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第一章 迷子と子猫とアガサ村
薬草の見分け方
しおりを挟む『ミーナ、これ。この、葉っぱ』
ラルと一緒に裏山に登り、薬草を探す。
採取用のハサミと魔法のカバンも持ってきた。たくさん入れてもかさばらないし軽くて楽だからね。
「コレね?」
『この、色のこい、くさいやつ』
「さっきの草と違って、若葉より育った葉っぱの方がいいのね? 葉っぱだけ?」
『そ。よく、かむ。まずい。おなか痛い、なおる』
「いいね、それ。たくさんあるから何枚かもらうね」
『次、いくよー』
「あ、待ってー」
もともとラルがお母さんと住んでいたのは歩いて1時間くらいの場所。この辺りの山はラルにとって庭のようなものだね。
私はラルに教わって何種類もの薬草を採取した。
「コレをお前たちが採って来たのかい?」
魔法のカバンから薬草を取り出すとおばあちゃんが驚いた。
「どう? 人間の薬にも使えそう?」
「使えるなんてもんじゃない。どれも魔法薬の材料になる珍しいモノだよ。一体どこで…」
ミャア~
「そうかい。ラルが場所を教えてくれたのかい?」
ラルはもう一度短く鳴くと、おばあちゃんに体をこすり付けた。
おばあちゃんとラルは言葉以外の方法で分かりあってる。
「ミーナ、コレをぜひ売っとくれ。少し変わった薬を作ればホーマーも喜ぶだろ」
「もちろん! てゆーかタダでいいよ。おみやげ!」
「そうはいかない。この葉っぱなんか、売ればひと枝で100シエル以上になるよ」
「えっ、そんなに?」
すごい薬草だった。
おばあちゃんによれば、どれも魔素がたっぷり含まれている良質な素材だという。山奥に生えるので簡単に見つかるものではないらしい。
魔獣は魔素で生きている、と村で会った冒険者が言ってた。
だから魔獣が常用する薬草は魔素が濃い素材なのかも。
「この枝と、この完熟した実は、畑に植えてみるかね」
珍しい素材に目が輝いている。新しいオモチャを見つけた子供みたい。
「うまく育つといいね」
「うまく育たないと大損することもあるからねぇ…」
どうやら栽培を試みるのは初めてではなさそうだ。
おばあちゃんに案内されて家の裏手の山に登る。少し奥まった所に畑があった。
背の高い木や茂みにさえぎられて山道からは見えない。おばあちゃんの秘密の薬草畑かな?
見慣れない植物が何種類も植えてある。
「あれ? この青い葉っぱ、魔力回復薬に使うヤツじゃない?」
「そうさ。よく気がついたね」
バジルに似た形の青い葉っぱには見覚えがあった。
ここに植えられている薬草は、家の周りにある畑と違って珍しい物らしい。それにしては大量だ。とても良く繁殖している。
今回のように新鮮で良質な素材が手に入った時に植えて、少しづつ増やしたのだろう。
おばあちゃんは斑入りの葉っぱが付いた若い枝を小刀で整え、何か薬を付けて土に植えた。少し離れた所に赤く熟した実も植える。
「元気に育っておくれ」
おばあちゃんが腕を大きく動かすとキラキラと輝く魔素が降り注ぎ、畑全体が淡く光った。
来年には新しい薬草がたくさん収穫できるかもしれない。
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