルでほぼ毎日来ている。

「あ、私はこのフレンチトーストのセットで。」

ノエルもメニューを見て決めると注文をした。

「それにしても・・・どうしたの?こんな街に。
確か魔女として魔女学園の教師になったんじゃないっけ?」

「うん。そうなんだけどね。皆と冒険してた日々が忘れられなくてね。
学園辞めてまた冒険者を始めたんだ。」

ノエルが照れ臭そうに言った。
そういえば、ノエルは最後まで解散を反対してたっけか。

「そうなんだ。ずっと1人で?」

「うん。私はソロでも余裕だし。」

ノエルがそう言って微笑む。
確かに、ノエルの実力ならソロでも余裕だろう。

「あの、ノエルさんってかなり強いんですか?」

ラナが聞いた。

「魔法だけなら私よりも実力は上だよ。無詠唱で全属性魔法同時攻撃とか普通にやってのけるし。」

「む、無詠唱ですか!?」

エリシアが驚く。
まぁ、それもそうだ。
無詠唱とはかなり難しく、私でも簡単な魔法でしか出来ない。
無詠唱が出来るだけでも凄腕の魔術師だがノエルはそれをかなり高度な魔法でこなせるのだ。

「あはは、そんな誇るほどでも無いよ。魔女の最低条件として必要だしね。」

魔術師にはクラスがあり、見習い魔法使い、魔法使い、魔導師、魔術師、魔女と順に位が高くなる。
より高いランクになるにはそれなりに圧縮詠唱や無詠唱を使いこなせなければならない。
魔女へのランクアップの条件は『無詠唱での威力減衰無しで魔法使用が可能な事』だ。
一応私も満たしてはいるがこれがどれだけ難しい事かは私も理解している。

「私なんて圧縮詠唱でも威力減衰せずに詠唱するの大変なのに・・・」

ラナが呟く。
エリシアもうんうんとうなずいていた。

「私も威力減衰しても良いなら無詠唱出来る程度かな。
それも基礎魔法だけだし。」

ミーナが言った。確かに踊り子は魔法適正の高いクラスだから無詠唱が使えても不思議では無いがそれでもかなり凄いことだ。

「まぁ、練習あるのみだよ。ひたすらに練習すればすぐ使えるようになるからさ。」

ノエルは微笑んでそう言うと出てきた食事を頬張る。
その後は皆食事で静かになった。
私達のパーティーは食事が出ると静かになる。
マナーが良いと言うよりは皆食事に夢中になると言った感じだ。

─────────────

食事が終わると私達は話があると言うノエルに連れられ冒険者ギルドに場所を移した。
そして、そこはギルドマスターの部屋だった。

「ロウクさん、お久し振りです。」

「えぇ、お久し振りですな。虹の魔女殿。」

ロウクさんは丁寧にお辞儀をした。

「それで、ここで話って?」

「うん、グランマルスのスタンピード調査がアリスちゃん宛に出されたって聞いてね。
ただ、ノワールからアリスちゃんのパーティーじゃ難しいって聞いたからお手伝いにね。」

ノエルが微笑む。
確かに、ノエルが加わればかなり戦力としても期待できる。
が、それでもやはり難しい事に変わりはないだろう。

「その事なんだけどね。今回はその依頼断ることにしたんだ。
このパーティーの実力じゃ難しいから。」

私が言うとノエルは少し驚いた顔をした。

「そうなんだ。
アリスちゃんの事だから受けたと思った。
自分が何とかするって。」

ノエルが微笑む。
確かに、デボーチェリーの頃の私なら同じ状況でもそうしていた。
私が何とかするからって。
頼まれたら断れない質なのだ。
だが皆と出会って、私も変わったと思う。
皆を危険な目に合わせたくない。
そう思うと自然と断るという選択肢が出ていた。
今まででは絶対に出なかった選択肢が。

「でも、少し安心したよ。アリスちゃんの自己犠牲癖も少しは落ち着いたみたいで。」

ノエルがそう言って嬉しそうに私を見る。
思えば、私の事を一番気に掛けてくれていたのはノエルだった。
今回も、何も言わずにも駆け付けてくれたし。

「誉め言葉として受け取っておく。」

「うん。そうして。でも、そうか・・・なら・・・うん。」

ノエルは何かを考え込む様にボソボソと呟く。

「アリスちゃん、私は暫くこの街に滞在する予定なんだけどさ、何かあったら呼んで。何時でも手伝うから。」

ノエルはそう言って微笑むとロウクさんの元へ向かう。

「ロウクさん、暫く滞在するので適当な依頼を私に振ってください。
アリスちゃんに呼ばれない限りは面倒な依頼は私が引き受けましょう。」

「本当ですか。いや、助かります。それでは、お言葉に甘えて幾つか依頼をお願い致します。」

ノエルはロウクさんから依頼を幾つか貰うとそれをローブに仕舞う。

「アリスちゃん、何かあったらまた、ね。」

ノエルはそう言って微笑むとその場を後にした。

「ロウクさん、私達は今の私達に出来る依頼をこなそうと思います。」

「えぇ、それがよろしいかと。王様には私から言っておきますから。
貴女は冒険者ですし、貴女のやりたいことをやるのが良いかと。
それに、優秀な冒険者が増えるのは良い事です。
クリスタルハーツを宜しくお願い致しますね。」

ロウクさんは優しく微笑むと私に一枚の依頼を手渡した。

「私からの餞別と思って下さい。貴女方の実力を試すには良いものかと。」

ロウクさんがそう言ってからお辞儀をする。
私達もお辞儀をして部屋を後にした。

「先生、さっきの依頼って?」

「あー、うん。これだね。」

─────────────
【ダンジョン調査:豊穣の滝】

受注条件
Fランク以上かつ4名以上のパーティー。
ダンジョン攻略配信経験者。

内容
新たに発見されたFランクダンジョン『豊穣の滝』の内部調査をお願いしたい。
先遣隊の話だと低ランクのモンスターの気配しかしないらしい。
が、総階層数やボスモンスターは不明だ。心してかかるように。

目的地
豊穣の滝

報酬
ダンジョン攻略で得たアイテム全て

期間
無し

依頼者
グランハルト冒険者ギルド
─────────────

「これって・・・」

「この依頼なら受けられそうだね。」

「よし!じゃあ次の仕事はこれだな!」

まさか、新たなダンジョンの調査なんて。
しかも、Fランクダンジョンとは。
新たなダンジョン自体見つかるのは稀であり、見つかるとしても高ランクのダンジョンが多い。
と言うのも低ランクのダンジョンは探索され尽くしており、新たに見つかることもほぼないのだ。
つまり、今回のこの依頼はレアケースだ。
それを私達に・・・
確かに、これは餞別と言って良いだろう。
新たなダンジョンの攻略というのは最初の人がレアなお宝を総取り出来る。
だが、攻略の情報も何もないので難易度も上がる。
それでもFランクダンジョンならクリアしやすいしかなり美味しい依頼だと思う。

「さてと、それじゃあこの依頼の準備をしようか。」

私がそう言うと皆が頷いて準備をする。
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