しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第139話 テトとギュンドラと巻き込まれ

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「チェンジ」

「チェンジ」

「チェンジ」

「チェンジ」

「パス」

「チェンジ」

「チェンジ」

「パス」

「パス」

「チェンジ」

「パス」

「パス」

「早ぇんだよ、お前らっ! チェンジだ、ちくしょう!」


 数か月ぶりにやってきたクルングルームの都は、異様な熱と盛り上がりで溢れていた。

 通りの幅は広く、高くても建物の高さは二階まで。広々と余裕のある街並みのそこかしこで屋台とテーブルが幾つも並び、中央の特設ステージを笑いの渦で包んでいる。

 ステージ上には良く知った顔が二つと、どこかで見た覚えがあるけど思い出せない顔が一つ。

 何をやっているのか遠目で覗き、カードとチップの山が見えた。ステージ脇にはオッズ表が掲げられていて、『あぁ、こいつら何馬鹿な事やってんだ』とこめかみの辺りに激痛が走る。

 王と勇者が、天下の往来で賭けゲームやってんじゃねぇよ…………。


「あら、しなずち殿ですか? お久しぶりです。ヴァテア殿下から聞いておりましたが、ご無事なようで何よりです」

「えっと……貴女は…………」


 四肢に紅の鱗を纏う、ドレス姿の竜人族の女性が優雅な礼を私達に向けた。

 布の隙間からチラチラ見える鍛え抜かれた武人の身体。それでいて人妻特有の女性と母性を兼ね備える瑞々しい魅惑の早熟。

 名前が……名前が出てこない。

 こんなに美しく魅力的な女性を、何故思い出す事が出来ないのだ? 人妻っぽい美女で女傑なんて、嫉妬に狂って大体覚えている筈なのに……。


「お久しぶりです、ラフィエナ・グランフォート妃殿下。しなずち様? ヴァテア殿下の弟君で在らせられるヴァニク・D・グランフォート殿下の奥方様です。お忘れですか?」

「あっ、そっか! シムナの嫉妬が可愛すぎて印象が薄――――イタタタタタタタタァァツ!」

「しなずち様? ラフィエナ様に失礼ですよ? 少し頭を冷やしましょうか」

「やめてごめんやめてごめんやめてやめてやめてってばぁあああああああああっ!」


 尻の肉を抓って捻られ、千切れんばかりの痛みに涙を流す。

 ユーリカの額に浮かぶ青筋は、明らかに強力な嫉妬を含んでいる。具体的に言うとシムナを『可愛すぎて』と評した事で、師として女としてプライドが傷ついたのだろう。

 いやいやいや、ユーリカだって滅茶苦茶可愛いよ?

 私に尽くしてくれる甲斐甲斐しさと媚びて誘う淫靡な仕草。キスをせがむ唇と舌は確実に私の愛を吸い尽し、続く伽で理性を壊された回数は両手両足の指で足らない。

 だから、ね?

 痛いから、やめよ?


「仲睦まじくて羨ましい限り。私の夫にも見習わせたいですわ」

「恋敵が増えるだけなのでお勧めしません。ところで、陛下とテト様、ヴァニク殿下は何をしていらっしゃるのですか? 見た所、相当に拮抗しているようですが……」

「見ての通り、賭けゲームです。テト様はアンダル神の信仰を認めさせる為、ヴァニクはエイレスの信仰を認めさせる為、ギュンドラ王は信仰的中立を保つ為、トリプルセブンのベットチップルールで競い合っています」

「ベットチップ……温いですね。行きましょう、しなずち様」

「いたぃ~……いたぃよ~…………」


 羽衣から二匹の蛇を生やしたユーリカは、私の身体を巻いてステージへと向かった。

 真正面から堂々と、私を引きずって壇上を目指す。その圧倒的なまでの存在感に何事かと視線が集まり、警戒して阻もうと運営の者達がステージ前に立ち塞がった。

 それに気づいたギュンドラが、私達の姿を認めて声をかける。


「しばらく中断だ。お前達も退いて良い。――――久しぶりだな、ユーリカと……その情けないのはしなずちで良いのか? 何の用だ?」

「急な訪問となり申し訳ございません、陛下。ただ、どうしても我慢ならない事があり、しばしのご静聴をお願い致します」

「?」


 首をかしげるギュンドラをよそに、ユーリカは私の身体を宙空に掲げて二回三回と手を叩いた。

 耳目の向きが私の巫女へと一斉に集まる。相応の重圧の筈だが、彼女の表情は微塵も怯まず、逆に舌なめずりをして微笑んですら見せる。

 一体、何をする気なの?


「私は生の神しなずち様の尖兵で眷属、名をユーリカ・ディソージ・ヴィランガと申します! 大変な盛り上がりの所、水を差すような真似をして謝罪致します! ですが、このゲームの温さに我慢が出来ず、よりひりついたスリルを味わって頂く為のご提案をさせてください!」


 何を言っているの、この娘?

 そんな視線が私の分を含めて多数、ユーリカに向かって降り注いだ。

 肌がピリピリ、嫌な予感を告げてくる。きっと私が巻かれて掲げられ、衆目に晒されているのが無関係ではないのだろう。

 ――――ん? どこからか、甘い臭いがする?


「しなずち様の巫女はトリプルセブンでよく遊びます! ベットチップ、ターゲットストリップ、リバースジャック、オープンハンド――――ただ、究極的に刺激を求める時にはたった一つのルールに必ず行き着き、全ゲーム中の八割はこれで占めるのです! そのルールの名は『バックエクステンド』!」

「!? ちょっ、ユーリカ!? それはダメ、ダメだって、それだけ――むぐあぁぅごぉおおおおおおおおおお――――っ!?」


 蛇から生えた触手が、私の口に入って口内を蹂躙する。

 半ば公開レイプに近い状況に、可哀想……美味しそう? え? おかしくない? ここは引くところでしょ? そんなピンクに染まり切った感情がどうしてどこから湧き出てくるの?

 女性の甲高い悲鳴が上がり、私はそちらに目を向けた。

 若く、頬を朱に染めた可愛らしい娘だ。見つめる先は私の方角で、向いている角度からすると下の方?

 ゆっくりゆっくり確認すると、そこには、一本の、触手が、そそり、立っていた。

 屈強な男の腕程ありそうな、太い血管が脈動する極太のそれが。


「最初は赤子の指程度から始めます! ゲームを落としたプレイヤーは徐々に徐々に太さと長さを増していき、一人を残して気絶するか負けを認めたら決着です! 己の尊厳を賭けた我慢比べ! 此度のプレイヤー達の顔が背徳の快楽に染まる様を見たくはありませんか!?」

「「「「「「見たーい!」」」」」」


 性と欲にどっぷりつかった、黄色い声が一斉に上がる。

 いやいやいや、おかしいから。

 公共の場で、小さな子供まで見ている中でやるべき事じゃないでしょ? 見ちゃダメと目を覆って屋内に避難させるべき事案になりかねず、何故反対の声が上がらないのか不思議でならない。

 さっきからしているこの甘い臭いが原因か?

 臭いの元を目で辿ってみると、風上で血色の蛇が十匹ほど口を開けて赤い霧を吐いていた。付近の物陰では男女の営みが行われていて、何が吐き出されているのかすぐに検討がつく。

 まさか、興奮剤と媚薬を垂れ流してるの!?


「陛下のクッ殺が見たいですか!?」

「「「「「「見たーい!」」」」」」

「テト様のアヘ顔が見たいですか!?」

「「「「「「見たーい!」」」」」」

「ヴァニク殿下の触手はラフィエナ様にお任せします!」

「好きに動かして良いのですよね?」

「折角だからしなずち様も参加しましょう!」

「あぃいっへふほぉおおおおおおおおおおお!?」

「さぁ、運営の皆さん! お手数ですが、オッズ表の更新と賭け金の一時返却をお願いします! プレイヤーの奥様方は、逃げられないように身柄の確保を! それと、しなずち様は神様なのですから、ハンデとしてこのちょっと太めの触手を最初から入れておきましょうか!」

「あぅえぇええええええっ! あえぁあああああああああっ!」


 涙を撒き散らしながら、私は逃れようと必死にもがいた。

 助けを求めて壇上を見ると、同じように取り押さえられている三人の犠牲者達がいた。強力で強大な恨みと非難を私に向けていて、決して意図した行動でない事を首を振ってアピールする。

 こんな事になるとわかっていたら、自分だけで来てたってば!


「ん!?」


 少しずつ、自分の身体が下がっていく。

 行く先にはあの極太触手の先があり、ユーリカが舌を這わせて湿らせている。地上の影の中ではカラとカルが爛々と瞳を輝かせていて、これから何をされるのかが言われずともわかった。

 やめて? ねぇ、やめて?


「私の処女を奪った街で、私に犯される気分はいかがですか? しなずち様?」

「んむぅううううううううっ!?」

「これで、私達は本当の意味で繋がれた気がします。では、存分にお楽しみください」


 入口にぴったりあてがわれる私を見て、ユーリカは恍惚とした表情で身体を大きく震わせた。
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