黒猫印の魔法薬 〜拾った子猫と異世界で〜

浅間遊歩

文字の大きさ
上 下
45 / 87
第二章 シヴァール国の黄金の実

うわさのパーティメンバー

しおりを挟む

「ど、どうしたんだい!? ミーナちゃん!」

 鑑定結果を聞いたホーマーさんが目を丸くする。
2ダースの低級体力回復薬は全部合格。中級も7本のうち1本は規定をクリアしている。
 残り6本も低級を遥かに超える魔素含有量だったものの中級には届かず、残念ながら規格外。
 ただしこれ位の効果があれば冒険者にそれなりに売れるそうで、今回も鑑定証をつけてもらう。
 まあ、お姉ちゃん達にあげるつもりだけど。一応、黒猫印のタグも付ける。

「溶剤の種類を変えたんです。本のレシピを見て。あと、おばあちゃんが魔法薬を作る時のやり方を見様見真似で真似をして…」

 それだけならカッコ良かったんだけどね~。

「調子に乗って傷薬…ケガの回復薬も作ってみたら全滅でした」

「はははは」

 おどろおどろしい変な色の薬(?)ができた。
 フツフツと泡が出て、ずっと傷口に当てておいたバンソーコーのような臭い匂いがするの。
 裏のゴミ穴に捨てて大丈夫か悩むし材料の薬草は無駄になるしで散々だった。

「アレはよく使う薬だが作るのは難しいらしいな」

 次回は無理せず中級の体力回復薬をたくさん作る事にした。
 体力回復薬は疲れが取れるだけだと思っていたら、敵から全速力で逃げる時や戦闘中に激しい動きを続けたりする際に役立つ需要の多い薬なんだって。

 今日も取引の後にお昼をご馳走になってから水銀堂を後にする。
 ちなみに野菜のかき揚げが乗ったうどんとカブの漬物でした。



 病院の面会時間までには少し間があるので商店街に向かう。
 そろそろ暑くなってきたので帽子が欲しい。
 つばの広い麦わら帽子。子供っぽいかと思ったけど、すれ違った人が被っているのを見たら意外と可愛かったんだよね。
 病院に行く前に買えばちょうどいい。

「あれ? ミーナ?」

 明るい声が呼び止める。

「お姉ちゃん!?」

 振り返るとエレナが居た。
 ちょうど冒険横丁から出て来たところのようだ。

「おお、ミーナちゃん。お土産ありがとう。助かったよ」

 エレナの後ろにはゴッツさん。それともう一人、革ジャンを着た男の人が一緒。
 彼がウワサに聞くパーティメンバーかな?
 確かに見た目が少し変わってる。

 まず、髪の毛がない。綺麗に剃り上げたスキンヘッドだ。
 そしてシルバーのアクセサリーや丸い珠の長いネックレスをジャラッとつけている。
 黒い革ジャンの胸元からは鍛えた筋肉が盛り上がっている。
 エレキギターを持ってれば似合う感じ。
 こっちの世界にもビジュアル系やパンクロックってあるのかな?と思ってたら、

拙僧せっそうは慶空。ケイでいい。僧侶だ。以後お見知り置きを」



 まさかのお坊さんでした!!!



 びっくりして固まってたら、エレナに大笑いされた。ハッと我に返る。

「よ、よろしくお願いします。ミーナです。この子は闇豹のラル」

 あわてて挨拶を返す。

「お坊さんも冒険者をされるんですね?」

「左様。坊主は死んだ者の為だけにらず。生きている者を救うのもまた仏の道よ。南無……」

「ご、ご苦労様です」

「ミーナちゃん、騙されるな。コイツは寺の雑務がイヤで修行の旅とか言い出しただけだから!」

「いやいや。それはゴッツも似たようなモンだろうがよ」

「いいんだよ、俺は。家は兄貴が継ぐから」

 ゴッツさんとケイさんは隣町出身で幼馴染おさななじみなのだそうだ。
 飾りだと思ったアクセサリーも、実は色々な効果のある装備品なんだって。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...