しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第125話 奴隷オークション 復讐編

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「まずは無事に摘発を逃れられた事を喜び合い、骨を折ってくれた若人達に賛辞を送ろうっ! 我らが主神しなずちと尖兵カラ、カルに惜しみない拍手をっ!」


 殆ど裸体に等しいどぎついハイレグ衣装に身を包み、オペラ劇場を思わせる会場のステージで一人のロリババアが手を叩いた。

 盛大で盛大で盛大な感謝が、広々とした空間を端まで満たす。

 普段オークションが行われているここに、今は主だった裏商人の大半が集まっている。目的は奴隷のオークションだが、今回に限っては他と比べて毛色が違う。

 出品者は、私。

 出品する奴隷は、先程捕縛したレレイジュ国教騎士団の面々三百人余り。

 簡単に言えば、参加者達の目的は復讐だ。ブラックマーケットのみならず、様々な場所でレレイジュ教国は裏取引を摘発している。一夜で全財産を失った者も数多く、直接の怨敵がいれば金に糸目は付けないだろう。

 私は、手元に置く九人の娘を側に控えさせ、首輪に繋がった鎖をチャラリと鳴らした。


「皆々様。再び三度の災難に遭われかけた不運をお悔やみ申し、復讐の機会に巡り合えた幸運をお喜び申し上げます。そして此度の三百二十三名の内、この九名を私の奴隷へ落とす事をお許しください」

「先頭の娘を買わせてくれ! 息子を殺されたんだ! 幾らだって払うぞ!」

「私は奥の二人だ! 拷問された妻と娘の前で、誰とも知らない男の子を産ませてやる!」

「いいや、一番奥のは俺が――――」


 怒りと恨みが渦を巻き、参加者達の感情をかき混ぜ煽る。

 良い傾向だ。サクラを使うまでもなく、彼らの購買意欲はどこまでも高い。私用の九人は売れないとしても、それ以外を狙う者達の心の火を扇いで吹いて燃え盛らせる。

 とはいえ、暴動が起きてはいけないからちょっとお遊びを……。


「憤怒収まらぬのはわかるが抑えよ。しなずちもお主らの憤りを理解しておる。売りは出来んが、その代わりの用意はあるぞ?」

「オークションナンバー一から二十は、カルアンド帝国製の最新型拷問用性具です。その実演を彼女達にしてもらうのですが、遠隔駆動式の為、どなたかに操作して頂く必要があります」

「落札者はオークションが終わるまで、好きに使って構わんらしい。ただ、使える場所は限りがある。お目当ての娘に使えるかは金と運次第かの? ほれ、あんな感じじゃ」


 ロリババアが指を鳴らし、移動台に乗せられた二十個の性具がステージに上げられる。

 普通の人間が使えるのか怪しい、異形の品々に歓声と悲鳴が上がった。基本的には全て大型で、比較的小型の物でも肺の空気を全部吐き出しかねないえぐい形と大きさをしている。

 傍らで、悲痛な嗚咽が漏れ聞こえた。

 悲劇のヒロインっぽく涙を流している所悪いが、因果応報だ。善行であれ悪行であれ、その責任と代償は巡り巡って還って来る。

 泣いている彼女は証拠集めの為にターゲットの家族をヤク漬けにしていたというし、その分が一気に戻ってきたとも言えるだろう。

 あぁ、でもどうしよう。この顔が被虐に歪んで、声にならない喘ぎを漏らすかと思うと…………物凄く滾る。

 小さいのから段々大きくしていこうかと思ったけど、一番大きいのを一番最初に変えようかな?

 三十の性具を内蔵した時間停止式拷問ケースが一番の目玉だ。責めの際は時間を止め、ある程度で時間を戻して止めていた分の快楽を一気に味合わせる。

 他の小さいのとの併用も出来るし、いきなりこれにしても良いかもしれない。

 うん。そうしよう。


「バルダット、最初はアレに変更で」

「かしこまりました。リトルレディ様としなずち様はあちらでお楽しみください」

「リトルレディ?」

「うむ、後は任せる」


 私の疑問を聞き流し、ロリババアは平たい胸を張ってオーナー席へと引っ込んでいった。

 後を追って、彼女の隣に腰掛ける。

 半年前まで御年八十一のしわくちゃ婆さんだったのが、今はほっそりぷにぷにの外見ロリに変貌している。旦那に訊いたら、私が市場に流した若返り薬を買い占めて毎日飲んでいたというからほんともう無理スンナ。

 過剰摂取しないように味をかなり苦めにしたのに……。

 やり過ぎて行き過ぎてはっちゃけて、数か月前からブラックマーケットのアイドル扱い? 新参にならそれで通るかもしれないけど、以前を知っている身からすれば違和感以外仕事をしない。

 試しに、前の呼び名で呼んでみる。


「グランマ」

「リトルレディと呼びな」

「ブラックマーケットで私の信仰を広めたのってグランマだろ? 何でヴィラの方を広めてくれなかったんだよ」

「ココに繁栄なんて合うものか。性と悪徳による秩序と退廃こそ裏社会では求められる。表で手に入るモノは表で仕入れれば良いんだよ」

「わからなくはないけど…………あと、若返り過ぎ。悪い影響があったらいけないから、旦那共々後で精密検査するから」

「あいあい」


 全く悪びれもせず、グラン――――リトルレディはオークションの観賞を始めた。

 金貨二十枚から始まった拷問ケースが、三百六十二枚でたった今落札された。最初の贄には一番先頭にいた娘が選ばれ、その場で鎧や服を引き裂かれてケースの中に押し込まれていく。

 悲鳴を上げて抵抗し、四肢を拘束されると乱暴な言葉で威嚇をし出す。その様子に興奮したのか癇に障ったのか、落札した中年男性は躊躇いなく最大サイズを選択した。

 内部の装具が切り替わり、ゆっくりゆっくり進んでいく。

 最初は時間を止めずに声を楽しみ、慣れてきた所で時間停止して一気に落とすつもりらしい。あまり面白みがないが、次の品に繋ぐ余興としては十分な効果が得られるだろう。


「それで? 私に何を訊きたいんだい?」


 小馬鹿にするような微笑みを向けられ、わからせたくなる衝動を必死に必死にとにかく抑えた。

 実年齢と旦那がいる事実を反芻し、影に潜むカラとカルを呼び出し侍らせる。柔らかな白い肌とモフモフの白い尻尾に心が落ち着き、念のため深呼吸も一つしてから小憎らしい顔をもう一度見据えた。

 大丈夫。大丈夫だよ、私。


「北の影響はどの程度?」

「三国とも物価が上がったねぇ。作物の収穫は例年通りなのに、便乗値上げが横行してる。多少の餓死者がでるんじゃないかって大臣連中は見てるよ」

「各国の対応は?」

「グランガとバルネバは、お前さんの庇護下に入って乗り切ろうって算段さ。レレイジュは経済不安に加えてブラックマーケットまで掌握されたらたまらないって、急に摘発を強化してきた。近い内、レレイジュ神の尖兵もやってくるだろ」

「レレイジュ神は経済戦争に関与していない?」

「私の見立てでは白だね。誓いの神は騎士道ごっこで忙しいのさ。お前さんの様に多少の金勘定が出来れば、騎士共も押収品の横流しなんてしなくて良いのにねぇ……」


 憐れなもんだと、目を細めて呆れから来る嘆息を一つ。

 自分の管轄域を守れていないなら、レレイジュ神は黒幕の線から外れる。むしろ自らが司る『誓い』に傾倒し過ぎて、十分な対策がとれていないらしい。

 現場は現場で荒れていて、今回の件でかなりの数の騎士を失いもした。

 後残されているのは玉砕か従僕か。プライドの高い男神と言うし、もし会う事があれば渡界か滅神を勧めるとしよう。

 無能な野郎に用はない。


「そうそう。オークションが終わったらグランガの高官と会っておくれ。お前さんが買い逃した奴隷兵を差し出してくれるって言っていたよ」

「あの娘を? わかった、絶対に行く。バルネバの方はもう根回し済み?」

「あんまり表の顔は使いたくないんだけどねぇ…………今回ばっかりは仕方ないさ。国の存亡がかかってるんだから」

「心中お察し申し上げます。バルネバ精霊国首長夫人」


 リトルレディの表の肩書を口に出し、酸っぱい顔をされて頭を叩かれた。

 ここにいる者なら誰もが知っている事実だが、彼女にとっては良い事でも面白い事でもない。

 彼女はブラックマーケットの運営を担う一族に生まれ、僅か十歳の頃から六角連合の大幹部として辣腕を振るっていた。

 表では大商会の息女として社交界を飛び回り、裏では男顔負けの非道に靴と服を血で染める。

 死ぬまでずっとそうすると決め、それを覆したのが今の旦那だ。ある秘密のパーティでダンスを共にし、興が乗って寝所に誘い、思いの外の凶暴に心と身体を屈服させられ、気が付いた時には戻れない所にまでいた。

 朝日と共に冴えた頭で、どこまでも後悔したと聞いている。

 表と裏が交われば、遮る境が曖昧になる。ブラックマーケット五百年の歴史が揺らぐ可能性もあり、しかし、既に彼女の腹には取り返しのつかない命が宿っていた。

 紆余曲折。ロマンスに次ぐロマンス。試練の様な苦難の連続に決して断たれなかった二人の愛。

 八割くらい盛りに盛っている昔話だったが、彼女は表と裏をしっかり分ける事で適切に対処してきた。ただ、今回ばかりはそれで収まりきらず、禁忌にしてきた手段を使わざるを得なかった、と。

 しっかりやり切らないと、次回合わせる顔がないな。


「で? 何か手はあるのかい?」

「うん。うちのブレインが言うには、物価上昇は需要と供給のバランスが需要過多となって発生する。今の状況では供給を上げる事は出来ないので、一時的に需要を下げる事で上昇を鈍化させ、市場安定の機会を各国に与えるのだと」

「需要を下げるって……つまりは戦争で口減らしかい? 神様になって命の価値が軽くなりでもしたのか? 生憎、国を預かる身としてその案には乗れないよ」

「違う違う。もっとココらしいやり方だよ」


 私はカラとカルに言って、影の中から大人程の大きさもある大きな袋を取り出させた。

 かなりの重量で、床がミシミシと嫌な音を立てる。板が割れないように神術で重さを軽減するが、それでも尚重く重く重い。

 あまり長時間は置いておけない。

 リトルレディに中身を見せるべく、触手で持ち上げて口の部分を緩めて開ける。溢れた金貨が滝の様に流れ出し、オークションの掛け声に混じってジャラジャラジャラジャラ落ちて転がる。

 おおよその数で、金貨二十万枚。

 今回の奴隷市の軍資金だ。


「私が買った奴隷の分、困窮する人々を奴隷として仕入れて欲しいんだ」
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