しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第127話 揃えば最強の翼と風

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『アレはサカキ・ユウトじゃの』


 羽衣越しに伝わるリザの言葉に、私は幾度目かわからないが頭を抱えた。

 奴隷達を奪った犯人は、現場検証と周辺の聞き込みからレレイジュ教国第一宣誓騎士団とわかった。つまり、今回の事件はレレイジュ神の手によるもので、私は神界再編戦争のルールに縛られて直接の手出しが禁じられている。

 供として連れて来ていた巫女達に追わせるしかなく、私はブラックマーケットの宿で足止めだ。

 カラとカルが慰めてくれているものの、不完全燃焼感が非常に強い。巫女達の羽衣に意識を振り分けて指揮を執ってこそいるが、相手が相手だけに自分の手で捕え、男の尊厳を踏みにじってやりたかった。

 最初の社を土台諸共潰してくれやがったあの野郎は、直接私が女難に落とさないと欠片の欠片も気が済まない。


「第一波はどうなった?」


 憤怒に引かれる意識を戻し、気を引き締めて状況を確認する。

 相手はマヌエル山脈以北に籍を置く英雄の第一位。

 魔術等の適性はないが、剣と大盾を使った重装戦闘の達人だ。こと白兵戦に置いては第二位勇者ガルドーンにも匹敵すると言われ、以前社を襲撃した勇者と英雄の連合軍では前衛の先頭を務めていた。

 ごく普通に、当たり前のように。

 私の差し向ける触手の群れを前にして。


『全部『押し』飛ばされたの。三千の数を七方向に分けて放ってやったのに、一回で済まされたわ』

「流石は能力持ちの世界転移者って所か。忌々しいっ」

『妾も、しなずち殿の眷属になって少しは強ぅなったと思っとったのに…………このままでは自信を無くしてしまうのぅ。もっと強くなりたいのぅ? のぅ?』


 もじもじと内股を擦り、リザは私を求めてきた。

 まだ足りないからもっと欲しい、と。時忘れの牢獄での一年で、一番繋がっていた時間が長かったのはお前だったんだぞ?

 貪欲なのは良いが、少しは加減を覚えて欲しい。

 私だって、やり過ぎて壊さないように我慢しているんだから。


「ご褒美が欲しければわかってるよね?」

『無論じゃ。ヒュレイン、行くぞぇ! カロステン最強コンビの力と連携を、しなずち殿にご披露と行こうぞ!』

『はーいっ! 上手くいったら丸呑みジュプジュプのボコォッ!でお願いしまーす!』

「はいはい。ナレア、ディユー、ィエンテは犯人一味と奴隷達を追って。マイアとハーロニーは敵後方に回り込んで潜伏。万が一、リザとヒュレインから奴が逃げたら特製の一番をぶち込んでやって」

『『『『『了解!』』』』』


 脳裏に浮かぶ地図上で、七つの意識が四方向に散る。

 街道上の正面からリザとヒュレイン、少し遅れてナレア達三人、左右の森の中にマイアとハーロニー。

 相手はあくまで迎え撃つ算段のようだ。全身白甲冑のユウトを先頭に、いつでも飛び出せるように構える斧二刀流の軽装騎士、細い糸束を両手と両腕に巻くポニテ美女――――っ!?


「マイア、ハーロニー! 潜って退け!」


 咄嗟に指示を出し、二人の露出した肌を薄い血膜で隙間なく覆う。

 マイアは無事に地面に降りて潜り、ハーロニーは途中で足を引っかけた。危険な体勢で落下しかけ、触手の補助を入れて地中に押し込む。

 熱でも音でも感知できない糸の結界。

 魔覚で探ると、森の中に凄まじい規模で張り巡らせてあるのがわかる。生身で触れれば斬り刻まれてバラバラにされかねない。更に、棲息する魔獣達が傀儡人形の様に操られ、リザ達に向かって近づいて来ていた。

 傀儡医師ニヌ・エレイソン。

 医聖アシィナ・リサイアの弟子の一人で、外科手術を得意とする戦場医師だ。魔力で作った糸を用いて、手術や結界構築、索敵、諜報と多分野の任務を同時にこなす超一流。

 彼女がユウトと組んでいる?

 幾らなんでもあんまりだ。地中はユウトの能力で押し潰されるから使えず、地の利を完全に奪われている。すぐの突破は難しく、このままだと奴隷達を取り戻せない。

 どうする?


『何じゃ、小賢しいのぅ』


 楽しそうに笑うリザが、四千のブーメランを生成して魔力の奔流に放り込んだ。

 五つに分岐して急加速し、地面すれすれを横一線に薙ぎ払う。

 人の胴回り程ある木々が切られて倒れ、森の中に蛇行する五本の道が出来上がる。街道と合わせれば合計六つ。木々の間に張られた糸も無くなり、これで安全な進行路が五つも確保できた。

 しかも、相手は森が遮って視覚上確認できない。


「リザ。ご褒美、何が良いか考えておいて」

『妾が欲しいのはしなずち殿じゃて。それ以外は何も要らんわ』

『リザずるぃぃぃぃ。もう、私だってやっちゃうよっ。しなずち様、見てて見てて!』


 羽衣から突撃用の大盾を作り、ヒュレインは右後ろ脚で二回土を蹴った。

 逞しい馬体と麗しい上体を光が包み、風を纏わせて髪と毛並みをふわりと揺らす。一歩目を踏み出すと風の精霊達がざわめきだし、二歩三歩四歩と駆け出すと盛大な大合唱で彼女を送り出す。

 十歩目で、姿が消えた。

 ヒュレインの羽衣に視覚を移し、世界を置き去りにして迫る白甲冑の姿を見る。このままなら正面衝突は免れず、しかし、急に視界が真横にずれて掠める程度で過ぎ去ってしまった。

 あの速度を横から押したのか。

 本当に、元日本人は色々な面で度し難い。


『次は妾の翼と合わせるぞい。お主らは好きな道で行くが良かろ』

『ありがとう、リザちゃん。今度、私達の触手でも可愛がってあげるね』

『わ、妾にはしなずち殿が――――』

『孕ませちゃったらごめんね?』

『助けて給う! 助けて給う、しなずち殿!』

「その辺の話は終わった後で。それと、ナレアは女性に対する生殖能力はないから見せかけだけだよ」

『んもぅ、しなずちちゃんのいけずぅ…………あんっ』


 ナレアの尻を羽衣で軽く叩き、任への集中を諭し促す。

 リザのおかげで目途が立った。後はいつも通り、一方的に蹂躙して終わらせる。


「カル。M男向けの売春宿を予約してきて。嬢を五人、一週間貸し切りの強制調教コースで」


 可能であれば生かしたまま。

 死んだ方が良かったと思わせてやる。
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