上 下
35 / 48
第5話 つきまとう影★のディソナンス

死の大鎌

しおりを挟む

 カツ……ッ カシャ… コツ……ッ ギギ……

 近づいてくる。
 まるで何かがゆっくり歩いて来るような?

「あっ……そんな!?……」

 詠唱を中断して震え出したポップルの視線を追って、嫌な予感と共に振り返る。


 フシュウウゥゥ……ッ


 吐く息の代わりに緑色の炎が揺れる。
 そこに居たのはボロボロの黒いローブをまとい、長く大きい鎌を持つスケルトン。まるで死神だ。身長は優に2m以上。全身、緑色の炎に包まれている。
 ドクロの目のくぼみにあるのは赤く燃える炎で、眼球も瞳もないのに俺達を見ているのが分かった。

「な……っ、【死縛魔刈フェイタル・リーパー】? なんでこんな場所に!」

「リト! 前見て!」

「ぅく……っ」

 【カメレオン・ワーム】の体当たりをギリギリでかわし、反転したリトの双剣が敵の柔らかい腹を切り裂く。
 あちらの戦闘はリトとピップルに任せても大丈夫だろう。問題は背後から攻撃して来た死神みたいなこの骸骨がいこつだ。
 大きく振りかぶってからの重心移動でガクン!と大鎌の一撃。

「あぶないっ」

「うみゃあっ☆!?」

 恐怖で立ちすくんでいるポップルを片手でつかみ、振り下ろされた大鎌から遠ざけるように投げ捨てる。猫だし、多少乱暴に放っても平気だろう。
 ポップルが立っていた場所に、大鎌の刃が突き刺さる。
 よくあんな細い腕、いや、骨だけで重い武器を扱えるな。全身をおおっている緑色の炎が筋肉の代わりに体を支えているのかもしれない。

「くそ……っ、近すぎる」

 ダガーは近接武器だが、見るからにダガーで倒せるような敵じゃない。せめて猫ダンスで弱らせたいが、ステップを踏む余裕がない。
 【フェイタル・リーパー】は大鎌を持ち上げると同時に横殴りに振り回す。
 てっきり、餅つきのように鎌を持ち上げてからの再攻撃だと思っていた俺は不意を突かれ、まともに攻撃を食らってしまう。

「ぐは……ッ!」

 幸い、当たったのは刃の部分ではなく、真っ二つにはならなかったが重量のある金属で腹を殴られ息が止まる。

「ぐ……ゲホ……」

「ユウキ!」

「《フルゴラ・スフェリカ・エクスプロ》!」

 体制を立て直したポップルが【電撃球サンダーボール】を放つ。
 ダメだ、ちょっとやそっとのダメージじゃ、この死神は……いや、上手い!
 ポップルが狙ったのは【カメレオン・ワーム】の方だ。電撃魔法の付属効果で一瞬動きが止まった【カメレオン・ワーム】に、リトとピップルがトドメを刺す。これで、はさみ撃ち状態から脱した。

 フシュウウゥ……

 表情のない【フェイタル・リーパー】が俺を見つめ、大釜を振り上げる。
 くそ。痛みと衝撃で乱れた呼吸を何とか整える。動け、動けよ俺!
 逃げ、逃げなきゃ……だが、大釜の方が早い!?

 ぐんっ!

 わずかに体が後ろへ動き、大釜を避ける。
 3匹の猫達が全力で俺を引っ張ってくれた。助かった。鎌の刃は俺の目の前の地面に刺さっている。

「立て! 逃げるぞ!」

 リトの号令でみんな走る。
 逃げる俺達を見送った数秒後、【フェイタル・リーパー】はゆっくりと歩き始めた。岩や魔法植物で目線をさえぎるように走るが、確実に追いかけて来る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

追放配信 ~最強ちびっ子冒険者カイと美少女エルフのわくわくダンジョン動画撮影記♪時々ざまぁ~

ななくさ ゆう
ファンタジー
「カイ! お前はトップオブゴッドから追放だ!」 「どうして!? 一緒に世界一のダンジョン動画配信者を目指そうって言ったじゃないか!」  13歳のちびっ子冒険者カイの夢は、世界一のダンジョン動画配信者になること。  それなのに、せっかく仲間に入れてもらったパーティから追放されてしまった。  だが彼は無自覚系の最強冒険者だった!  ソロでモンスター退治動画配信をすると、ありえない無双っぷりにあっという間に大バズり!  かわいいエルフの歌い手の女の子と仲良しコラボ配信をしたりも。  最強ちびっ子冒険者によるダンジョン動画配信成り上がり物語の幕開けです! ※※※本作には以下のような成分が入っております※※※ ・ちびっ子動画配信者がバズって成り上がり(1章~) ・最強主人公がダンジョンでモンスター相手に無双(1章~) ・美人な宿屋のおねーさんと楽しいデート♡(2章~) ・かわいいエルフの歌い手少女とほのぼのコラボ♪(3章~) ・追放した相手に”ざまぁ”しちゃう!?(1章~) ※R15のセルフレイティングは念のためです。それらを主眼にした作品ではありません。 ※誤字脱字を発見された方へ 以下の近況ボードにてお知らせいただけると大変助かります. https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/209938

ユニークスキル「ダンジョンショートカット」が無敵すぎる件について

ss
ファンタジー
ここは「スキル」という特殊な能力が存在する世界。そんな世界の田舎町で生まれた"ルイ・ルーク"は7歳の頃にスキル持っていない「スキル無し」と告げられる。 落ちこぼれとされているルイ・ルークには実は隠れざる唯一無二のスキル、ユニークスキルというものがあり、そのユニークスキルは神が創造した「ダンジョン」というものを容易にクリア出来る「ダンジョンショートカット」というものである。 このダンジョンショートカットを使い、ルイ・ルークは英雄になることを目指す。 ※本気で執筆してるためhotランキングに載らなかったら打ち切りにさせていただきます。何卒、応援のほどよろしくお願いします。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

幼馴染みが婚約者になった

名無しの夜
ファンタジー
 聖王なくして人類に勝利なし。魔族が驚異を振るう世界においてそう噂される最強の個人。そんな男が修める国の第三王子として生まれたアロスは王家の血筋が絶えないよう、王子であることを隠して過ごしていたが、そんなアロスにある日聖王妃より勅命が下る。その内容は幼馴染みの二人を妻にめとり子供を生ませろというもの。幼馴染みで親友の二人を妻にしろと言われ戸惑うアロス。一方、アロスが当の第三王子であることを知らない幼馴染みの二人は手柄を立てて聖王妃の命令を取り消してもらおうと、アロスを連れて旅に出る決心を固める。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜

白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。 光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。 目を開いてみればそこは異世界だった! 魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。 あれ?武器作りって楽しいんじゃない? 武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。 なろうでも掲載中です。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...