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第一章 迷子と子猫とアガサ村
初めての冒険者ギルド
しおりを挟むしばらく歩くと広い交差点に出た。
人通りは多いが信号や横断歩道はない。
角にある大きな建物は崖の上から見えた観光案内所みたいなヤツだ。
3階建てで、2階にはカフェかレストランがあるみたい。2階の大きな窓から中にいる人達が見える。展望台になっているのかも。
『ミーナ、そこが、薬の店?』
近寄ろうとする私にラルが聞く。
「わかんない。でも人がいっぱい居るし、もう一度、道を聞いてみようと思って」
『へー。………こいつら、俺のこと、コロさない?』
小声のラルが辺りをうかがう。
周辺には、そう疑ってしまうのも無理はない風体の人々があふれている。
武器や防具を装備した強そうな人達………あ!
もしかして「冒険者」?
だとすると、ここ、「冒険者ギルド」?
ラルを腕に抱えて建物の中の様子をのぞいていると、
「おう! どいとくれ!」
「ひゃっ!?」
後ろから野太い声。
振り返ると、ラグビー選手のように大きくて筋肉が盛り上がった男の人がにらんでいる。
「ごめんなさいっ!」
あわてて道を開ける。
男の人は建物に入り、まっすぐ正面のカウンターに向かう。
そこで何か聞いているようだ。
『なに?、アイツ~…』
ラルはご機嫌ナナメで、ナア~オとうなる。コロス?って聞かれないように、あわててなだめる。
「いいのよ、ラル。私が入り口をふさいでボーッと立ってたんだから。……ココ、入っていいのかな?」
ラルをなでながらキョロキョロしていると、建物の周りをホウキではいていたお爺さんが近づいて来た。
「やあ、利用は初めてかい? ご用件は?」
「あ、あのっ、水銀堂って薬屋さんの場所を……」
「水銀堂かい? 中に入って左だよ」
と、ホウキを持ったままの手で入口から中を指差す。
「中……ですか?」
「そう。ここからだとちょっと見づらいけど……、正面にカウンターがあるだろ? その手前を左に行った先に水銀堂のコーナーがある。右は仕事の斡旋の掲示板。その奥に二階に上がる階段がある。階段の脇にトイレ。二階には食堂と喫茶。時間貸しの会議室もある」
「ありがとうございます」
私はお礼を言って建物に入った。
カウンターのお姉さんがこちらを見たので軽く会釈をして左を向く。
あった!
左の奥に薬屋さん。
ホーマーさんに聞いてた感じよりだいぶ小さいけど、壁には作り付けの棚があって各種商品が置いてある。ガラスケースにも色とりどりの箱や袋、薬瓶が並んでいる。
それに、店員らしき男性と話しているのは……
「ホーマーさん!」
声をかけながら近づくと、振り返ったホーマーさんは少し驚いた顔になった。
「あれ? ミーナちゃん? こっちに来ちゃった?」
「あの……今、そこで道を聞いたら、水銀堂はこの建物の中だって」
「あー、そうか。この近くで聞いたらそうなるか」
「村の外れで聞いた時には、本店なら道をまっすぐ、って言われたんですけど」
「はは、俺も本店に戻るのが遅くなったからちょうど良かった。ここは出来たばかりの支店なんだよ」
苦笑いするホーマーさん。
「支店っていうか、売店ですかねー?」
ホーマーさんと話していた店員らしい男の人も笑う。
「せまくても立派な支店だろうが。頼んだぞ、タモト支店長!」
「了解です!」
店員じゃなくて店長さんだった。
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