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第三章 天空のカルラ
ほんとに一大事
しおりを挟む「私、魔法薬を作ってるから魔素を集めるのはできるけど、回復魔法は使えないんだ。でも、おばあちゃんなら何とかしてくれるかも」
『毎朝、食べ物をくださる、あの優しい御婦人であるな?』
「おばあちゃんは薬草を育てるのが上手なの。このクガネの木もおばあちゃんが種から育てたやつだし。折れた幹を元通りにはできないけど、もしかしたら挿し木とか接ぎ木とかで助けること、できるかもしれない」
『なにとぞ、なにとぞお頼み申す!』
「それじゃ集めて持って行こ」
地面に散らばったクガネの枝を丁寧に拾い、カバンに入れる。
水銀堂で買ったガラス瓶や素材などが一杯入ってるけど、魔法のカバンなのでまだまだたくさん入る。でも、ただ放り込むとカバンの中でバラバラに散らばっちゃうので、風呂敷に包んでから先に入ってる荷物の上にそっと置く。
さらに念のため、湧き水で濡らしたハンカチを折れた幹の根元に巻いた。昔、日本でお母さんに花を買った時、花屋のお姉さんが乾燥しないようにと濡らしたティッシュを巻いてくれた。それの真似だ。切り口が乾燥してしまうと、すぐに枯れちゃうんだって。
折れた木の下半分は、まだ地面に残ってる。
でも、折れた衝撃でナナメになっていて、引っ張られた根っこも飛び出してる。真っすぐに直そうとすると根っこが切れちゃうかも。たぶん、触らない方がいいよね。周りの土を寄せて被せるだけにする。
(私にも魔法が使えたらいいのに。回復魔法ってどうやるんだろう?)
ふと、おばあちゃんが心筋梗塞で倒れた時の事を思い出した。
あの時のように魔素を集めてクガネの木に注ぐ。
「あれ?」
下半分しかないせいか、集めた魔素を木にかけても流れて消えてしまう。
しょうがないので魔力回復剤を作る時の容量で魔素を編み、折れてる所に乗せてみた。
ふふ。レース編みの光の帽子を被ってるみたい。
ついでに根っこの周りにも被せておく。効果があるかどうかは分からないけど、とりあえずできる事は全部やった。
「さあ、それじゃ、急いでおばあちゃんに…」
『うむ。忘れ物はないな? 行くぞ!』
「え? ……うわぁ!」
大きな鉤爪で両肩をつかまれ、またしても急上昇。
だから絶叫系は苦手なんだってば———っ!!!
一度飛び上がった後は、ゆっくりと滑空しながら山を降りる。ハンググライダーに乗るとこんな感じなのかな?
足の下には、すばらしい絶景が広がっている……ハズ。
とてもじゃないけど下を見る勇気はないので前だけ見た。広い空と遠くの山並みは展望台とかで見るのと同じ。あーキレイ。ちょっと現実逃避。
『ミーナァァァア……!!!』
ラルの声。
どこからだろう?
キョロキョロと左右を見て、それから仕方なしに下を向く。
山肌の木々や川、滝などが小さく見える。ドローンの映像かジオラマみたい。
声がした方向は……
あ、あそこ!
雑木林を必死で走るラルが見える。
「ねえ、カルラ。あっちの…ラルの近くに降ろしてくれる?」
『うむ。よかろう』
「わわわわわ…!」
ラルを指してリクエストすると、カルラはそちらへ急旋回。そして急降下。
(衝突するーっ…!?)
近づく地面に強く目をつぶった直後、やわらかい草むらにフワリと着陸した。
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