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第二章 シヴァール国の黄金の実
それは俺の!
しおりを挟む「水銀堂にも挨拶に行ったらさ、奥様が『いつでもお昼を食べにいらっしゃい』だって。ミーナは毎日納品に行くんだろ? ダンジョンの外にいる時は食べに行くよ。そうすれば会える。毎日じゃないけど」
「冒険」は日帰りとは限らない。安全が確保できればダンジョン内で休憩しながら何日もかけて探索することもあるそうだ。
その代わり、一度冒険から帰ってきたらまとめて何日か休むのが普通なんだって。報告書をまとめたり、体調を整えたり、武器防具の手入れをしたり、必要な物を買い足したりするらしい。
「ダンジョンには何日くらい泊まるの?」
「3日とか……長ければ1週間? 運が良ければ、だけどね。探索パーティだからって魔獣や妖魔が見逃してくれる訳じゃない。下手すると入った直後に強い敵と遭遇して、ろくに地図を作れずに撤退もあり得る。逆に敵に会わなくても移動が大変な地形だと体力が保たなくてなかなか進めないとかね」
「すごい坂とか歩きにくい通路とかありそう~……あ!」
そーだ! そうだよ!
お姉ちゃんたちに使ってもらえばいいじゃん?
「ねーお姉ちゃん、コレって使う?」
カバンに入れたままだった黒猫印の魔法薬を取り出す。
水銀堂の鑑定ラベルが見える様にして渡すと驚いて二度見する。
「継続効果付きの体力回復薬? ミーナが作ったの!?」
「低級体力回復薬の出来損ないだけど」
「普通はさ、少しでも効果がある魔法薬を作れる様になるまでが大変なんだよ。アンタ、見習いだって言うからてっきり…」
「大変だったよ、最初は。おばあちゃんがつきっきりで教えてくれても一本作るのに一時間もかかったもん」
「一時間~~!?……あーはっはっは…」
エレナはのけぞる様にして大笑いしながら言った。
「やっぱアンタ婆さんの【孫】だわ」
それ、ほめられてる…んだよね?
「15本あるけど、ゴッツさん達も使う?」
「使う使う! うちは探索パーティだから体力回復薬必須!」
「ナー」
「良かった。明日もまた規格外のハネものが出たら届けるね」
「ナー」
「やりぃ! 今、どこにも魔法薬が売ってないんだよね。じゃ、ダンジョンで魔法薬の素材を見かけたら採取して来るから」
「ナーー」
「ありがとう! 別の魔法薬も作れる様にがんばる!」
「ナーーー」
「魔法薬なら効果が薄くても安くすれば売れるぜ………何だよ、ラル?」
『俺の~~~~~!!!』
黒猫印の魔法薬を全部あげてしまったのが気に食わないらしい。
ラルが怒っている。そのままヒョイと机の上に飛び乗る。
並べてあるビンに体を寄せて、エレナが手を伸ばすとシャアッと威嚇。
「ラルはこの回復薬を欲しがってたの。魔獣は魔素を吸収して生きてるから、ラルにとってはジュースみたいな物らしいの」
「そっか。ご主人様の手作りだもんな。じゃあ、また焼き鳥を買ってくるからそれと交換でどお?」
「ウナァ~~…」
「わかった、桃缶もつけよう! 悠奏屋の桃の缶詰。それにアガサ饅頭も。白・黒・梅・柚子。後は…おやき? スイカも食うか?」
「ナオン」
可愛らしくひと鳴きしてラルはビンから離れた。
どうやら交渉が成立したらしい。
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