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第二章 シヴァール国の黄金の実
ゴッツさんの捕まえ方
しおりを挟むふと見ると、エレナがスプーンを持ったままため息をついている。
「どうしたの?」
「駄目だった。仕事もパーティも」
冒険者ギルドには全国から新ダンジョン目当ての冒険者が集まって来ているという。ささいな安い仕事すら残ってなかったそうだ。
それに入洞許可申請に漏れたのはエレナだけではない。二次募集開始を待つ冒険者が周辺に大量にたむろしていて、とても参加パーティを探すような状態じゃないらしい。
「みんな殺気立ってて。職員との会話にも聞き耳を立ててるし。ろくに情報収集もできないの」
「ふわぁ」
「ねぇミーナ、話を聞けそうな人、誰か知らない?」
「私もアガサに来たばかりだからあんまり知り合いは……あ!」
そうだ。ゴッツさん。
冒険者だし、新ダンジョンにも行くって言ってたし、何かアドバイスをもらえるかも。
でも連絡先を知らない。
どこに行ったら会えるだろう?
昼食の後、ゴッツさんを探しに二人で冒険者ギルドに向かう。でも結局すぐにあきらめた。
エレナの言う通り、無駄に混雑していてとても近づけないのだ。
中にはラルを見て武器に手をかけて身構える人までいて、ゴッツさんを探すどころじゃない。
うなるラルを押さえながらあわててギルドを離れる。
連絡先くらい聞いておけばよかった。
スマホがないと、人を探すのも連絡を取るのも大変!
「ゴッツさんて、ラルをものすごく気に入ってくれてるの。目立つ所にラルをつないでおいたらゴッツさんが引っかからないかなぁ?」
思わず言ったらエレナに大受けした。
やがて午後の面会時間になったので、そのまま二人で病院に向かう。
おばあちゃんは今、集中治療室にいる。まだ眠っているそうだ。
仕方がないので着替えなどを預けて病院を出る。
『ばあちゃん、いた?』
「まだ寝てるんだって。もう出て来ていいよ、ラル。どこ?」
『こっち。木の、上』
昨日は緊急だったからラルも一緒に病院内に転移したけど、今日は病院裏の植え込みに隠れて待っててもらった。
『ばあちゃん、寝すぎ』
高い木の上から勢い良く飛び降りるラル。
あわてて受け止めようとあせったけど、ストンときれいに着地する。
そうか、猫…じゃなくて豹だもんね。
「ラルはアン婆さんと仲良しなの?」
エレナの質問に、ラルは「ウナァ」と小さな返事。
「まあね、だって。愛想悪くてごめんね」
「いーんだ、いーんだ。愛玩動物じゃなくて魔獣だもんな。ミーナを守る強い男だもんな、ラルは」
「ナ」
おすましして胸を張るラル。かわいい。
「お姉ちゃんは魔獣使いって知ってる?」
「ああ。何人か会ったこともある。大きなヒグマみたいな火焔熊を連れたヤツとか、鉄蠍を使うヤツとか。でもこんなに小さな魔獣は見たことないな」
「ラルは小さくてもとっても強いんだよ。ひとりで大きなイノシシを狩れるの」
「へええぇ~~っ! そりゃスゲェ!」
ずい、と身を乗り出してエレナが目を輝かせる。
「じゃあさ、ミーナもあたしと一緒にダンジョンに潜らない? ラルを連れて!」
「ええっ!?」
「大丈夫。ダンジョンでの戦い方も教えてやるよ」
「えー、無理無理! だって怖いもん!」
「ダンジョンでは魔法薬の材料が取れるよ」
「そうなの?」
「うん。苔とか茸とか、魔獣の肝とか、鉱物の結晶とか」
ああっ。そう言われると、ゲームの素材集めっぽい!
ちょっと興味が湧いてしまって、一瞬、返事に困った。
すると、
「ミーナちゃんもダンジョンに潜るのかい?」
聞こえて来た声に振り返ると、なんと! ゴッツさんだった!
おばあちゃんの容体を心配して来てくれたらしい。
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