最強少女は雑用が嫌なのでパーティーを抜けてスローライフを。

ALICE

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Ⅰ クリスタルハーツ

3話 迷宮のボス

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ゴブリン30体だと分かっていればここのボスは対策がしやすく簡単だ。
初心者でも倒せる事は倒せる。
ただ、初心者の場合は細心の注意が必要になる。
30体のゴブリン全ての動きを監視するのは難しいからどこから攻撃が来るかわからない時もある。
だからこそ、ここではタンクが鍵を握る。
出来るだけ多くのゴブリンを引き付けて貰わねばならないからだ。

「それじゃあ、行くよ?」

私が言うと3人が頷く。
ゆっくりと足を踏み入れると赤い炎が壁の燭台に灯される。
そして、その中心には体躯2m程の緑色の肌で巨大な鉈を持ち、頭には王冠を被ったゴブリンが居た。
なっ!?
ゴブリンキング!?
なぜ、20層のボスが5層にいるの!?

「皆下がって!撤退!!私が殿を務めるから速く!こいつは20層のボス。今の皆じゃ勝てない!」

私は急いで細剣を召喚する。
ステラ・タクトと呼ばれる武器で黒い柄で根本には紅い菱形のクリスタルが付いており金色の鞘、鞘の根本から柄の先までナックルガードが付いている銀色の刃を持つレイピアだ。
この武器の最大の特徴は杖の代わりにもなる事だ。
性格にはこの武器は杖の仕込み剣で鞘に納めると杖として使える。

「クリスタルパージ!」

私が言うと柄の先に付いているクリスタルが切り離されて私の周りをふわふわと浮かぶ。
魔法を使うために必要なのはこのクリスタルだ。
杖の時の先端に付いているクリスタルで細剣として使う際はこの様に切り離して浮遊させる。

月文字付与ルーンエンチャント!《PIS貫通》《FIA炎属性》《RPD速度上昇》!」

私が唱えると文字が武器に刻まれる。
ルーンと呼ばれる特殊な文字を武器に刻み込んでエンチャントする特殊な魔法だ。

「《炎よ、燃え盛る柱となりて敵を穿て!ファイアピラー!》」

「《風よ、全てを灰塵と化す強風となりて吹き荒べ!タイフーン!》」

ラナちゃんとエリシアちゃんが魔法を唱える。
逃げてって言ったのに!
2人の攻撃がゴブリンキングに当たると怯みはしたがダメージとしてはそこそこの様だ。
ゴブリンキングは物理も魔法も耐性がかなり高い為初心者の攻撃ではそんなにダメージを与えられない。

「君達じゃ敵わない。私に任せて逃げて!」

「先生、私達は邪魔ですか?」

「ごめん、今は、邪魔。貴女達にヘイトが集まると私も防ぎ切れない。だから、逃げて。」

私が言うと3人は少し悲しそうな顔をしてその場を去った。
ぶっちゃけ言えば初心者用のダンジョンであるこのダンジョンも20階層は上級者向けと言える。
それだけゴブリンキングが強いのだ。
何人の初心者の命を奪ってきたか。
その数は計り知れないだろう。

「ノーブルピアス!スラッシュバック!クリスタル!」

私は全速力でゴブリンキングの懐に飛び込むと腹に細剣を突き刺し、そのまま切り上げながら飛び上がって距離をあける。
それと同時にクリスタルが細剣の柄にくっついたので剣を鞘に納めて持ち方を変え、杖にする。白い鞘には金色の龍の装飾が施されている。

「《コメット》《ファイアランス》《エアロストライク》《ロックブラスト》《ホーリーシャイン》《ダークネスアロー》」

私が唱えると隕石が降ってきてそれから炎の槍、風の塊、巨石の弾、光、闇の矢が順に現れて全てがゴブリンキングの腹に当たる。
圧縮詠唱と呼ばれる物で詠唱を圧縮する分速く打てるがその分威力が下がる。
私はこれを鍛練して威力を落とさず圧縮する事に成功した。
かなり高難易度な技だ。

「これで!とどめだよ。《空に煌めく星々よ、光は集い全てを穿て!メテオビーム!》」

私が唱えると空に星が光り輝きその光が一点に集まるとそこからビームが放たれてゴブリンキングの腹に50cm程の風穴を空けた。
そして、それと同時にゴブリンキングが倒れる。
ゴブリンキングは破壊力の高い一撃を得意としている。
だからこそ、攻撃をさせる前に倒した。
そうでもしないと私でもかなりキツイし。
ぶっちゃけ、私1人なら余裕で倒せるがそれでも注意は必要だ。
こいつは周囲のゴブリンを集める能力を持つ為時間をかければダンジョン中のゴブリンが集まってしまう。
だから、私の全力で倒した。

「皆、もう大丈夫だよ。」

私がそう言って岩影に隠れていた3人を呼ぶ。
3人は少し悲しそうな、悔しそうな表情で私の元に来た。

「このことはギルドに報告しないとね。ゴブリンキングがこんな上まで来る訳が無いから。原因を突き止めないと。」

私はあえて解体せずにゴブリンキングの死体をマジックストレージに格納した。

「3人とも、クエストは終わってないよ。
あくまでも目標は霊薬草だからね。」

「はい!そうですね。先生!」

ラナちゃんがそう言って微笑む。
しかし、少しだけ、どこかぎこちなかった。

その後私達は霊薬草を無事に採取してギルドへと戻るのだった。
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