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第2話 ぐるぐる★前奏曲(プレリュード)

凸凹コンビ

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 小部屋に入ると、そこには赤い人がいた。
 赤い……人、じゃない。額に短いツノがある。鬼?
 顔料で赤く塗った様な肌、カールの強い茶髪、筋肉のついた身体。ただし仁王像の様なガチムチではなく、しなやか。そして女性だ。たぶん。
 体にピッタリとした黒い革の服を着ていて背が高い。
 部屋、間違えてないよね?

 フリーズした俺の視線に気づき、鬼のお姉さんが笑いながら「どうぞ」と椅子を勧める。

「あ、はい」

「冒険者のォ、登録ですよね?」

「え!?」

 今度は反対側から高い声。
 見ると、机の上に2~30cmの小さな人形……ではなく、妖精かな?
 背中に薄い羽が生えた少女が体と同じ位の大きさのペンを持って微笑んでる。

「はい。あの、お願いします」

「それじゃあ、この用紙に必要事項を記入してくださァい」

 渡されたペンにインクをつけ、名前、年齢、住所、ネコランド滞在歴、志望動機、などを書き込んでゆく。

「志望動機:ナルトを取りに……ナルトって何ですかァ?」

「あー、の麺の上に乗ってる、こう、渦巻き模様の……アレ、ダンジョンで採れるらしいんで、タイショーに頼まれて……」

「だったら、『ダンジョン内の資源採集のため』って感じで書き直してもらえるか?」

「あ、はい」

 そりゃそうか。具体的すぎたな。
 とびっきり見慣れない異種族2名に見つめられつつ、ナルト以下の文章を二本線で消して書き直す。
 
「えと、次のこの、『得意なスキル』って何を書いたら……」

「得意な武器とか魔法とか」

「ないんで」

「何も?」

「何も」

 悲しくなってきた。
 俺だって、異世界チートを期待して、こっそり試してみたんだよ。
 「ステータス」って唱えてみたり、昔考えた魔法の呪文を使おうとしてみたり。
 足が速いわけでも、力が強いわけでもない。料理の腕や特別な知識で無双できるわけでもない。
 ……こんなんで冒険者になろうなんて、ずうずうしすぎて、あきれられたかも。
 でも、せめてダンジョンに入ってみたい。

「現地まで、知り合いの冒険者に連れてってもらう予定なんです」

「でしたら空欄で結構でェす。次回の更新時に追加・修正もできますよォ」

「研究者や観光客もダンジョンに潜るために冒険者の登録をするから問題ない。気にするな」

 そうか。「ダンジョンを冒険する者」はみんな「冒険者」なんだな。
 ついゲームっぽく戦闘能力の有無で考えてた。

「それじゃ、最後にこの、こちらの宝玉に手を置いてくださァい」

 リン…と鈴の様な羽音を立てて妖精が飛び立ち、サイドテーブルに近づく。
 そこには重厚な台座の上に、大きな美しい球が置かれていた。
 深い海の底から掘り出されたかのような濃厚な青色。そして全体に散りばめられた金銀。まるで宇宙そのものを内包しているかのようだ。ラピスラズリという石に似ているが、こんなに大きなサイズの球に仕立てたものは見た事がない。ボーリングの玉くらいあるな。

「もしかして、これ、犯罪歴とかが分かる魔法の道具?」

「そうですよォ。よく知ってますねェ」

「体力とか魔力とかステータスが見られる…」

「それはまた別の道具ヤツだ」

 あるのか? あるんだな!?!?

(おっし、異世界!!)

 思わず握りこぶしを作って感動する。
 漫画だったら目から目の幅の涙が流れてるところだ。
 だって今まで普通のラーメン屋バイト体験だったし。
 ふたりから、うっすら生暖かい視線を感じるが気にしない。
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