しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第130話 淫堕の果てに

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「はぁ…………確かに後が育ったらお手付きしても良いって言いましたけど、うちの嬢達全員を時忘れの牢獄で私に育てさせるっていうのは反則ではありませんか?」


 マルドイユ南西部にある馬車乗り合い所に向かう途中、元娼婦のカエリナは何度目かわからない愚痴を私に溢した。

 授けた羽衣をネグリジェと薄手のローブに成形し直し、寝所向きの淫靡な装いをゆらゆら揺らす。透けて見える青い肌と明滅する術式紋が卑猥で卑猥で情欲を誘い、遮る物が殆どない街道であっても脇で押し倒しかねない危うさを孕んでいる。

 サキュバスの上位種、サキュバスクィーンとしては、これでも妥協しているのだという。

 町を歩けば淫堕で溢れ、男も女も性を晒す。それこそが性夜の女王の正統であり、たった一人に向けるのは異端の中でもごくごく一部。

 余程の事と余程の男に出会わなければ、そんな事になりはしない。

 逆に言えば、私は彼女にとってそれだけの男になり得たという事だ。

 その一点だけは誇らしくて心が躍り、喜びが漏れて微笑みが浮かんだ。


「私らしくて良いでしょ?」

「強引に過ぎます。しかも、一発どころか初撃で堕とすだなんて何を考えているのですかっ。本来のサキュバスは夜を性に満たす者。より大勢を生の営みに導く存在なのに、あんなことをされたら貴方様以外お相手出来ませんっ」

「ありがとう、カエリナ。それと、今夜は一対一の時忘れ研修をするから覚悟しておいて」

「っ!?」


 私の言葉に、カエリナは急に立ち止まって内股を締めた。

 ローブで速やかに前を覆い、内側を悟らせない様に隠してしまう。しかし、表情からどこがどうなっているのか丸分かりで、そっと横に寄り添って息を吹きかけると足から頭頂までビクンッと跳ねる。

 雌の匂いがわずかに漂う。


「我慢できない?」

「何、を、言って、るんで、す、か? はや、く、イキ、ましょ?」

「隠さなくて良いんだよ? 好きにして良いんだよ? 欲しいなら欲しいって素直に言えば、言わないで堪えているのが馬鹿みたいに思えるんだよ?」

「あっ……あ、あああ、あっ」

「心と一緒に前を開けて。求めて求めて受け入れて。昨日みたいに、ほら。この辺りをごりゅっごりゅっぐりんっぐりんって――――」

「さっさと歩きなさい、我が愚神」


 冷たく冷たい声色と共に、後頭部を思い切り蹴り抜かれた。

 予想で来ていたから首を伸ばして勢いを殺し、また元に戻して振り返る。カエリナと同じ青い肌を白衣風の羽衣で覆い、サラサラの紫髪をポニーテールに仕上げた魔族娘がそこにいた。

 軽蔑の眼差しといい、主神の扱いといい、まだまだ巫女としての振る舞いが雑だ。

 だが、そこが彼女の良い所でもある。

 多少のロマンは理解できる徹底的な現実主義者。私に従うだけのイエスマンではなく、私に否を突き付けられる貴重な人材だ。

 これで夜の方は情熱的にねちっこく、そのギャップがたまらなくたまらない。


「ニヌ、痛い」

「私も最初は痛くされましたからおあいこです。第一陣の出発前に挨拶すると決めたのはしなずち様なのですから、出発を遅らせるような事をしないで下さい」

「当初の予定から見て、もう五日遅れてるからあんまり変わらないと思うんだけど? 結局、レレイジュ神は経済戦争に何の関わりも情報もなかったし、ユウトは一週間も無駄に粘るし。ニヌくらいだよ。今回の戦利品は」

「物扱いは甚だ遺憾ですが、鬱憤は私の身体で晴らして下さい。それでユウト達の代償が減るなら、この身と心を差し出した価値はあるのでしょう」

「…………もう手遅れだけど、本当に良かったの?」


 今更覆りはしないが、ニヌの気持ちが気になって本心を問う。

 今回相手にしたレレイジュ教国の騎士達は、生命の保障を対価に私への敵対を禁じた。

 破りかねないユウト達は幸せになってもらう事で縛りを強くして、ニヌだけは一人、更に私への隷属と信奉を自ら誓ったのだ。

 正直、意外だった。

 ユウト達のパーティは仲が良い。

 バザナークは地母の専用として、ニヌはユウトと出来ている思っていた。それがあっさり私に下り、無理をしていないかと心配にもなる。

 もう、私でも戻す事は不可能だけど……。

 通常の巫女契約に加えて隷属と信奉の誓いなんて、重なり過ぎて呪いの域にまで達している。

 彼女が私から逃れる事は、例え死であっても無理だろう。もし私が転生する事があったとしても、彼女の魂は呪いによって来世にまでついてくる。魂の伴侶として永遠に添い遂げる事を強制され、個人の自由はどこにもない。

 不憫に過ぎる。


「医者というのは少し厄介なんですよ。しなずち様」

「厄介?」

「なまじ身体への理解が深いと、性交に心がついて行かないのです。生殖本能の高まりを解消しているに過ぎず、別に愛が無くても誰でもできる、と。私の経験人数、実は三桁にまでいっています。でも、ただの一人も熱くなれなかった。貴方に出会うまでは……」


 ニヌは私の身体をカエリナと挟み、豊満と雌で狭んで捕えた。

 逃がさないのは私の方だと言わんばかり。昂りこそしていないが、カエリナが始めてしまえば彼女も便乗して衣を落とす。普段のクールさを脱ぎ捨てて、ひたすら私を求める女となる。

 あっ、これ、呪いが想いに転じてるんだ。

 最初はそこまでの気持ちはなかったけど、強力な三重の約でほんの僅かにあった好意が増幅されてここまでになった。オンとオフの差が大きいのもそれが原因で、純粋な感情ではきっと無い。

 …………ほんのちょびっと罪悪が少し。

 そして、それを遥かに上回る征服感と達成感が胸中を満たす。


「ちゃんとできたら、先生――――アシィナ・リサイアと一緒にしても良いですよ?」

「したくなったら勝手に押し倒すよ。カエリナ、もう大丈夫? 辛いだろうけど、今夜まで待って。そしたら一……二年くらいずっとしよ? たくさんここを虐めてあげる」

「ぅうっ!? ひぐぅっ! んっぁっ!」

「あぁ~……これではカエリナは歩けませんか。間違いが起きないように私が背負います。しなずち様はどうぞ、先に行ってください」

「ニヌは女性経験ある?」

「ありますが…………何故、今そんな事を?」


 言わなくてもわかっているだろう質問の意図を、ニヌは不満げな顔で私に正した。

 発情したサキュバスクィーンなんて危険人物を、大勢奴隷がいる場所に連れていけるのか? 理知的な彼女ならきっと思い至り、医療行為という名目で、先行する私を尻目にしてしまうかもしれない。

 そんな事、許せるはずがない。

 せっかく私が昂らせたのに、横取りなんてたまったもんじゃない。もしどうしてもする必要があれば、それは私の役目だ。

 私はニッコリ笑顔を返し、ニヌの横にぴったり寄り添った。


「べっつにぃ~?」

「何だかムカつきますね。後で覚えておいて下さい」

「おぉ、怖い怖い。でも、さっきニヌが言った通り、遅れてるのは間違いないんだ。リザが怖い顔をして待ってるだろうから、二人とも私が運んでいくよ」

「あまり乱暴にしないでくださいね? 女性はデリケートに扱うものです」

「壊れないように頑張る。まずは脚を固定してっと」


 触手で二人の足首を掴み、上へ上へとぐるぐるぐるぐる巻いて卵形に仕上げる。

 卵は衝撃吸収に秀でた自然形。様々な角度からかかる力を分散し、内部を守る。運んでいる間に何かあっても、これなら彼女達は無事で済む。

 まぁ、外的要因に対してだけだけど。


『し、しなず――んんんっ!? ちょ、やめ、やめなさい、この愚神んんんんんんっ!』

『あっ、だめぁっ! し、しんじゃ――――くほぅぉおおおおおぅっ!』

「それじゃ、改めて出発っ。短い旅程だけど、二人とも楽しんでね?」


 人間大の卵を一つずつ両肩に担ぎ、私は発着場へと歩を進めた。

 急ぎはするが、急ぎ過ぎはしない。

 卵の中から、心地良い嬌声が漏れて聞こえる。出来るだけ長い時間聞いていたいから、歩く速さを調節してたまに休憩。ゆっくりねっとりたっぷりどっぷり。

 ヒュレインが大好きな丸呑みじゅぷじゅぷ。二人も、きっと気に入ってくれるよね?

 気に入るまでやるんだけど。
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