しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第155話 神器を増やす研究

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 研究開始から三日が経ち、私は久方ぶりの平穏の中で心穏やかに過ごしていた。

 フォルゴの研究に協力する傍ら、ヴィットリアの身体に私の全力を刻み付けたり、城下のヴァンパイア娘達にお手付きして二十三人を巫女にしたり、影を使って様子を見に来るカラとカルとニヌを安心させたり――――。

 少しずつ、少しずつ、壊れた心が正しく組み上がっていくのを感じる。

 そうそう、これが私なんだよ。

 欲のままに蹂躙されて搾取されるんじゃなく、欲のままに蹂躙して喰らって散らす。良いと思った娘が独り身なら口説いて落とし、持ち帰って押し倒して生涯の愛を誓い合わせる。

 クロッセンドの気候と土地柄も後押ししてくれている。

 水脈と龍脈に富んだ地形は、湿気と雨に恵まれ過ぎて八割以上が湿地で覆われていた。

 殆どの土地が畑作にも耕作にも向かず、海が近いから塩害にまで悩まされる始末。困っている人々からの陳情をヴィットリア経由でたくさん受け取り、片っ端から水路整備と土壌改良をしていたら同等以上の縁と出会いを育んでいた。

 ヴァンパイア巫女達の半数は、その関係で捧げられた生贄兼供物。

 貰い手がいないから丁度良いだなんて言われもしたけれど、美と艶に富んだ女ヴァンパイアは極上の至り。互いに意志を合わせて隅々まで重ねて混じらせ、私専用の雌としてありがたく頂戴している。

 …………あと三十人くらい追加の打診が来てるから、そっちも近日中にする予定だ。


「しなずちぃ~。次の実験の準備出来たよぉ~」

「りょうか~い。すぐいくよ~」


 地下牢を改造して作った自室で、気をやって唾液を垂れ流す一人から触手を引き抜いた。

 舞踏会のダンスに向いた細く整った肢体は、男の上で性なる上下を魅せる暴力的豊満へと変じている。顔より大きな乳房は先端をツンと上向かせ、そっと背中を押すと力なく柔らかなベッドに倒れ伏した。

 身を包むチャイナドレスの薄布が、溢れた迸りに被さって覆い隠す。

 事前に見せるスリット奥の暗がりは本能を曝け出すのに、事後には毎回邪魔を入れる無粋の一枚。今はフォルゴに呼ばれたから良いけれど、これが普段の貪り合いだったら我慢できずに引き裂いていただろう。

 女から垂れる男は征服欲の発露だ。

 もう一度、もう一度と滾らせて組み敷く快楽は雄の悦び。それを阻むような邪悪なんて存在する価値も意味もない。男が続く限り突いて犯して注ぎ込んで、やっと果ての満足が得られるというのに…………。

 ――――丈をミニスカート並みに短くしたミニチャイナドレス…………いや、丈が長いからこそスリットが生まれて良いんだろうに。邪道に落ちてどうする、私。


「はぁ……起きたら身体を清めて、アリーゼから指示を受けて。それと、今日注いだ分を漏らしたらオシオキだよ?」


 もう大分漏らしている彼女に、気絶しているのを良い事に理不尽な枷を嵌めて離れる。

 別にオシオキしたいわけじゃないが、言いつけを守れなかった娘の怯えた表情は思いの外滾るのだ。

 今夜の伽も任せるつもりだから、今の内にやれるだけやっておかないともったいなくてもったいない。丹精込めて仕込んだ方が楽しめるし、一手間二手間でより刺激的な邂逅に出会えるかもしれない。

 次は、吸血されながら注いでみようかな?


「しなずちぃ~、『病神の厄匙』持ってきてぇ~」

「わかったー」


 私は自室を出て、すぐ隣の研究室に走って入った。

 ただでさえごちゃごちゃしていた部屋が、ここ最近の研究で更に散らかっている。剣や杖や盾やなにやら、幾つも幾つも床の上に無造作に放られ、足の踏み場もない状態だ。

 でも、わかる者が見れば、この部屋は汚部屋ではない。

 世界有数の宝の山であり、現在進行形で神域を脅かす犯行現場。神々の力を宿す品々を、私欲の為に調べて活用する『神器研究所』なのだ。

 ちなみに、所長はフォルゴ。私は研究助手。


「あと、『戦神の首飾り』と『楽神のフルート』、『癒神の香炉』に『堕落神の手袋』も」

「え、そんなに? ってことはやっちゃう? やっちゃう?」

「やっちゃうやっちゃうぅ~。複製体も用意しといてぇ~。分裂数は一つに付き五つからいってみよぉ~」

「おぉ~っ」


 指定された品を触手で拾い、フォルゴの前に持っていく。

 これらは神滅戦線が滅してきた神々と、不慮の事故で死した神々の遺品だ。しかし、世界から力を借りる能力は未だに宿っており、フォルゴはこれらも神としてカウントされるのではないかとの仮説を立てていた。

 事実、私が世界に訊いたら神の数に入っているのだそう。

 わかってしまえば後は簡単だ。

 神器を私の複製体に吸収させ、分裂させる事で擬似的な神を増やしまくる。存在の平衡が機能するなら神の力を失う者が出始め、結果、神を失くす研究は一定の達成を見る。

 もちろん、分裂体の神性が失われる事も考えられる。

 だが、私は複製なんて増やし放題だ。

 失われた端から増やして増やせば事足りるし、私の神性が薄れれば神器から取り込めば良い。ヴィラ達に至っては属神として繋がっているから、もし何かあっても私の神性を分け与えて神としての維持が出来る。

 その上、これって首謀者は神滅戦線だから、神が直接手を出してはいけないっていう神界再編戦争のルールに抵触していないんだよねぇ…………。

 ウィン・ウィンの関係って、本当に素晴らしい。


「まずは厄匙からぁ~」

「は~い」


 神に染まっていない俺を一部分離し、拳大のスライムを作り出す。

 厄匙を与えると、じゅわじゅわ溶かして取り込んでいった。結果が早く知りたい私達は瞬きもせずじぃっと見つめ、溶け切って一見変わらない肉塊に少しばかりの落胆を覚える。

 病神の力を取り込んだんだから、もっとそれっぽい色にでもなれば良いのに。

 紫色とか土色とか緑色とか。


「どうぅ~?」

「取り込めてるけど、なんかつまんない」

「力は使えそうぅ~?」

「うん、問題なく。じゃあ、まずは五体に増やしてみる」

「よろしくぅ~」


 私は触手で包丁を作り、スライムを五枚にスライスした。

 太くて厚いハムのようだ。思わず一枚食べたくなったが、ぐっと堪えて一枚一枚をテーブルに並べる。すぐに断面から様々な色の膿が滲みだし、やっぱり食べなくて良かったと心残りが消え去った。

 いや、これヤバイ。

 凄い量と質と種類の病原菌やウィルスが生み出されてる。拡がらないようにさっさと断面を覆って再生させ、別個の存在として簡単な意識を付与して私の傘下に紐づける。

 この国が汚染されたら、ヴィットリアに申し訳が立たない。

 厳重に管理しないと駄目だ、コレ。


「神の数は増えたぁ~?」

「ちょっと待って…………おっ、増えてる増えてる。あと、下位神が二柱怪しい感じだって。いけるんじゃない? これいけるっていけるっ!」

「よっしよっしぃ~っ。でも病神のは危ないから、一つにして封印しよぉ~。戦神と楽神と癒神ならマシだろうから、そっちで続――――」

「フォルゴ~、しなずち神~、お客様ですよぉ~。研究は中断して会議室にいらっしゃってぇ~」

「ヴィットリア?」


 寝間着のネグリジェ姿に外套だけ羽織ったヴィットリアが、ワイングラスを片手にドアから半身を出してきた。

 一応まだ朝――――ヴァンパイアなら普通か。

 昼夜逆転の生活スタイルだろうから、日が出たら寝る時間だ。ちょっと夜更かしならぬ昼更かしして、飲酒に興じるくらい日常の一幕だろう。

 でも、客って誰?

 ワイン飲みながら応対して良いくらいに気軽な人?


「わかったぁ~。片付けてすぐ行くぅ~」

「とりあえず病神分体は一つに纏めて、形は…………杯で良いや。それじゃ行こう、フォルゴ」

「あ~いぃ~」


 連れだって研究室を後にし、客人が待つという会議室に私達は急ぐ。

 心当たりはない。だが、ヴィットリアが呼びに来るならそれなりの相手だ。

 待たせるのは、きっと良くない。
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