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第二章 シヴァール国の黄金の実
ラルと図鑑で薬草探し
しおりを挟む『葉っぱ、いっぱいに、なってる!』
「ホントだ!」
4日前に来たばかりなのに、雨が降ったせいか初夏の気温のせいか、濃い緑色の葉は前にも増して茂っている。
『全部、とっちゃえば?』
「ダメよ。木が枯れちゃう。それに、ラルのお母さんがお腹痛くなった時にお薬の葉っぱがなかったら困るでしょ?」
『あ、そっか』
木全体を見て、切る枝を選ぶ。植木屋さんが木を整えるように、伸び過ぎてる枝や形の悪い枝を数本切ってカバンに収容する。
「どの薬草がいくら位で売れるか分からないから、少しづつ採っていこう」
『よし、次~!』
次に見に行った薬草は、それほど増えてはいなかった。
草丈が数センチ伸びたかどうか?
前回、ちぎった部分も回復していない。
「うーん、これは採らない方がいいかな」
『なくなっちゃう、ね』
「今度、株分けして増やしてみようか」
使える薬草はできるだけ増やそう。
あ、ちょっとおばあちゃんぽくなっちゃった?
その次に見に行った茂みには、薬効成分を含んだ実は一つも残ってなかった。
『遅かった、か』
「誰かが食べたんだね。何の薬だっけ?」
『この実は、おいしい。困ってなくても、食べる』
あー、そういうのもあるのか。
例えばイチゴにはビタミンCがたっぷりだけど、特にビタミンが必要でなくても美味しいから食べるもんね。
『う~ん、作戦、へんこう』
ふふっ。ラルがいつの間にか難しい言葉を覚えてる。
『ミーナ。前とちがう薬草、でもいい?』
「うん、いいよ。ラルは薬草の生えてる場所をたくさん知ってるんだね?」
『違う。探す。ニオイで』
魔素がいっぱい含まれてる薬草は遠くからでも匂うらしい。
個別の匂いを嗅ぎ分けるのではなく気配や波動のようなものを感じるようだ。
薬草を見つけても採取できないほど少なくては意味がない。だから魔素の集まってる場所に行ってみて、そこで周辺に薬草がないか探そうと言う。
そうすればきっと量が多いに違いない。
特定の薬草を探してるわけじゃないので、それで充分。何があるかな?
『この辺から、ニオイ、する…?』
「あ、お花がいっぱい!」
ラルの案内で向かった場所には、ユリに似た花がたくさん咲いていた。でも赤い。
試しに【野山で摘める薬草の本】を開けると、よく似たイラストがある。コレかなぁ?
名前と説明を読む。
「ベニヤマユリ。ヤマユリによく似た朱色の花をつける。花粉や球根が薬になるんだって。今の時期に採取するのは花粉、か」
この図鑑に載っている位だからクエストで集めることもある素材なのだろう。
カバンから紙袋を出し、咲いているベニヤマユリから雄しべを集める。紙袋を花に当て、ハサミで雄しべを切り落とす。触らないように気をつけていたけど、手は花粉で真っ赤だ。
『けっこう、とれたな』
「一ヶ所にこんなにたくさん生えてるのは珍しいみたい」
エレナみたいに記録をつけるノートを買った方がいいかも。もし高く売れる素材だったらまた来よう。まだツボミのがいくつもあるし、来年もきっと咲くだろうから。
『よし、次~!』
魔素の波動を探しながら歩くラルの後ろをついてゆく。
山椒の香りがする草や青っぽいキノコ、縞模様の細いタケノコなど、次々と変わった物が見つかる。
ラルが探し当てる物はどれも珍しい素材らしく、図鑑のランク分けでは★★(星2つ)になってる。
うん、売れそうな予感。
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