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第一章 迷子と子猫とアガサ村
アガサ村へ
しおりを挟む「じゃあ、行ってきます」
「足元に気をつけてな」
結局、勘違いを訂正するタイミングが分からないまま、私はおばあちゃんと暮らしている。ラルも一緒に。
おばあちゃんはここで薬や薬草茶を作っている薬師なんだって。週に何回かホーマーさんが薬を仕入れに来る。
「道は分かるかい?」
「村までは一本道なんでしょ? 大丈夫、大丈夫」
アガサ村にあるホーマーさんのお店まで、おばあちゃんが作った薬を届けに行く。
今日は量が少ないので私が持って降りる事にしたのだ。
一緒に暮らし始めてもう一週間。お世話になりっぱなしで心苦しいから少しでも役に立ちたい。ついでに買い物も頼まれた。
「ラルはお留守番しててもいいよ?」
『一緒に行くよ。ミーナひとりじゃ、心配だもん』
私の足に体をなすりつけて、ナオン、とひと鳴き。
それから先導するように数歩歩いて私を待つ。
「うー、生意気!」
でもおばあちゃんは、
「おや、ラルも行ってくれるのかい? ミーナを頼むよ」
なんて声をかけてる。
『わかってんじゃん、ばあちゃん。俺にまかせとけ!』
ニャーオ、ニャーオ…とご機嫌で先を歩くラル。
山道は舗装されておらず、そこかしこに大きな石が転がっている。
「歩いて30分くらいかかるって言ってたっけ」
『走る?』
「ダメ。転んだら危ないし。一歩づつ、ゆっくりね」
山道は下り坂で、石に足を取られて歩きづらい。
思ったよりも体力を使う。でも道端の草や小花を見ると気持ちが和む。
お母さんと住んでいた町は完全に舗装されていて、こんな可愛い草花を見ることはなかった。
花屋で売ってる鉢植えもいいけど、自然に生えてる草木もステキ。
「うわぁ……」
突然、横の林が切れて見晴らしが良くなった。
遠くの山まで良く見える。
アガサ村は山に囲まれてるのかな?
そう言えば来る時に乗った新幹線が停車前にトンネルを通ってた。
ああ、こんなに広い空を見るのは初めて!
山道から見える景色があまりにも綺麗なので、つい見とれてしまう……
『 ミーナ!! 』
ラルの声にハッとすると、道がカーブしてるのに気づかずガケに向かって歩いてた。
危ない危ない。
『もーう。やっぱり、俺がいないとダメじゃんか。ミーナは!』
「ごめん! もうよそ見しない! ちゃんと前を見て歩く!」
『ゼッタイだぞ? ミーナをいじめるヤツは、やっつけてやるけど、ガケから落ちたら、助けられないからな?』
「うん!、絶対!」
今度こそ、気をつけて山道を歩く。
やがて下の方にアガサ村が見えてきた。
畑に囲まれた広い敷地に一階か二階建ての大きな平屋。
うわぁ、贅沢!
のどかな山間の村って感じ。
見渡すと、奥の方には商店や観光協会のような建物が密集している場所がある。
あの辺りが中心部かな?
道はそちらへ続いている。
「このまま道なりに行けばいいと思うんだけど……とりあえず下に降りよ」
山肌の角度が急なので、安全に降りられるように道はジグザグになっている。
すべらないように一歩一歩。
折り返すたびに村に近づく。
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