しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第149.5話 始まりから見定める者達

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「始まったね」


 マヌエル山脈で最も高い位置にある木の上に立ち、僕は遠くの不毛な争いを眺め見る。

 しなずちの本拠である霊地を一望できるここは、本来なら武闘派の巫女達が常に監視を絶やさない。しかし、今はしなずちの命で全員が避難しているから、僕の様に知っている者であればいくらでも見放題だった。

 まぁ、そうでなくても、気付かれずに覗き見るのは簡単だけどね。


「どうだ、琥人?」

「今始まった所だよ、ソウ。でも、放っておいて良いの? しなずち同士の戦闘とか、最悪はディプカントが滅びるよ?」

「そのくらいでないと上位神に推した意味がない。それに、万が一の時は私とお前で介入すれば良い」

「簡単に言うよねぇ~。簡単だけど」


 隣の木に転移してきたソウと、この程度はどうという事はないという考えで一致を見せる。

 確かに、上位神しなずちと妖怪しなずちは僕達に劣る。

 世界を滅ぼせる入口に立てた新参程度、歩き始めた赤子に等しい。やんちゃし過ぎないように諌め育み、来たるべき滅亡の回避の為に取っておく。

 その時が来たら矢面に立たせ、彼の最愛の敵を討ってもらう。

 もう、何度繰り返してきたかわからない。わからないけど、今回もきっとやってくれるだろう。

 可哀想だけど…………。


「…………何回目だっけ?」

「何がだ?」

「圭と奏志の因果だよ。ノクフィルナから数えて、もう何億年? たった一回の失敗が、何でこんなに後を引いてるんだろうねぇ……?」


 僕は遥か昔の記憶を辿り、しなずちの魂の原初を思い出す。

 原初世界ノクフィルナで作られた、世界を浄化する双子の人造人間があの二人の最初。朱い夕陽を蒼く染める為に命を費やす筈の彼らは、関わりのない所に足を取られて世界の浄化を果たせなかった。

 強行した実験で奏志は死に、十一年後に圭も続いた。

 それからずっと、あの兄弟は世界を救ったり壊したりを繰り返している。

 主に奏志が壊し、圭が救う。今回はどっちになるかまだ分からないが、きっとどっちかに偏って転ぶのだろう。

 そして、また転生し合って、因果の輪廻を回し続ける。

 本当にどうしようもない程、不毛で不毛で不毛に不毛。

 いい加減終わらせてくれないものか? 最愛の人を転生の度に送って送られて殺して殺されて、そんな場面を何回も何回も何回も見せられていい加減にしろと本気で思う。

 アルセアは、『今回できっと終わる』って言ってたけど、本当にそうなのかな……?


「琥人」

「なに?」

「かつての弟分が気になるのもわかるけど、向こうはあの頃の記憶を持っていない。今世を全力で生き抜けるように、手を貸してやるのが私達に出来る唯一だ」

「そうは言うけど、圭って目を離すとすぐ無茶するんだよ? 奏志が死んでから何回自殺未遂したと思う? 会う度会う度、僕との魂の縁を結び直さないと見えない何処かに行っちゃうんだから」

「いつまでも子供扱いしてるから、再開の度に煙たがられているんだろう? しなずちにも嫌われているのは知っているな?」

「知ってるけど大丈夫。昔みたいに『琥人ちゃん大好き』って言わせてみせるよ」


 そう。言ってくれると信じてる。

 成長すると諦観を決め込むのは毎回だけど、根っこの素直で優しい心も毎回だ。

 世話を焼けば嫌々言っても受け入れてくれるし、助けてあげれば文句を言っても感謝してくれる。少しずつ少しずつ積み重ねていって、最初の圭みたいに手を繋いで笑顔で歩く。

 そしたら、女性体に転化してまた食べちゃっても良いかなぁ?

 ふへへっ、へへへへへっ……。


「…………本気で嫌われないように気を付けろよ?」

「何の事だかわからないにゃ~?」

「全く……」


 呆れ顔のソウを尻目に、僕はしなずちと圭に視線を移した。

 雄々しく雄々しい触手の束が、二つの意志に従い激動の渦を作り上げている。

 女性として生を受けた前世とその前だったら、あそこに乱入して二人纏めて押し倒していたと思う。いや、そもそも男性に転生したのは今回が初めてだから、未だに両性と女の感覚でしか見る事が出来ない。

 そうそう。最初の圭の始めては、全部僕が貰っちゃったんだよね。

 人造人間と精霊の絡みだったから子供は出来なかったけど、だからこそ滅茶苦茶に何度も何度もやりまくったっけ。

 圭の目から光が消えて、自殺願望を失くすくらいに。

 あぁ~……思い出したら心が渇いてきた。


「…………百回くらい良いよね?」


 僕は自分の身体を女に変えながら、次に地球に戻るまでの予定を立て始めた。
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