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七話
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「さて、結果が気になるところだろうけど場所を変えようか。冒険者ギルドの二階に行こう。そこには応接間やら会議室やらが有るんだ」
息を整える合間を貰った後、クックさんはそう言って俺達に退場するように促す。促されるまま俺達は演習場を退場した。
そのまま四階分を駆け上がり、応接室に通される。そこにはアンネリーゼさんともう二人、男性が俺達を待っていた。
「やぁ、アンネリーゼから聞いているよ。クックが今朝べた褒めしていた子達だって?」
「ドラム村のエリフォードの息子、アランです」
「ドラム村のランナベルトの娘、エリスフィーです」
クックさんより少し年上そうな人が朗らかに話しかけてきたので握手をしつつ自己紹介する。それを温かい目で受け止めつつその人は頷いた。
種族は無角類猿人族、長身で肉付きは中くらい。金髪碧眼で髪は長くストレート。見目麗しく彫りが深い。纏っている服は狩人を連想させるし、音が立たない事から生粋の狩人職の人だろう。
「いやぁ、アンネリーゼが褒める事はあるね。若いのに礼儀がしっかりしてる。申し遅れたが俺はダグラス。ここのギルドの支部長をやっている。こっちは副支部長のランハルト」
「よろしく」
「「よろしくお願いします」」
挨拶をしてからお辞儀をし、戻るとランハルトさんの耳がピコピコ動いているのが見えた。
ランハルトさんは年齢不詳が世に知れ渡っている無角類耳長族らしく、両耳が長く尖っている。着ている服は軽装の上にローブを羽織るといういかにもな感じだ。耳に気を取られつつ握手をすると一層激しく耳が揺れる。
「あっはっはっ、随分ご機嫌じゃいなかランハルト。・・・・・・こいつは礼節に五月蠅いからお眼鏡に叶ったらしいぞ?」
ダグラスさんがご機嫌に言うとランハルトさんの耳がピンとつり上がる。
「五月蠅いですよマスター」
鋭く吐かれた言葉は気恥ずかしさが有るのか語気ほどに嫌の感情はない。害意のない気持ちの良いやり取りだ。
「あぁ、そうだ。ランハルトが居るならこの子達の魔法を見てやってくれねぇか。俺じゃ細かく見れないんでな」
やり取りが終わるのを見計らってか、クックさんはそんな事をランハルトさんに提案する。俺達は慌てたが、当のランハルトさんはご機嫌に耳を揺らしつつ二つ返事で請け負っていた。
「アンネリーゼ女史、大きな空き瓶を二つこちらへお願いします」
「わかりました」
「ではアランさん、エリスフィーさん生活魔法をお願いします。まずは火から」
「「はい!『火よ』」」
言われた通りに火の生活魔法を発動させる。
それを暫く角度を変えながら眺めていたランハルトさんは満足いったのか頷いてから止めるよう指示を出す。
後はほとんど同じで風と水を発動させた。
「魔法の発動は優秀ですね。それに、その歳で無言詠唱はレベルが高い。もう少し練習すれば生活魔法は無詠唱が見えてきます。良く独学でここまで高められたのだと感心しますよ」
俺とエリーの魔法の総評はそんな感じだった。・・・・・・そうか、俺も無詠唱の高みへ上り詰められるのか。
「二人の話によると二人とも身体強化魔法、エリーが弱化魔法と阻害魔法が使えるらしいぞ」
「やって見せて。弱化と阻害は私にかけてください」
「「はい!『身体強化』」」
「『身体弱化』、『行動阻害』」
「へぇ」
ゾクゥ・・・・・・!
訓練施設で感じた悪寒がまたも襲い、エリーと二人して背後へ跳び退る。
「?」
他の人たちはそんな行動をとった俺達をポカンとした表情で眺めている。
「おっと、漏れてはいけないモノが漏れてしまったかな?その感知能力と反射神経は瞠目に値するね。その感覚は生来の物だ。大事にすると良い」
妙な気配が霧散したランハルトさんはにこやかにそう告げる。俺達は戸惑いつつも生返事を返し、お礼を述べる。ランハルトさんの耳が嬉しそうにピコピコ揺れた。
「冒険者ギルド加入条件の実力試験は魔法、得物共に申し分なし。君達はこれから冒険者だ。ギルドを代表して歓迎しよう」
色々片付けた後、必要書類を書いた俺達はダグラスさんからそう言われた。それで漸くスタートラインに立ったのだと実感が沸いてくる。
「あぁ、そうそう。この二人、故郷の村で面白い訓練方法を編み出してたみたいだからレシピ作らせて買い取った方が良いよ」
「む?本当か?・・・・・・アンネ、書き留めてくれ」
「はい」
余韻に浸る間もなく、クックさんが思い出したように言い、それに従ってアンネリーゼさんが胸元から紙とペンを取り出す。・・・・・・うらやまーー
「ーーいったっ!?」
わき腹に鋭い痛みが走りそちらにいるエリーに非難の視線を送ると氷点下の視線で睨まれ、ぷいっと視線を逸らされる。
そんなこんなが有りつつも訓練方法をダグラスさんに口頭で説明する。ついでに蹴りの訓練を見せた。アンネリーゼさんはもう一枚紙を取りだしていた。
出来上がったのは弱化魔法と阻害魔法を組み合わせた訓練方法と、ゆっくり動きながら動きを確認する方法。ダグラスさんはそれを早速買い取り、発案者は俺、レシピの所有権は俺とエリー、両方が持つ事になった。ギルド員になったことでギルドが保有する銀行の口座が開設され、レシピの使用料はそこに振り込まれることになった。
息を整える合間を貰った後、クックさんはそう言って俺達に退場するように促す。促されるまま俺達は演習場を退場した。
そのまま四階分を駆け上がり、応接室に通される。そこにはアンネリーゼさんともう二人、男性が俺達を待っていた。
「やぁ、アンネリーゼから聞いているよ。クックが今朝べた褒めしていた子達だって?」
「ドラム村のエリフォードの息子、アランです」
「ドラム村のランナベルトの娘、エリスフィーです」
クックさんより少し年上そうな人が朗らかに話しかけてきたので握手をしつつ自己紹介する。それを温かい目で受け止めつつその人は頷いた。
種族は無角類猿人族、長身で肉付きは中くらい。金髪碧眼で髪は長くストレート。見目麗しく彫りが深い。纏っている服は狩人を連想させるし、音が立たない事から生粋の狩人職の人だろう。
「いやぁ、アンネリーゼが褒める事はあるね。若いのに礼儀がしっかりしてる。申し遅れたが俺はダグラス。ここのギルドの支部長をやっている。こっちは副支部長のランハルト」
「よろしく」
「「よろしくお願いします」」
挨拶をしてからお辞儀をし、戻るとランハルトさんの耳がピコピコ動いているのが見えた。
ランハルトさんは年齢不詳が世に知れ渡っている無角類耳長族らしく、両耳が長く尖っている。着ている服は軽装の上にローブを羽織るといういかにもな感じだ。耳に気を取られつつ握手をすると一層激しく耳が揺れる。
「あっはっはっ、随分ご機嫌じゃいなかランハルト。・・・・・・こいつは礼節に五月蠅いからお眼鏡に叶ったらしいぞ?」
ダグラスさんがご機嫌に言うとランハルトさんの耳がピンとつり上がる。
「五月蠅いですよマスター」
鋭く吐かれた言葉は気恥ずかしさが有るのか語気ほどに嫌の感情はない。害意のない気持ちの良いやり取りだ。
「あぁ、そうだ。ランハルトが居るならこの子達の魔法を見てやってくれねぇか。俺じゃ細かく見れないんでな」
やり取りが終わるのを見計らってか、クックさんはそんな事をランハルトさんに提案する。俺達は慌てたが、当のランハルトさんはご機嫌に耳を揺らしつつ二つ返事で請け負っていた。
「アンネリーゼ女史、大きな空き瓶を二つこちらへお願いします」
「わかりました」
「ではアランさん、エリスフィーさん生活魔法をお願いします。まずは火から」
「「はい!『火よ』」」
言われた通りに火の生活魔法を発動させる。
それを暫く角度を変えながら眺めていたランハルトさんは満足いったのか頷いてから止めるよう指示を出す。
後はほとんど同じで風と水を発動させた。
「魔法の発動は優秀ですね。それに、その歳で無言詠唱はレベルが高い。もう少し練習すれば生活魔法は無詠唱が見えてきます。良く独学でここまで高められたのだと感心しますよ」
俺とエリーの魔法の総評はそんな感じだった。・・・・・・そうか、俺も無詠唱の高みへ上り詰められるのか。
「二人の話によると二人とも身体強化魔法、エリーが弱化魔法と阻害魔法が使えるらしいぞ」
「やって見せて。弱化と阻害は私にかけてください」
「「はい!『身体強化』」」
「『身体弱化』、『行動阻害』」
「へぇ」
ゾクゥ・・・・・・!
訓練施設で感じた悪寒がまたも襲い、エリーと二人して背後へ跳び退る。
「?」
他の人たちはそんな行動をとった俺達をポカンとした表情で眺めている。
「おっと、漏れてはいけないモノが漏れてしまったかな?その感知能力と反射神経は瞠目に値するね。その感覚は生来の物だ。大事にすると良い」
妙な気配が霧散したランハルトさんはにこやかにそう告げる。俺達は戸惑いつつも生返事を返し、お礼を述べる。ランハルトさんの耳が嬉しそうにピコピコ揺れた。
「冒険者ギルド加入条件の実力試験は魔法、得物共に申し分なし。君達はこれから冒険者だ。ギルドを代表して歓迎しよう」
色々片付けた後、必要書類を書いた俺達はダグラスさんからそう言われた。それで漸くスタートラインに立ったのだと実感が沸いてくる。
「あぁ、そうそう。この二人、故郷の村で面白い訓練方法を編み出してたみたいだからレシピ作らせて買い取った方が良いよ」
「む?本当か?・・・・・・アンネ、書き留めてくれ」
「はい」
余韻に浸る間もなく、クックさんが思い出したように言い、それに従ってアンネリーゼさんが胸元から紙とペンを取り出す。・・・・・・うらやまーー
「ーーいったっ!?」
わき腹に鋭い痛みが走りそちらにいるエリーに非難の視線を送ると氷点下の視線で睨まれ、ぷいっと視線を逸らされる。
そんなこんなが有りつつも訓練方法をダグラスさんに口頭で説明する。ついでに蹴りの訓練を見せた。アンネリーゼさんはもう一枚紙を取りだしていた。
出来上がったのは弱化魔法と阻害魔法を組み合わせた訓練方法と、ゆっくり動きながら動きを確認する方法。ダグラスさんはそれを早速買い取り、発案者は俺、レシピの所有権は俺とエリー、両方が持つ事になった。ギルド員になったことでギルドが保有する銀行の口座が開設され、レシピの使用料はそこに振り込まれることになった。
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