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第一章 迷子と子猫とアガサ村

冒険者、始めました

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「す、すいません。よく分かってなくて……」
「ははは。小さいうちは親の仕事に詳しくなくても仕方がない。引っ越ししながら戦う仕事、位にしか分からんだろう」

 ギルドマスターがフォローしてくれる。
 よ、良かった。うまく誤解してくれたようだ。
 マイナさんもクスリと笑い、

「普通の仕事も斡旋あっせんしてるし、各地の行政と業務提携ていけいもしてるから余計に分かりづらいかもね」
「元々はあの、黄泉よみの穴へ降りる探索者たんさくしゃだ。魔物がい出してくる、あの恐ろしい洞窟だよ。ミーナちゃんは小さい頃、どこかに預けられた記憶はない?」
「お母さんが仕事に行ってる間、施設で待っていたこと、あります」

 私は話を合わせた。でもウソではない。
 低学年の頃は学校が終わると学童保育に預けられていたから。

「その間に、ご両親は悪い魔物を倒して洞窟内の資源を回収していたのさ。まあ、今では仕事の幅が広がって呼び名も冒険者に変わったし、必ずしも魔洞窟ダンジョンもぐるわけじゃない。安心していいよ」

 分かったような、分からないような。
 とりあえず、テイマーになっても戦わなくていいなら良かった。
 だって怖いもん。

 最後にギルド内にある写真室で顔写真を撮ってもらって登録申請は終了。
 15分ほど待って登録証が完成した。

「お待たせ。これが登録証よ」

 差し出された写真付きカードの表面には、名前と登録番号が刻印されている。
 運転免許証とクレジットカードを合わせたような感じ。

「今後、ギルドをご利用の際にはこのカードをご提示ください」
「仕事を受ける時とか、頼む時ですよね?」
「その他に、2階の食堂や喫茶、提携してる商店などで割引が受けられるの。他の町の冒険者ギルドでも使えるから大事にしてね」
「はあい」

 ふふふ。これで私も冒険者ギルドの一員だ!
 一緒にもらった手帳はオマケではなくて、請け負った仕事の記録をつける物らしい。
 階級が上がると表紙の色が変わるんだって。

 ランクは上から こうおつへいてい ……だったのは昔の話。今は、ABCDEFの6種類。
 よくラノベで聞くSランクというのはない。
 その代わり、特Aと呼ばれる人達がいる。
 私はF。みんな最初はFだ。

「Fランクはお試し期間みたいなものよ。真面目に仕事をこなせばすぐにEに上がれまるわ」

 私はダンジョンで冒険するのが目的じゃなくて闇豹のラルを合法的に飼うために冒険者になった。
 でも長期間Fのままだと適正なしと判断されて資格が剥奪される事もあるらしい。
 ほどほどに依頼をこなして早くEになり、後は失効しないように気をつけよう。

「それじゃあ、登録料なんだけど…」

 あ! お金がかかるのか。でも、ラルのためだし…

「いくらかかりますか?」
「ミーナちゃんはアガサ村の住人になったので、半額の50シエルね」

 思わず固まった。日本円にすると約5000円。
 村人登録の手数料は3シエルと安かったが、ギルドの登録はちょっと高い。

(おばあちゃんにもらったおこづかいじゃ全然たりない…)

 顔色が変わったのを見てマイナさんは察したようだ。

「急に登録することになっちゃったからね。持ち合わせがなければ次回でも構わないわ。それまでは受けられる仕事が限られるけど」
「そ、それでお願いしますっ!」

 次回に払う約束で、手続きを済ませて振り返ると……

 うわ!

 建物の中に居るほぼ全員がこっちを見ている!?
 恐る恐る様子をうかがってる人、胡散うさんくさい目でにらみつけてる人、興味津々きょうみしんしんで見つめてる人……
 闇豹のラルを見てるのかな? それとも私?

「ミーナちゃん」

 水銀堂の売店からホーマーさんが声をかけてきた。あわててそちらへと移動する。

「アン婆さんの薬はいつも通り、問題ない。さ、水銀堂の本店まで案内しよう。が昼飯にうどんを作ってるから食べて行きなさい」
「わあ、ありがとうございます」

 アキツにもうどんがあるんだ。
 うどん好きだからうれしい!

 おばあちゃんの薬が入った背負いカゴをかついだホーマーさんに連れられて、私とラルは冒険者ギルドを後にした。
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