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第二章 シヴァール国の黄金の実
高山植物と動く魔素
しおりを挟む図鑑で★(星1つ)がついてるのは普通の薬草。比較的見つけやすくて売値もそれほど高くないって意味。ゲンノショウコやドクダミなど、日本でも名前を聞いたことがある薬草も載っている。
他には食用の山野草も。春に天ぷらにして食べるようなやつ。売値は安いけど需要があるので、時期になるとクエストとして出されるんだって。
一応、ヨモギも載ってた。本当に薬草だった。
ただしそういう草はそれほど魔素が多くないので、かえってラルには見つけづらいらしい。
★★(星2つ)のヤツが主に収集クエストの対象になる薬草だ。魔法薬などに使われる素材。毒薬の材料や幻覚を見せる物もあるから注意が必要だ。畑で育ててるのもあるけど、天然物は貴重らしい。
後ろの方のページで★★★(星3つ)の分類になってるのは特に珍しい薬草だけ。
一年のうち数時間だけしか咲かない花とか、昆虫に生えるキノコとか、…クガネの実とか。
クガネの実は、ごくわずかに流通している物以外、アキツには存在しないらしい。けど「幻の」と呼ばれるほどのレア薬草なのでラスボス的に収録してあるようだ。
植物全体の描写はなく、実のイラストだけ。説明文も生態については分からず、実の利用法だけ。これでは探しようがない。
もしも……もしもどこかに生えていたら、おばあちゃんに持って帰りたいのに。
「あれ?」
何か変だと思ったら周りの風景が変わっていた。
気づくと背の高い木がない。
所々にはあるけど、ひどくまばらだ。その代わり低い茂みや草・コケ類が岩のような地面に生えている。
振り返るとかな~り下にアガサ村らしき建物の一群が見える。
ラルと一緒に薬草を探しているうちに、だいぶ高くまで登って来てしまった。
「ねえ、ラル。そろそろ戻らない? 山を登りすぎたかも。少し寒いよ」
『でも、この先に、魔素のニオイ、いっぱい、する』
「そう? じゃ、それを見つけてから帰ろうか」
『うん』
ラルが魔素を感じるのは前方に見える大岩の向こう。山頂へ向かうんじゃないから少し安心。何があるか見てみよう。
『ん~~~…』
大岩の反対側まで来たが、ラルは左右をキョロキョロ見ている。
「どうしたの?」
『…………ニオイ、もっと向こうだった』
どうやら目測を誤ったらしい。
周辺には岩がゴロゴロと転がっているだけで変わった物は見当たらない。
もう少し先へ、一緒に歩く。
地面は思ったよりも起伏がある。あまり遠くまでは見通せない。
そのくせ似たような岩だらけで目印のない風景は遠近感をなくしてしまう。
聞こえるのは風の音だけ。
何となく不安になる。
「ねえ、ラル…」
やっぱり帰ろう。そう言おうとしたその時、
『ニオイ、動いてる!』
ラルが走り出した。
「ラル!?」
あわてて追いかける。
動いてる?
動く薬草??
ううん。もしかして、薬草じゃないんじゃないの?
「待って! ラル!!」
小さな闇色の豹はものすごいスピードで滑るように走ってゆく。
ギャアッ ギャア、ギャアッ!!
ラルが走り込んだ岩陰から騒がしい鳴き声が響く。
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