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第5話 つきまとう影★のディソナンス
死の大鎌
しおりを挟むカツ……ッ カシャ… コツ……ッ ギギ……
近づいてくる。
まるで何かがゆっくり歩いて来るような?
「あっ……そんな!?……」
詠唱を中断して震え出したポップルの視線を追って、嫌な予感と共に振り返る。
フシュウウゥゥ……ッ
吐く息の代わりに緑色の炎が揺れる。
そこに居たのはボロボロの黒いローブをまとい、長く大きい鎌を持つスケルトン。まるで死神だ。身長は優に2m以上。全身、緑色の炎に包まれている。
ドクロの目のくぼみにあるのは赤く燃える炎で、眼球も瞳もないのに俺達を見ているのが分かった。
「な……っ、【死縛魔刈】? なんでこんな場所に!」
「リト! 前見て!」
「ぅく……っ」
【カメレオン・ワーム】の体当たりをギリギリでかわし、反転したリトの双剣が敵の柔らかい腹を切り裂く。
あちらの戦闘はリトとピップルに任せても大丈夫だろう。問題は背後から攻撃して来た死神みたいなこの骸骨だ。
大きく振りかぶってからの重心移動でガクン!と大鎌の一撃。
「あぶないっ」
「うみゃあっ☆!?」
恐怖で立ちすくんでいるポップルを片手でつかみ、振り下ろされた大鎌から遠ざけるように投げ捨てる。猫だし、多少乱暴に放っても平気だろう。
ポップルが立っていた場所に、大鎌の刃が突き刺さる。
よくあんな細い腕、いや、骨だけで重い武器を扱えるな。全身をおおっている緑色の炎が筋肉の代わりに体を支えているのかもしれない。
「くそ……っ、近すぎる」
ダガーは近接武器だが、見るからにダガーで倒せるような敵じゃない。せめて猫ダンスで弱らせたいが、ステップを踏む余裕がない。
【フェイタル・リーパー】は大鎌を持ち上げると同時に横殴りに振り回す。
てっきり、餅つきのように鎌を持ち上げてからの再攻撃だと思っていた俺は不意を突かれ、まともに攻撃を食らってしまう。
「ぐは……ッ!」
幸い、当たったのは刃の部分ではなく、真っ二つにはならなかったが重量のある金属で腹を殴られ息が止まる。
「ぐ……ゲホ……」
「ユウキ!」
「《フルゴラ・スフェリカ・エクスプロ》!」
体制を立て直したポップルが【電撃球】を放つ。
ダメだ、ちょっとやそっとのダメージじゃ、この死神は……いや、上手い!
ポップルが狙ったのは【カメレオン・ワーム】の方だ。電撃魔法の付属効果で一瞬動きが止まった【カメレオン・ワーム】に、リトとピップルがトドメを刺す。これで、はさみ撃ち状態から脱した。
フシュウウゥ……
表情のない【フェイタル・リーパー】が俺を見つめ、大釜を振り上げる。
くそ。痛みと衝撃で乱れた呼吸を何とか整える。動け、動けよ俺!
逃げ、逃げなきゃ……だが、大釜の方が早い!?
ぐんっ!
わずかに体が後ろへ動き、大釜を避ける。
3匹の猫達が全力で俺を引っ張ってくれた。助かった。鎌の刃は俺の目の前の地面に刺さっている。
「立て! 逃げるぞ!」
リトの号令でみんな走る。
逃げる俺達を見送った数秒後、【フェイタル・リーパー】はゆっくりと歩き始めた。岩や魔法植物で目線をさえぎるように走るが、確実に追いかけて来る。
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