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第一章 迷子と子猫とアガサ村
修行開始
しおりを挟む今日から本格的に魔法薬作りの訓練が始まる。
まずは溶剤から。輝くように透明な水溶液を作らなきゃならない。
作る手順はそれほど難しくない。
必要な材料をきっちり量って順番に混ぜていくだけ。よ~く溶かしたら、ろ紙で静かに濾してガラス製の容器に入れる。それだけ。
難しいのは、作ってる途中に魔力を当てないこと。一度魔力に当てると濁って使い物にならなくなる。魔力の制御ができていないと、「うまく出来ますように」と意識を向けただけで魔力が漏れてしまい、それが吸収されてしまう。
何も考えず、平常心で、淡々と作業を進める。
大きな工房だと、魔力を持ってない人をわざわざ溶剤作り専門で雇ったりするそうだ。一升ビンに入った溶剤もそこそこの値段で買えたりする。でも私はこれから魔法薬を作る訓練で大量に使うから、自分で作れるようになる必要がある。
「おばあちゃん、こんな感じ?」
「ああ、今度は良くできたね」
大鍋からガラス容器に移した液体は、日にかざすとキラキラと輝いていた。
「保存容器に入れて納屋の冷蔵庫に入れておきな。日付も忘れずに」
「はあい」
おばあちゃんちには冷蔵庫がないと思ってたら納屋にあった。
まあ、野菜は目の前の畑から採ってくるし、山の湧き水は氷のように冷たいし、卵は涼しい場所に置いておけば数週間は平気だから気がつかなかった。ラルが獲ってきたイノシシの肉を保存する段になって初めて知った。
納屋の中に、薬剤などを保存する仕事用のと食料用のと2台ある。もちろん仕事用の方が大きい。
「つっかれたぁ~!」
息をつめる様にしてガラス容器を冷蔵庫に入れ、扉を閉めたら思わず泣き言が漏れた。モノを考え続けるのも疲れるけど、考えないようにするのも疲れる。
「今日の所はコレでおしまいにしな。外で運動でもしておいで」
「うん。ねえ、薬草摘みをしてもいい?」
「薬草?」
「畑に植えてあるのは取らないよ。野生の」
異世界に行ったら薬草摘み。これ、基本でしょ!
「いいよ。ヨモギでも摘んでおいで。草餅にしよう」
いや、おばあちゃん。そう言うんじゃなくて…。
でも考えたら薬に使えそうな薬草を全然知らないからしょうがない。
チート鑑定能力はなさそうなので、まず本を読むか人に聞いて知識をつけてからだね。
おばあちゃんは忙しそうだから、今日はおとなしくヨモギを摘むことにしよう。ヨモギはお母さんに教わったから知ってる。葉っぱの裏が白いヤツだ。
『何、してんの?』
ヨモギを摘んでたらラルがやって来た。
「薬草摘み」
『薬草? …これ、薬草?』
くっ。ラルにすら根本的な指摘をされてしまったよ。
「……まだ薬草をあまり知らないから、とりあえずヨモギ」
自白した。
『俺、知ってる』
「何を?」
『薬草』
「ホント!?」
ラルはお母さんから「お腹が痛い時に食べる葉っぱ」とか「すごく疲れた時に食べる草」とか「具合が悪い時に食べる実」とかを教わったそうだ。
「ね、ね。私にも教えて! お願い!」
『いいよ。じゃ、ミーナも人間のおいしいご飯、教えてくれる?』
「うん! 村に行ったらまた何かおいしい物を買おう!」
ラルは大喜びで山道を走り始めた。
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