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第3話 ダンジョン★ビートが聞こえる
戦闘開始
しおりを挟む「あそこに、2つつながって生えてるヤツがあるだろう。分かるか?」
ラヴィは指を2本、Vの字に立てて見せる。
ほぼ正面に、似た形のキノコがある。
「う、うん」
「その左の、ヒョロっと細長いヤツ、アレを地面からもぎ取ってくれ。毒はない。イェロンが【眠りの風】を唱えたら一斉に攻撃だ。あの2本組から右が俺の担当。引っ張って抜くんじゃなく、ひねってちぎれ。両手で抱えて根本を蹴りつけながらねじれ。噛みつきゃしない。地面から離せば大丈夫だ。そうしたら急いでココまで戻れ。いいな? 後は俺達に任せろ」
「わ…かった」
工事現場によくある三角コーンより少し大き目の、眠ったままのキノコ。大丈夫。アレぐらいなら、俺でもきっと…!
みんな、準備ができたようだ。イェロンがモンスターの群れに顔を向け、小さく、はっきりと唱える。
「《ソムニアス・ヴェントゥス・カルムネッサ》」
軽くエコーがかかった不思議な響き。俺には意味が分からないが、きっと魔法の呪文に違いない。
効果を確認する間もなく、みんなモンスターに向けて走り出す。
俺がキノコにたどり着くより早く、ラヴィの剣が2体のキノコを切り裂く。左側を連続で通り抜けて行った光の玉はステラの光魔法だろう。【流れ星】と呼ばれる光属性の攻撃魔法を二連で放てるのが彼女の通り名“二つ星”の由来なのだ。
俺は目的のキノコにしがみつき、力いっぱいねじる。
(クソ……クソッ……!)
固い。
左側を今度は氷の槍が通り過ぎる。ラヴィはもう右隣にはいない。その向こうのキノコに剣を振るっているはずだ。
(……クソッ!!)
ガツガツと根本を蹴る。腕の中のキノコが動いた。目を覚したのだろう。クソ。蹴った部分が地面から浮き上がってる。あと少し……
ボコッ
「取れたあぁぁあ…!」
大きなキノコを抱き上げて、思わず叫ぶ。
「走れ! ユーキ、戻れ!」
「は、はい!!」
俺は心の中で【にげる】コマンドを選択しながらダッシュで離脱する。
地面に置いていいのか分からないので、大きなキノコは持ったままだ。
壁のように切り立った岩に張り付いているイェロンの隣に走り寄り、俺も岩を背にして振り返る。と、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
地面が揺れる。
「地震!?」
「違う。アレ」
イェロンが指差したのは、巨大な樹のモンスター。
10匹の【叫びキノコ】は無事に倒し切ったが、周りの騒がしさで、さすがに【気難しい樹人】も目を覚ましたらしい。
ブウームゥゥ……
太い幹に浮かぶゆがんだ老人の顔は、深く息を吐くと、赤く光る目をカッと見開いた。
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