しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第135話 神滅戦線

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「ユーゴを助けたいなら、私が聞いた事を正直に洗いざらい吐いてください。でないと、壁にでも埋め込んで母親のわからない子をたくさん仕込ませます」

「それ、一番最初を頂いても良い? こういう機会でもないと、ユーゴのを味見出来ないの。ずぅっと狙ったり襲ったりしてたんだけど、一度も成功してないのよねぇ……」

「えぇぇ……?」


 予想の斜め上を行く答えを返され、私の方が困惑の言葉を口にした。

 残った身体を全て取り込んだ私は、少年の姿に戻って万全の状態。傍らにはユーゴを拘束した蛇を控えさせ、彼の仲間と思われる三人と対峙している。

 真紅のドレスと白く長い髪を風に流す、うちの巫女達に匹敵する美貌とスタイルを持つ女ヴァンパイア。

 ビクビクと震えて怯える姿が可愛らしい、黒い翼で前を閉じるハルピュイアの少年。

 人と言って良いのかわからない、目玉に五本の触手を生やして足代わりに立つモノアイ。

 纏う気から、三人とも神喰いだとすぐにわかった。しかし、そうであるとしても、女ヴァンパイアとモノアイが持つたっぷりの余裕が不可思議だ。

 特に、モノアイの私を見る目が、怖気を纏った粘性を帯びている。

 お尻がムズムズする。


「ヴィットリア、ハーレムの子達が泣くわよぉ? 『大人しくユーゴを返しなさい! さもないと、最初から手首まで突っ込んでグーパーして生まれてきた事を後悔させてやるわよ!?』って感じでもう一回やり直し」

「それは貴方の願望でしょ、清水さん?」

「シャーラップ! 清水なんて髭の濃いおっさんはもういないの! 今の私の名前はピュアウォーター! 次間違えたら口からケツまで貫通させて、出口で出たり戻ったりするわよ!?」

「あら。なら大丈夫ね、間違えてないから。ショタ喰い趣味で警察から逃げる途中に列車に轢かれて、犯したショタの恋人だった女神に人外転生させられた清水直哉さん四十三歳バツニ子持ち。グロアントの町で夜な夜な少年を攫い犯す目玉がいると噂になっているわよ? あまり欲を出しすぎると、今世でも不遇の死を遂げるのではないかしら?」

「前世からそうだったけど、貴女のお下がりばっかりは飽きるのよ! 殆ど壊れたような死にかけまで押し付けて、『後はご自由に』だなんて厚かましいにも程があるわ! たまには私が初めてをもらいたいの! ――――あら、そこの貴方? 私好みの可愛い顔をしてるわねぇ? ちょっと後ろを向いてごらんなさいな。気付いた時には、女で味わえない最高の最高に届かせてあ・げ・るっ」

「ごめんね、ユーゴ。君の苦労を理解できなくて。ギュンドラにお帰り」


 突き付けられた現実をしっかと認識し、私はユーゴを解放して頭を撫でた。

 自分がしっかりやらないといけないと、今回の彼の行動からは強く感じられた。こんな理由があっただなんて予想はつかなかったけど、理解してしまった今は哀れみと同情以外抱く事は出来ない。

 頼りなさげな同僚と、性犯罪者と性犯罪者が仲間だなんて……。

 可哀想で可哀想で、ポロポロポロポロ涙が出る。鎌を持たない手に私の血肉を固めた丸薬を握らせ、「強く生きるんだよ」と強く強く言い聞かせた。当然の様に手を振り払われても全く気にならず、今度ギュンドラに彼の努力を零から百まで伝えようと思う。


「うちもそっちが良いぃーっ!」

「うおっと!?」


 少年ハルピュイアがヒュレインを思わせる初速を見せ、私の胸に飛び込んできた。

 攻撃かと思って胴体の結合を緩めたら、小さな体は私を突き破って向こうまで行ってしまった。受け止めてあげた方が良かったかと思いつつ、でも男を抱き留めるのはやっぱり御免だ。

 大きな衝突音と、樹が倒れる音が背後から聞こえる。

 飛んでいった先には大きめの樹が聳えていて、きっと勢い余って突っ込んだのだろう。保護者がちゃんと監督していれば――――いや、無理か。ユーゴならいざ知らず、目の前の二人にそれが出来るとは思えない。

 私は仕方なく、目を回して倒れる彼を巻き取ってユーゴに渡した。


「大丈夫?」

「ふぇぇぇぇ……いたいぃぃぃぃ……」

「男の子なんだから泣かないの。で、君達の目的は何? 一体何者? 神が嫌いなのはわかったけど、私はまだなりたてなんだから勘弁してよ」

「なりたての上位神なんて狙うしかないじゃないの。こんなにアヘ顔が似合いそうな上玉、三日三晩かけて小鹿のダンスを仕込んであげないと気が済まないわ」

「清水さん、洒落にならない本気はその辺にしておきましょう。初めまして、しなずち神。私はヴィットリア・デア・クロッセンド。クロッセンド王国の女王をしております。こちらの単眼触手は清水さん。そちらのハルピュイアはジェン・グローニー。そしてユーゴを合わせた四人で、神を滅ぼす為の組織『神滅戦線』を運営しております」


 ドレスの裾を持ち上げ、ヴィットリアは優雅な礼を私に向けて披露した。

 敵意は感じられず、代わりにあるのはやはり余裕。私など全く怖くないと言わんばかりで、綺麗な顔を圧倒的快楽で染め上げたい衝動が沸々と湧いてくる。

 本当に、神喰いは厄介だ。

 私の強みである力と薬が全く効かない。捕えたとして、殺せも調教も出来ないから戦いを避けるくらいしか対処方法はない。

 今度、ちゃんとした材料から正規の手段で薬を精製しよう。


「北の物価上昇は貴女達の仕業ですか?」

「はい。社会の混乱に人の心を向けさせ、信仰を断って神々の弱体化を狙いました。もう潰されてしまったようですが……」

「まだこれからだよ。――私は君達の敵なのかな? 今、神々はお互いに潰し合ってる。敵の敵は味方って事にはならない?」

「敵は敵で味方は味方です。それに、私達は幹部ですが、基本方針の決定権はありません。説得は頭領にお願い致します」

「君達の頭はどこ?」

「半年ほど前に異世界に旅立ちました」


 互いににっこり笑顔を交わし、和解は無いとはっきり認識する。

 もういない奴に了解を取れとか、遠回しな拒否の典型だ。元からやり合う気は満々で、ユーゴは宣戦布告を兼ねて討ち取れれば御の字とかその程度か。

 外面は良くても、内側は真っ黒でどす黒い。

 こういう手合いは、本来ならヤク漬けにして寝室に転がしておくと後腐れ無い。顔だけでなく上から下までの大湾曲の連続は、一人用の玩具に実に丁度良い。

 手を考えよう。

 この女を雌に堕とす方法を。


「……終わったか?」

「無事でよかったわ、ユーゴ」

「…………ふんっ」


 ジェンを地面に下すと、ユーゴは背を向けて歩き始めた。

 真っ直ぐ真っ直ぐどこまでも真っ直ぐ。方角的には遥か先にギュンドラがあり、大鎌を握りしめる指に悔しさと再起の意志が滲んでいる。

 そう遠くない日に、また刃を交わすのだろうか。

 それも良い。

 彼の事は嫌いじゃない。向かってくれば何度でも相手をして、その度に打ち負かして追い返そう。

 そして、神喰いに効く毒と薬を見つけて、無理矢理ハーレムを築かせる。

 ヴァンパイアの性欲は少な目と聞くが、無いわけではない。思いっきり増幅してやれば人並み以上にはなる筈で、その方法を次までの宿題として自らに課す。

 いくつか目星はついているから、対価の排卵誘発剤を持って近い内に行こっと。


「…………次は勝つ」

「滅ぼすじゃなく?」

「よく考えれば、貴様を滅すればユーリカが悲しむ。ユーリカが悲しめばミュウが悲しむ。殺さずに痛めつけて屈服させてやるっ」

「楽しみにしてるよ。アンダル神によろしく言っておいて」


 ユーゴの姿が霧と消え、少しばかり時間を取って見送る。

 戦いの予約を心に刻み、ひとまず一件分は落着。改めてヴィットリア達を見据え、彼女達の冷たい瞳に満面の笑みを送った。

 懐柔の要素は一切なく、ただただ滅ぼすべき敵同士。

 こちらの力は向こうに通じず、向こうの力はこちらの規模に及ばない、無駄で無駄で無駄な闘争は非常に気乗りせず、出来る事なら避けて通りたい。

 だが、やるとなれば徹底的に、端の端から隅の隅まで平らげて見せよう。

 容赦はしない。


「次はこちらから行くとするよ」

「お待ちしておりますわ」


 それが、戦争という物だ。
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