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第5話 つきまとう影★のディソナンス

警告

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 外の世界は知らないが、ネコランドには現代日本に近いシステムがあり、ゴミは定期的に園が回収してくれる。
 たぶん俺とタイショー以外にも日本から来た人がいて、ネコランドの運営に関わってるんじゃないかと思う。ネコランド自体、どことなく日本風だし。

「何だ、お前。まだ居んのかよ」

「…………?」

 振り返ると、知らない人が3人。若い男性がふたりと若い女性がひとり。
 暗がりから俺をにらんでいる。

「さっさと出てけよ。ジャマなんだよ、お前」

「は? バイトならまだ募集してますけど。あ、タイショー呼びましょうか?」

「バッ……!?」

「ちげえよ。お前、後から来たくせに調子に乗んなよ」

「もう一回、死にてえのか?」

「どういう意味ですか?」

「はあ?」

「頭悪いんじゃないの?」

「どうした?、悠希。具合でも悪くなったか?」

 会話を聞きかじったタイショーが俺を心配して勝手口から顔を出すと、3人は気まずそうに離れていった。

「何だ?、ありゃあ……」

「さあ?」

 俺には全く心当たりがない。人違いかな?


 翌日。今日もパパラチアダンスのステージは休み。ジャンプやターンするだけでも頭が痛いしキレも悪い。
 その代わり、ぐるぐる屋のランチ営業を手伝っていると、イェロンが現れた。ひどく動揺していて挙動不審、目に涙まで浮かべている。

「ユ、ユウキくぅん……」

「どうした? まあ座れ。ほら、水。何食う?」

 カウンターの端に座らせて話を聞く。

「僕の研究所が、荒らされて……」

「え?」

 【気難しい樹人グランピー・トレント】の先にある野生の魔法植物が生い茂った空間。新種の植物も多く、イェロンが研究のために通っていたその場所が、今朝行ってみたらメチャクチャになっていたと言う。

「シカやイノシシ……じゃない、モンスターが入り込んで暴れたのかな?」

「分からない。トレントの爺さんはそのままだったから、岩の上の抜け道から誰か……何かが入ったんだと思います」

「貴重品は?」

「検査器具なんかは鍵のかかる部屋の方に置いてあるから無事です。ただ、観察していた魔法植物達が根こそぎやられてて……。地面の魔力分布によって生育が異なっていて、突然変異らしい分化までしてた貴重な生息地なんですよ!? 魔力の吸収と蓄積を調べるために一部を採取しましたが、このまま何年も研究を続ける予定で記録を付けてたのに、切り刻まれたり焼かれたり掘り返されたりしてて……【ブルームウィード】の花はつぼみの状態で発見される事が多いけど、どうやらあの状態が通常で、花から霧を出すのではなく、霧を出し終わって枯れる前に開くだけらしいとわかって来たんです。もう少しで次のつぼみが大きくなる所だったのに。【グリッターリーフ】の新芽の中に色が違う斑入りの物があったのでそれも観察中だったんですよ?【マゼンダゴケ】ももう少し増えたら採取して成分分析する予定だったのに……」

「あーはいはい」

 イェロンがイェロンでちょっと安心する。

「あの場所と抜け道の事、誰かに話した? 研究発表とか」

「論文はまだまとめてませんから、誰も知らないはずです。元のパーティメンバー以外は」

「ん?」

「先日、また冒険に誘いに来たので、研究があるからと断ったんです。その時に抜け道の事を話しましたけど、興味なさそうでしたよ?」

 それって、もしかして……


 さらに三日後、俺はダンジョンの入り口に居た。体調は完全に回復している。
 今回もリトと双子達が一緒だ。
 玄関エントランス部分に設置されている光る水晶玉に手を触れ、周囲に目をやると、壁際に鬼人のアスルが居た。腕を組んでダンジョンの壁に寄りかかっている彼女は、俺達を見て軽くうなずく。
 俺達も会釈を返してその前を通り過ぎる。
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