43 / 87
第二章 シヴァール国の黄金の実
それは俺の!
しおりを挟む「水銀堂にも挨拶に行ったらさ、奥様が『いつでもお昼を食べにいらっしゃい』だって。ミーナは毎日納品に行くんだろ? ダンジョンの外にいる時は食べに行くよ。そうすれば会える。毎日じゃないけど」
「冒険」は日帰りとは限らない。安全が確保できればダンジョン内で休憩しながら何日もかけて探索することもあるそうだ。
その代わり、一度冒険から帰ってきたらまとめて何日か休むのが普通なんだって。報告書をまとめたり、体調を整えたり、武器防具の手入れをしたり、必要な物を買い足したりするらしい。
「ダンジョンには何日くらい泊まるの?」
「3日とか……長ければ1週間? 運が良ければ、だけどね。探索パーティだからって魔獣や妖魔が見逃してくれる訳じゃない。下手すると入った直後に強い敵と遭遇して、ろくに地図を作れずに撤退もあり得る。逆に敵に会わなくても移動が大変な地形だと体力が保たなくてなかなか進めないとかね」
「すごい坂とか歩きにくい通路とかありそう~……あ!」
そーだ! そうだよ!
お姉ちゃんたちに使ってもらえばいいじゃん?
「ねーお姉ちゃん、コレって使う?」
カバンに入れたままだった黒猫印の魔法薬を取り出す。
水銀堂の鑑定ラベルが見える様にして渡すと驚いて二度見する。
「継続効果付きの体力回復薬? ミーナが作ったの!?」
「低級体力回復薬の出来損ないだけど」
「普通はさ、少しでも効果がある魔法薬を作れる様になるまでが大変なんだよ。アンタ、見習いだって言うからてっきり…」
「大変だったよ、最初は。おばあちゃんがつきっきりで教えてくれても一本作るのに一時間もかかったもん」
「一時間~~!?……あーはっはっは…」
エレナはのけぞる様にして大笑いしながら言った。
「やっぱアンタ婆さんの【孫】だわ」
それ、ほめられてる…んだよね?
「15本あるけど、ゴッツさん達も使う?」
「使う使う! うちは探索パーティだから体力回復薬必須!」
「ナー」
「良かった。明日もまた規格外のハネものが出たら届けるね」
「ナー」
「やりぃ! 今、どこにも魔法薬が売ってないんだよね。じゃ、ダンジョンで魔法薬の素材を見かけたら採取して来るから」
「ナーー」
「ありがとう! 別の魔法薬も作れる様にがんばる!」
「ナーーー」
「魔法薬なら効果が薄くても安くすれば売れるぜ………何だよ、ラル?」
『俺の~~~~~!!!』
黒猫印の魔法薬を全部あげてしまったのが気に食わないらしい。
ラルが怒っている。そのままヒョイと机の上に飛び乗る。
並べてあるビンに体を寄せて、エレナが手を伸ばすとシャアッと威嚇。
「ラルはこの回復薬を欲しがってたの。魔獣は魔素を吸収して生きてるから、ラルにとってはジュースみたいな物らしいの」
「そっか。ご主人様の手作りだもんな。じゃあ、また焼き鳥を買ってくるからそれと交換でどお?」
「ウナァ~~…」
「わかった、桃缶もつけよう! 悠奏屋の桃の缶詰。それにアガサ饅頭も。白・黒・梅・柚子。後は…おやき? スイカも食うか?」
「ナオン」
可愛らしくひと鳴きしてラルはビンから離れた。
どうやら交渉が成立したらしい。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…
雪見だいふく
ファンタジー
私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。
目覚めると
「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。
ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!
しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?
頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?
これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。
♪♪
注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。
♪♪
小説初投稿です。
この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。
至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
完結目指して頑張って参ります
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる