ライオット・パーク

Luckstyle

文字の大きさ
上 下
7 / 9

七話

しおりを挟む
「さて、結果が気になるところだろうけど場所を変えようか。冒険者ギルドの二階に行こう。そこには応接間やら会議室やらが有るんだ」
息を整える合間を貰った後、クックさんはそう言って俺達に退場するように促す。促されるまま俺達は演習場を退場した。
 そのまま四階分を駆け上がり、応接室に通される。そこにはアンネリーゼさんともう二人、男性が俺達を待っていた。
「やぁ、アンネリーゼから聞いているよ。クックが今朝べた褒めしていた子達だって?」
「ドラム村のエリフォードの息子、アランです」
「ドラム村のランナベルトの娘、エリスフィーです」
クックさんより少し年上そうな人が朗らかに話しかけてきたので握手をしつつ自己紹介する。それを温かい目で受け止めつつその人は頷いた。
 種族は無角類猿人族ヒューマン、長身で肉付きは中くらい。金髪碧眼で髪は長くストレート。見目麗しく彫りが深い。纏っている服は狩人を連想させるし、音が立たない事から生粋の狩人職レンジャーの人だろう。
「いやぁ、アンネリーゼが褒める事はあるね。若いのに礼儀がしっかりしてる。申し遅れたが俺はダグラス。ここのギルドの支部長ギルドマスターをやっている。こっちは副支部長サブギルドマスターのランハルト」
「よろしく」
「「よろしくお願いします」」
挨拶をしてからお辞儀をし、戻るとランハルトさんの耳がピコピコ動いているのが見えた。
ランハルトさんは年齢不詳が世に知れ渡っている無角類耳長族エルフらしく、両耳が長く尖っている。着ている服は軽装の上にローブを羽織るといういかにもな感じだ。耳に気を取られつつ握手をすると一層激しく耳が揺れる。
「あっはっはっ、随分ご機嫌じゃいなかランハルト。・・・・・・こいつは礼節に五月蠅いからお眼鏡に叶ったらしいぞ?」
ダグラスさんがご機嫌に言うとランハルトさんの耳がピンとつり上がる。
「五月蠅いですよマスター」
鋭く吐かれた言葉は気恥ずかしさが有るのか語気ほどに嫌の感情はない。害意のない気持ちの良いやり取りだ。
「あぁ、そうだ。ランハルトが居るならこの子達の魔法を見てやってくれねぇか。俺じゃ細かく見れないんでな」
やり取りが終わるのを見計らってか、クックさんはそんな事をランハルトさんに提案する。俺達は慌てたが、当のランハルトさんはご機嫌に耳を揺らしつつ二つ返事で請け負っていた。
「アンネリーゼ女史、大きな空き瓶を二つこちらへお願いします」
「わかりました」
「ではアランさん、エリスフィーさん生活魔法をお願いします。まずは火から」
「「はい!『火よファイヤ』」」
言われた通りに火の生活魔法を発動させる。
 それを暫く角度を変えながら眺めていたランハルトさんは満足いったのか頷いてから止めるよう指示を出す。
 後はほとんど同じで風と水を発動させた。
「魔法の発動は優秀ですね。それに、その歳で無言詠唱スキップ・スペルはレベルが高い。もう少し練習すれば生活魔法は無詠唱サイレント・マジックが見えてきます。良く独学でここまで高められたのだと感心しますよ」
俺とエリーの魔法の総評はそんな感じだった。・・・・・・そうか、俺も無詠唱の高みへ上り詰められるのか。
「二人の話によると二人とも身体強化魔法、エリーが弱化魔法と阻害魔法が使えるらしいぞ」
「やって見せて。弱化と阻害は私にかけてください」
「「はい!『身体強化ボディ・アッパー』」」
「『身体弱化ボディ・ダウナー』、『行動阻害アクション・インヒビット』」
「へぇ」
ゾクゥ・・・・・・!
訓練施設で感じた悪寒がまたも襲い、エリーと二人して背後へ跳び退る。
「?」
他の人たちはそんな行動をとった俺達をポカンとした表情で眺めている。
「おっと、漏れてはいけないモノが漏れてしまったかな?その感知能力と反射神経は瞠目に値するね。その感覚は生来の物だ。大事にすると良い」
妙な気配が霧散したランハルトさんはにこやかにそう告げる。俺達は戸惑いつつも生返事を返し、お礼を述べる。ランハルトさんの耳が嬉しそうにピコピコ揺れた。

「冒険者ギルド加入条件の実力試験は魔法、得物共に申し分なし。君達はこれから冒険者だ。ギルドを代表して歓迎しよう」
色々片付けた後、必要書類を書いた俺達はダグラスさんからそう言われた。それで漸くスタートラインに立ったのだと実感が沸いてくる。
「あぁ、そうそう。この二人、故郷の村で面白い訓練方法を編み出してたみたいだからレシピ作らせて買い取った方が良いよ」
「む?本当か?・・・・・・アンネ、書き留めてくれ」
「はい」
余韻に浸る間もなく、クックさんが思い出したように言い、それに従ってアンネリーゼさんが胸元から紙とペンを取り出す。・・・・・・うらやまーー
「ーーいったっ!?」
わき腹に鋭い痛みが走りそちらにいるエリーに非難の視線を送ると氷点下の視線で睨まれ、ぷいっと視線を逸らされる。
 そんなこんなが有りつつも訓練方法をダグラスさんに口頭で説明する。ついでに蹴りの訓練を見せた。アンネリーゼさんはもう一枚紙を取りだしていた。
 出来上がったのは弱化魔法と阻害魔法を組み合わせた訓練方法と、ゆっくり動きながら動きを確認する方法。ダグラスさんはそれを早速買い取り、発案者は俺、レシピの所有権は俺とエリー、両方が持つ事になった。ギルド員になったことでギルドが保有する銀行の口座が開設され、レシピの使用料はそこに振り込まれることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

適正異世界

sazakiri
ファンタジー
ある日教室に突然現れた謎の男 「今から君たちには異世界に行ってもらう」 そんなこと急に言われても… しかし良いこともあるらしい! その世界で「あること」をすると…… 「とりあいず帰る方法を探すか」 まぁそんな上手くいくとは思いませんけど

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...