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第129話 英雄? 神様? 構わねぇ、やっちまえっ!
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厚い木の板で出来たドアを開き、私は中の惨状をそっと窺う。
特製の媚薬香をたっぷり焚き、充満させたウルトラスィート。国王の寝所を思わせる高価な家具や調度品が揃えられ、敷かれる絨毯も相応の品。本来であれば汚れるのはベッドの周辺くらいだろうに、そこら中がビチャビチャだったりパリパリだったり後片付けは大丈夫?
女のはいくらでも吸えるけど、男のは絶対御免だからね?
「あぁ、しなずち様。ユウト様とレレイジュ様はまだお休み中です」
キセルを吹かす娼婦の一人が、私に気付いて声をかけてきた。
壁に寄りかかって気だるげに、汗と涎と色々とを全身の肌に滴らせる。下腹部の紋章が強い魔力を胎動させ、取り込んだ精を全力で魔力へと変換していた。
さすがにこの辺一番のサキュバス達でも、英雄と神の相手はきつかったか。
汗の匂いに、幾分の緊張と後悔が含まれている。もうちょっとで防御を突破される所だったらしく、見てわかる程に疲労が濃い。
少しでも労おうと、私は澄んだ水を抽出してそっと差し出した。
「ありがとうございます」
「進捗はどう?」
「元々の耐性が無かったレレイジュ様はカラミルの虜です。カラミルも満更じゃないみたいで、この件が終わったら辞めていっちゃいそうですね」
「身請けの代金は私が払っておくから安心して。ユウトの方は?」
「主神と違って強情です。素直なのはこっちの方だけで、ちょっと頑張り過ぎて避妊紋を壊されかけちゃいました」
「キサンディアに頼んで、もっと強力なのを組んでもらおう。今使ってるのはいくら何でも脆すぎるよ」
「それ、しなずち様だけですから。百人に回されてもヒビすら入らないのに、たった一発でぶち抜くとかおかしすぎます。それと、しばらくはお手付き禁止です。五人も連れていかれて、補充の娘達の面倒を見るのが大変なんですよ?」
「は~いっ」
調子の良い返事だけして、娼館に余裕が出来たら真っ先に彼女を頂こうと決心する。
凛々しい女の美しさと、男に媚びるサキュバスの可愛らしさ。
両方を備える彼女の顔を、たった一度で二度と戻れなくなる恐怖に歪めて染める。触手で巻いて組み敷いて、助けを呼ぶ声を、叫びを、懇願を踏みにじって私だけの女に変える。
うん。今すぐにしたいくらい楽しみで愉しみ。
しかし、しばらくは手を出さないと約束してしまったから、新人が一人前になるくらいまでは大人しくしよう。他にやる事もあるのだし、その時が来るまで遠慮と容赦と加減をしておく。
我慢我慢。
「……んっ……ふぅっ…………あっ……」
「っ……んちゅ…………ちゅぷ…………」
喘ぎが漏れ、水音が鳴り続けるベッドをカーテン越しにじぃっと見つめた。
就寝中の一人と一柱の身体に、超一流のサキュバス達が無意識の快楽を刻み込んでいる。
どんな不能でも五分で快楽中毒を発症する拷問法だ。睡眠中に蓄積した快楽信号に脳が慣れ、無いと正常でいられない身体に無理矢理仕込む。
昔は、魔王神軍が好んで使ったと伝え聞く。
起きたら快楽を止めて禁断症状を引き起こし、目の前に餌を吊るして言う事を聞かせる。言いなりになればサキュバスの餌になり、ならなければ更なる責めで廃人一直線。
――――だったのに、ユウトの頑張りは無駄に凄いよ。
「あとどのくらいかかりそう?」
「正直、わかりません。余程の聖人君子でも二日を乗り越えた例はありませんから。それをもう四日も耐えるなんて…………とっくに脳が焼き切れていてもおかしくないんですよ?」
「宣誓騎士の術なのかな……? 確か、立てた誓いに自分を縛る事で、全ての能力を強化するんだっけ? 魂の鼓舞や自己暗示と同系統?」
「何でしょうねぇ? ただ、レレイジュ神は一日目で堕ちてますから、宣誓とは違うかもしれません。試しに明日から一人増やしてみますか?」
「それで死んだらカラミルに恨まれちゃうよ。ニヌの話だと、レレイジュ神の尖兵はユウトだけ。ユウトが死んだらレレイジュは滅びる」
「ままなりませんね。では、私は私のやれることをします。しなずち様もご自身のすべきことをなさってください。――――お慕いしております」
意味ありげな笑みと言葉を残して、彼女はカーテンの向こうに戻って行った。
咄嗟に手を掴んで止めようとしたが、手付き禁止の契約に邪魔された。このままここにいると、彼女が他の男に貫かれる様を見なければならず、私は耐え切れなくなって部屋の外へと逃げ出した。
モヤモヤムカムカ、グルグルグチャグチャ。
心の色が滅茶苦茶になって混沌と回る。大枠は問題なく進んでいるのに、細かな所が問題に見えて優先すべき事項がわからない。
そもそも、私は何のためにここにいて、何をしようとここに来たのか?
どうでもいい。
無性に抱きたい。
「案の定、しなずち殿に粉をかけて来たか。サキュバスクィーンも良くやるよのう?」
「リザ?」
廊下で壁に寄りかかる、真っ白い肌のロリ爆乳に今更気付く。
わからせたくなるような見下し気味の笑みを浮かべて、彼女は私の手を取り胸に抱く。頭を一回二回三回四回、赤ん坊をあやすリズムと力加減でポンポンポンポン叩かれた。
ちょっとイラッと来て、細い触手で二つの先端の入り口をツンツン小突く。
「今、ちょっと機嫌が悪いんだけど?」
「そ、それはすまぬのぅ……いや、しなずち殿を笑いに来たわけではないんじゃよ? しなずち殿があやつの手管に弄されておったから、少しばかり教示せねばと思ってな? ついでに意気消沈している所を慰めながら頂こうなどとは、これっぽっちも考えておらぬよ?」
「そっか。じゃあ、今夜はリザに慰めてもらおうかな? 加減しないから壊れないでね?」
「は、話だけでも聞いて給れっ! 娼婦というのは相手がおらねば糧を得られぬし、相手の払いが良くなければおった所で意味がない! 上得意になりそうなお気に入りが見つかりおったら、それとなく気を引かせて唾をつけるのが慣わしなんじゃ! じゃから、しなずち殿はその辺をちゃんと知った上で、あやつを買いに来るべきなんじゃ!」
「つまり、彼女は本気じゃないだろうから気を付けろってこと?」
「そうそう、そうじゃ!」
笑顔をひきつらせて、リザは盛大に頭を縦に振った。
私を案じてくれたのだと理解しつつ、余計なお世話だと触手で入口を抉じ開ける。中の分岐に沿って幾重にも枝分かれさせ、小刻みに脈動させると大きな悲鳴が一瞬上がった。
小さな体の膝が力なく折れる。
しっかり抱き留めて抱き上げて、私は取っていた部屋へと真っ直ぐ向かった。余計な寄り道なんてせず、もうこの際だから壊れるくらい犯して冒して侵して犯そう。
――――言われなくてもわかってる。
何人もの巫女を迎え、女を知り、奴隷を買い、娼婦と遊んだ。経験人数は既に千を超え、汗の匂いや声色の質、言葉の選びから向けられる本心を察するにまで至った。
その経験が、彼女の言いたかったであろう言葉を代弁する。
『手遅れになる前に迎えに来い』と。
『キサンディア。最新でとびっきり強力な避妊紋をマルドイユの娼婦達に施しておいて。ナレア。リトルレディに言って、娼館『奈落の下敷き』に見込みのある娘達を十人ほど送るよう言って。マイア、ハーロニー。新人の騎士巫女達を部屋に連れて来て。ちょっと早いけど、リザを食べたら全員時忘れ研修を実施する』
『しなずち様ぁ~? 奈落の下敷きの女主人を堕とすつもりぃ~?』
『将来的には、ね。彼女の後継が育つまで待つって契約したから、避妊紋を使って時間を稼ぐ。それと、リザと新入り達には悪いけど、私の鬱憤晴らしに付き合ってもらうよ』
『しなずち様らしくないねぇ~? 奪って与えて奪って奪うのがしなずち様なのにぃ~? もっと良い方法あるよねぇ~?』
念話に割り込んだディユーが、私の指示に異を唱える。
確かに後手に回る手だが、現状取れる中では最善ではないだろうか? それとも、もっと良い手が他にあるとでも?
言葉に出す前に、頭の中にイメージが浮かんだ。
ディユーの考えが、念話のルートを伝って流れてくる。時忘れの牢獄を舞台に十数人が研修をしていて、しかし、それは私の巫女達がやってはいない。
講師も、私ではない。
では、誰が誰を教育している?
「あっ!」
最善の答えに思い至り、私は全力で駆けだした。
そして、自身の至らなさを恥じ、ディユーの指摘に感謝を送る。
後継の成長を待つなんて、確かに私らしくない。育つのが遅いなら早めてしまえば良い。もう何度もやっている事だろうに、何故それが頭から抜け落ちていた?
とにかく、急いでやってしまおう。
「マタタキ、牢獄を借りるよっ」
特製の媚薬香をたっぷり焚き、充満させたウルトラスィート。国王の寝所を思わせる高価な家具や調度品が揃えられ、敷かれる絨毯も相応の品。本来であれば汚れるのはベッドの周辺くらいだろうに、そこら中がビチャビチャだったりパリパリだったり後片付けは大丈夫?
女のはいくらでも吸えるけど、男のは絶対御免だからね?
「あぁ、しなずち様。ユウト様とレレイジュ様はまだお休み中です」
キセルを吹かす娼婦の一人が、私に気付いて声をかけてきた。
壁に寄りかかって気だるげに、汗と涎と色々とを全身の肌に滴らせる。下腹部の紋章が強い魔力を胎動させ、取り込んだ精を全力で魔力へと変換していた。
さすがにこの辺一番のサキュバス達でも、英雄と神の相手はきつかったか。
汗の匂いに、幾分の緊張と後悔が含まれている。もうちょっとで防御を突破される所だったらしく、見てわかる程に疲労が濃い。
少しでも労おうと、私は澄んだ水を抽出してそっと差し出した。
「ありがとうございます」
「進捗はどう?」
「元々の耐性が無かったレレイジュ様はカラミルの虜です。カラミルも満更じゃないみたいで、この件が終わったら辞めていっちゃいそうですね」
「身請けの代金は私が払っておくから安心して。ユウトの方は?」
「主神と違って強情です。素直なのはこっちの方だけで、ちょっと頑張り過ぎて避妊紋を壊されかけちゃいました」
「キサンディアに頼んで、もっと強力なのを組んでもらおう。今使ってるのはいくら何でも脆すぎるよ」
「それ、しなずち様だけですから。百人に回されてもヒビすら入らないのに、たった一発でぶち抜くとかおかしすぎます。それと、しばらくはお手付き禁止です。五人も連れていかれて、補充の娘達の面倒を見るのが大変なんですよ?」
「は~いっ」
調子の良い返事だけして、娼館に余裕が出来たら真っ先に彼女を頂こうと決心する。
凛々しい女の美しさと、男に媚びるサキュバスの可愛らしさ。
両方を備える彼女の顔を、たった一度で二度と戻れなくなる恐怖に歪めて染める。触手で巻いて組み敷いて、助けを呼ぶ声を、叫びを、懇願を踏みにじって私だけの女に変える。
うん。今すぐにしたいくらい楽しみで愉しみ。
しかし、しばらくは手を出さないと約束してしまったから、新人が一人前になるくらいまでは大人しくしよう。他にやる事もあるのだし、その時が来るまで遠慮と容赦と加減をしておく。
我慢我慢。
「……んっ……ふぅっ…………あっ……」
「っ……んちゅ…………ちゅぷ…………」
喘ぎが漏れ、水音が鳴り続けるベッドをカーテン越しにじぃっと見つめた。
就寝中の一人と一柱の身体に、超一流のサキュバス達が無意識の快楽を刻み込んでいる。
どんな不能でも五分で快楽中毒を発症する拷問法だ。睡眠中に蓄積した快楽信号に脳が慣れ、無いと正常でいられない身体に無理矢理仕込む。
昔は、魔王神軍が好んで使ったと伝え聞く。
起きたら快楽を止めて禁断症状を引き起こし、目の前に餌を吊るして言う事を聞かせる。言いなりになればサキュバスの餌になり、ならなければ更なる責めで廃人一直線。
――――だったのに、ユウトの頑張りは無駄に凄いよ。
「あとどのくらいかかりそう?」
「正直、わかりません。余程の聖人君子でも二日を乗り越えた例はありませんから。それをもう四日も耐えるなんて…………とっくに脳が焼き切れていてもおかしくないんですよ?」
「宣誓騎士の術なのかな……? 確か、立てた誓いに自分を縛る事で、全ての能力を強化するんだっけ? 魂の鼓舞や自己暗示と同系統?」
「何でしょうねぇ? ただ、レレイジュ神は一日目で堕ちてますから、宣誓とは違うかもしれません。試しに明日から一人増やしてみますか?」
「それで死んだらカラミルに恨まれちゃうよ。ニヌの話だと、レレイジュ神の尖兵はユウトだけ。ユウトが死んだらレレイジュは滅びる」
「ままなりませんね。では、私は私のやれることをします。しなずち様もご自身のすべきことをなさってください。――――お慕いしております」
意味ありげな笑みと言葉を残して、彼女はカーテンの向こうに戻って行った。
咄嗟に手を掴んで止めようとしたが、手付き禁止の契約に邪魔された。このままここにいると、彼女が他の男に貫かれる様を見なければならず、私は耐え切れなくなって部屋の外へと逃げ出した。
モヤモヤムカムカ、グルグルグチャグチャ。
心の色が滅茶苦茶になって混沌と回る。大枠は問題なく進んでいるのに、細かな所が問題に見えて優先すべき事項がわからない。
そもそも、私は何のためにここにいて、何をしようとここに来たのか?
どうでもいい。
無性に抱きたい。
「案の定、しなずち殿に粉をかけて来たか。サキュバスクィーンも良くやるよのう?」
「リザ?」
廊下で壁に寄りかかる、真っ白い肌のロリ爆乳に今更気付く。
わからせたくなるような見下し気味の笑みを浮かべて、彼女は私の手を取り胸に抱く。頭を一回二回三回四回、赤ん坊をあやすリズムと力加減でポンポンポンポン叩かれた。
ちょっとイラッと来て、細い触手で二つの先端の入り口をツンツン小突く。
「今、ちょっと機嫌が悪いんだけど?」
「そ、それはすまぬのぅ……いや、しなずち殿を笑いに来たわけではないんじゃよ? しなずち殿があやつの手管に弄されておったから、少しばかり教示せねばと思ってな? ついでに意気消沈している所を慰めながら頂こうなどとは、これっぽっちも考えておらぬよ?」
「そっか。じゃあ、今夜はリザに慰めてもらおうかな? 加減しないから壊れないでね?」
「は、話だけでも聞いて給れっ! 娼婦というのは相手がおらねば糧を得られぬし、相手の払いが良くなければおった所で意味がない! 上得意になりそうなお気に入りが見つかりおったら、それとなく気を引かせて唾をつけるのが慣わしなんじゃ! じゃから、しなずち殿はその辺をちゃんと知った上で、あやつを買いに来るべきなんじゃ!」
「つまり、彼女は本気じゃないだろうから気を付けろってこと?」
「そうそう、そうじゃ!」
笑顔をひきつらせて、リザは盛大に頭を縦に振った。
私を案じてくれたのだと理解しつつ、余計なお世話だと触手で入口を抉じ開ける。中の分岐に沿って幾重にも枝分かれさせ、小刻みに脈動させると大きな悲鳴が一瞬上がった。
小さな体の膝が力なく折れる。
しっかり抱き留めて抱き上げて、私は取っていた部屋へと真っ直ぐ向かった。余計な寄り道なんてせず、もうこの際だから壊れるくらい犯して冒して侵して犯そう。
――――言われなくてもわかってる。
何人もの巫女を迎え、女を知り、奴隷を買い、娼婦と遊んだ。経験人数は既に千を超え、汗の匂いや声色の質、言葉の選びから向けられる本心を察するにまで至った。
その経験が、彼女の言いたかったであろう言葉を代弁する。
『手遅れになる前に迎えに来い』と。
『キサンディア。最新でとびっきり強力な避妊紋をマルドイユの娼婦達に施しておいて。ナレア。リトルレディに言って、娼館『奈落の下敷き』に見込みのある娘達を十人ほど送るよう言って。マイア、ハーロニー。新人の騎士巫女達を部屋に連れて来て。ちょっと早いけど、リザを食べたら全員時忘れ研修を実施する』
『しなずち様ぁ~? 奈落の下敷きの女主人を堕とすつもりぃ~?』
『将来的には、ね。彼女の後継が育つまで待つって契約したから、避妊紋を使って時間を稼ぐ。それと、リザと新入り達には悪いけど、私の鬱憤晴らしに付き合ってもらうよ』
『しなずち様らしくないねぇ~? 奪って与えて奪って奪うのがしなずち様なのにぃ~? もっと良い方法あるよねぇ~?』
念話に割り込んだディユーが、私の指示に異を唱える。
確かに後手に回る手だが、現状取れる中では最善ではないだろうか? それとも、もっと良い手が他にあるとでも?
言葉に出す前に、頭の中にイメージが浮かんだ。
ディユーの考えが、念話のルートを伝って流れてくる。時忘れの牢獄を舞台に十数人が研修をしていて、しかし、それは私の巫女達がやってはいない。
講師も、私ではない。
では、誰が誰を教育している?
「あっ!」
最善の答えに思い至り、私は全力で駆けだした。
そして、自身の至らなさを恥じ、ディユーの指摘に感謝を送る。
後継の成長を待つなんて、確かに私らしくない。育つのが遅いなら早めてしまえば良い。もう何度もやっている事だろうに、何故それが頭から抜け落ちていた?
とにかく、急いでやってしまおう。
「マタタキ、牢獄を借りるよっ」
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