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2 本当の始まり(スタート)

10.幼女は過保護と共に②

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私達はお父様の軍部から王城へとやってきた。
叔父様が私に会いたがるなんてなんだろう。
確かに最近は会う機会も無く最後に会ったのは1年前になるが・・・

「まさか王城に行くことになるなんて・・・」

シーナが呟く。
まぁ、平民の出の3人は遠目でみるのが精一杯な場所だろうし。

「これはこれはヒースメルク様。ヒースメルク様でしたら確認の必要もありません。どうぞ、ご自由にお入り下さい。」

城へ入る門には門番がいるが私は顔パスだ。
普通なら持ち物検査に身分検査、薬物検査、魔法検査をしてやっと入れる厳重な警備だが公爵令嬢であり国王の姪と言う立場から顔パスだ。

「ふえー、顔パス・・・」

「やっぱり、ヒメちゃんって凄いんだね。」

リノとエリーが言った。
まぁ、この程度で驚いてはいけない。

「あ、ヒメねーさま!」

「ほんと!?ヒメねーさま!?」

王城へ入ってすぐ出会ったのは水色髪とピンク髪の2人の少女だ。
私の従姉妹であり第二王女、第三王女であるルリハとクレハだ。
まだ7歳だからか甘えん坊で良く城を抜け出しては私の家に来ていた事もある程のお転婆姉妹だ。

「ルリちゃん、クレちゃん久し振りだね。元気にしてた?」

「んー!元気だよ!」

「クレも元気!」

2人の頭を撫でてあげると2人は嬉しそうに微笑む。

「お父様にご用?」

「それともクレと遊ぶの!?」

「あはは、2人のお父様とお話があるんだ。
また今度遊んであげるからね。」

私が言うと2人が頷いた。

「ルリハ様!クレハ様!お待ちください!」

「あ、ステラだ!逃げろー!」

「ステラだ逃げろ!」

2人はそう言って私に手を振ると駆け出して言った。

「元気だなー。」

「だねー。」

「あはは。」

3人が苦笑いで見ていた。
まぁ、初対面だとそうなるか。

私達は謁見の間へと進む。
途中何人もの近衛兵やメイドに出会いその度にお辞儀や敬礼で出迎えられた。

「これはこらはヒースメルク様。国王陛下にご用事ですか。」

「えぇ、久しぶりにね。」

「国王陛下もお喜びになるかと。」

2人の近衛兵が守る謁見の間への扉の前に立つとゆっくりと扉が開く。

「ヒースメルク・アルヴァスター公爵令嬢様のご到着です。」

大臣がそう言うのと同時に私達は国王の座る玉座の前まで進む。

「お久し振りです。叔父様。」

私がそう言ってスカートの裾を持ってお辞儀をする。

「久しぶりだね。ヒメちゃん。元気にしてたかい?」

「えぇ、お陰様で。叔父様もご健勝の様で何よりです。」

私が言った。
周囲には重い空気が流れる。

「はっはっはっ、そうかしこまらなくて良いんだよ。いつも通りで。」

「ふふっ、わかりました。叔父様。一応ここは謁見の間ですからこちらの方が良いかと思ったのですが。」

「構わないさ。ルリハやクレハも大分お世話になっているからね。」

叔父様はそう言って微笑む。
まぁ、王城でお父様が用事の時は私もついてきて2人と遊んでいたし叔父様が城を留守にする時はうちに2人を預けて行った位だ。

「あの2人の魔力量大分増えてましたね。
将来優秀な魔術師になりそうです。」

「そうか。ヒメちゃんが言うなら間違いないな。
あの2人が8歳になったら2人の先生をお願いしたい。どうかな?」

「そうですね。冒険者のついででも良ければ。」

「構わないさ。ステラロードの教えを受けられる。それだけで充分だ。」

叔父様はそう言って笑う。
ステラロードは私が初めてのクラスであり、それ故に各国からも注目されている。
一時期は私が次期国王になるなんて噂まで立ったほどだ。
ちなみに、その噂の発生元は何を隠そう叔父様だったりする。

「叔父様、そういえばお父様に会ったら叔父様がお話があると聞きました。」

「あぁ、そうだった。
ヒメちゃんが冒険者になると聞いて是非協力したくてね。
ただ、レイシスが資金援助をすると聞いたから私は別の方法で援助をしようと思ったんだ。
ロンじい、例の物を。」

叔父様が言うとそばに仕えていた老人が私の前に小箱を持ってきた。
中にはメダルが4つ入っている。
メダルには海神龍リヴァイアサンが描かれていた。
リヴァイアサンはアトラティア公国の守り神とされており、そのマークは王家の家紋でもある。

「これは私の後ろ楯があると言う証だ。
どこで見せても効果はあるはずだよ。
これがあればこの国の関税は全て免除になるし、入出国の際も簡単に出来るだろう。
それに、クエストも受けやすくなるさ。
ヒメちゃん以外の3人にもあげるよ。
勿論、個人的な理由で使用してもらって構わない。
ヒメちゃんが見初めた者達だ。
間違った使い方はしないだろう。」

叔父様が微笑む。
まさかの4人分だ。

「ありがとうございます。叔父様。」

「あ、ありがとうございます。」

「感謝致します。」

「ありがとうございます。」

私に続いて3人も私よりも深々とお辞儀をした。

「構わないさ。
それで、是非3人の名前を聞かせてくれるかい?」

「セイレーン族のリノ・シャナーです。クラスは錬金術師をしています。」

「セントール族のエリシア・ルーフォスです。クラスはルナティックランサーです。よろしくお願い致します。」

「え、えと・・・
ケットシーのシャルティナ・ハントイットと言います。
ローグフェンサーをしています。よろしくお願いします!」

3人が言った。
叔父様はうんうんと頷きながら聞いていた。

「そうかそうか、3人とも獣人か。
この国は差別の無いようにしてきたつもりだがどうかね?
まだ貴族の間では獣人差別もあると聞く。
嫌な事は無かったかい?」

「えと・・・」

3人が困った様子でオドオドとしていた。
まぁ、国王からそんなこと聞かれたら答えづらいよね。

「構わないさ。
私は貴族と話すことはあっても平民と話すことは無いんだ。
この国で最も多いのは平民だし、この国をつくっているのは平民だよ。
平民あっての国なんだ。
こんな機会は稀だからね。
是非とも平民の意見が聞きたいんだ。」

叔父様がそう言って微笑む。

「えと、冒険者学校在学中は何度かありました。
その、ヒメちゃんと一緒のパーティーが気に入らなかったみたいで・・・獣風情がヒースメルク様と一緒にいるなと、良く言われました。
その度にヒメちゃんが怒ってくれましたけど。」

エリーが言った。
この中で一番言われていたのはエリーだったと思う。
まぁ、姿が一番獣に近いからだろうが。

「そうか。それは辛い思いをさせてしまったね。
申し訳ない。」

そう言って叔父様が深々と謝罪をした。

「そ、そんな!国王陛下のせいではありません!」

「いや、貴族を纏めるのも私の仕事だ。
貴族が獣風情だなんて言うのは私の政策が行き届いていない証拠だよ。」

叔父様が言った。

「叔父様、やはり一部貴族は叔父様の意見に反対の様でした。
獣人は所詮獣だと考える貴族も少なくありません。
しかし、叔父様の手前大声でそれは言えませんから平民に当たるのだと思います。」

「ふむ、私の前では言えないからか。
まぁ、隠し事は悪いことでは無いし、私も隠し事が無いと言えば嘘になる。
だが、それが本当の忠義と言えるかと言われると・・・」

叔父様が考え込む。

「問題は公爵家の人間にも獣人差別をしている者がいることです。
公爵家は王下10魔公と呼ばれ王へ絶対の忠誠を誓っております。
それが、王と反する思想を持っているとなると問題が生じるかと。」

私が言った。
正直な所、公爵家の内何家がかはわからない。
が、少なくとも1つは反乱因子と捉えることも出来る。

「1度、公爵家を集める必要があるかもしれんな。
ありがとう。君達のお陰でこの国の腐った部分がわかるかも知れない。
心から感謝するよ。」

叔父様がそう言ってお辞儀をする。

「そ、そんな!?」

「も、勿体無いお言葉です。」

「あ、ありがとうございます。」

3人が驚いた様子で言った。
まぁ、国王がここまで平民の話に親身になって聞いてくれればね。

「そうだ、ヒメちゃん。
この前あげた武器の使い心地はどうかな?」

叔父様が言った。
この前あげた武器とは私が入学した時に叔父様がくれた武器だろう。

「とても使いやすいです。
さすがは国宝ですね。」

「はっはっはっ、宝物庫で眠るより使えるものが使う方が良いと私は思うんだ。
グラムもブラッディサイズもクリスタルドラグーンもね。」

私が叔父様から貰った武器は全て国宝だ。
影を操る力を持つ大剣『幻影ノ魔剣げんえいのまけんグラム』。
血を吸う事でより鋭利に、強くなる大鎌『血吸いの大鎌ブラッディサイズ』。
龍の力を封じ込めたクリスタルを使用した仕込み杖『水晶龍ノ杖剣クリスタルドラグーン』。
私が叔父様から貰ったのはどれも宝物庫から出すことも許されない様な国宝だ。
だが、叔父様はそれを誰も使わず眠るより使えるものが使う方が武器も嬉しいだろうと私にくれた。
叔父様もお父様に似て過保護なのだ。
私が少しでも楽できる様にと国宝を渡すくらいだからね。

「そうだ、3人にも武器を見繕っておこう。
すぐには無理だから・・・そうだな・・・君達がCランクになったらそのお祝いに武器をプレゼントするよ。」

叔父様が微笑んで言った。
まさか、3人にも国宝を渡すのだろうか。
いや、流石にそれは無いか。
いくらなんでも平民に国宝を渡せば家臣も黙ってはいないだろう。
お父様ですら国宝は持っていない。
逆に言えばお父様すら持っていない国宝を3つもくれるほど叔父様は私に過保護だ。

「叔父様、あまり目立つような物はやめて下さいね?私も3つも貰ったせいでかなり噂になったんですよ。
次期国王は私が濃厚だとか、第一王子のルーク様と結婚するんだとか・・・」

「はっはっはっ、それは申し訳ないな。
いや、私としてはヒメちゃんが次期国王でも構わないのだがね。
ステラロードとして優秀なクラスを持ち、ある程度政治学も学んでいる。
何より、ヒメちゃんは民に愛される性格をしているからね。」

叔父様がそう言って笑う。

「へ、陛下っ!?」

ほら、ロンじいが驚いてる。
ロンじいは叔父様の右腕であり、国王補佐を務めている宰相だ。

「はっはっはっ、冗談さ。
国王はルークになるだろうさ。あの子は強いし優しい。
まだ心が育ちきっていないかも知れないがね。」

叔父様も流石に冗談だよね。
流石に王位継承権上位4名を抜いて第5位の私がなるわけない。

「さて、少し話しすぎてしまったね。
冒険者は忙しいと聞く。
4人とも頑張ってくれ。
何か不満があったらまた来ると良い。
国王として出来る限り協力すると約束しよう。
それじゃあ、君達に海神龍のご加護があらんことを。」

叔父様が言った。

「ありがとうございます。叔父様。
また顔を見せに来ます。」

私はそう言ってお辞儀をすると他の3人もお辞儀をして部屋を後にした。
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