しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第115話 女→男←女

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「坊や、まだ捕まらないのかい?」


 全身から触手と触腕を展開する私を、挑発するようにアンジェラは煽った。

 ドガの連れである褐色美女を四つん這いにさせて、いやらしい手付きで尻を撫でている。露出の多いビキニタイプのドレスアーマーは隙間が多く、肌の露出も多いから素肌をいくらでも触りたい放題だ。

 羨ましくて涙が出る。

 彼女がドルトマを想っていなければ、ドガから奪ってモノにしてやりたい。アンジェラやシムナ達と血縁だと言うし、シムカも並べて四人を一度になんて素晴らしすぎて吐血しかねない。

 でもダメだ。不貞は私の信念に反する。

 非常に、非常に非常に口惜しい事で、一秒我慢するだけで欲と衝動が内側から弾けそうになる。このままでは私は私を裏切りかねず――――あぁ、良い捌け口がそこにいたか。

 匂いからして生娘みたいだし、男同士の良さを学ばせたら男と女の良さを擦り込もう。リエラより頑丈そうだから、最初から六穴も良いかもしれない。

 社を壊した分の対価を、その綺麗な身体で払ってもらうとしよう。


「すばしっこい上にパワーが凄い。勘も良いから一気に捕まえようとすると社が全壊するかも?」

「もうずいぶん破壊されているぞ? 一階辺りは壁が残らず破られてる。ここも大所帯になってきたし、いっそ崩してもう一度建て直したらどうだ?」

「自分の部屋が欲しいねぇ。リタと相部屋でちょっと広めに頼むよ」

「私はレスティとラスティが一緒で。しなずち様が夜這いしてこない夜は三人で慰め合ってるからいつでも来て良いぞ?」

「また棟梁に怒られながら建て直しかぁ~…………あの人、命の恩人であっても容赦ないから苦手なんだよぉ~……」


 最初と二回目の社建設を思い出し、辛い記憶に涙を流す。

 特別に成形加工した木材を繋ぎ合わせ、金具と併用する事で社の骨組みは仕上がっている。施工は全部私がしていて、しかし、建築の知識に乏しい為、腕と知識に優れた大工の棟梁に監督してもらっていた。

 削りが均一でない、成形が皮一枚深すぎる、材木に含まれる水分量と木目を読め、水源池のすぐそばなんだから地盤の緩さに気を付けろ。

 一体何度怒声と罵声を浴びた事か。全て大事な内容なので一つ一つ事細かに思い出せるが、出来る事なら二度と思い出したくはなかった。

 あぁ、もう…………。


「棟梁はしなずち様を気に入っているぞ? 『覚えが悪いし呑み込みも悪いが、手前ぇの女の為に手抜きはしねぇ。要領が良いだけのクソ共なんかよりずっと鍛えがいがあらぁ』と」

「え? そ、そう? そう、なの? えへへっ……」

「気を緩めるんじゃないよ、坊や。追い方が雑になってるし、そういう手合いは照れ隠しにもっと厳しくしていくもんだ。引き締めてしっかりやらないと尻を蹴り上げられるよ?」

「アンジェラ姉様。今のしなずち様には蹴りより鞭の方が良いんじゃないか? 腕とか腹とかに痣を作って、舐め回して慰めて縛り付けて跨って搾り取ると……」

「良いねぇ。出立前にはそれで、夜巫女衆全員で回すとしようか。打ち手はシムナに任せるよ。私がやると加減できずに両断しそうだからねぇ」

「嫌っ、酷い事しないで……っ」


 黒くて黒くて真っ黒黒の笑みが二つ、私を見つめて舌なめずりを二回と三回。

 怯えて縮こまる少年の身体を、この二人は捕食対象にしか見ていない。シムナは五又の鞭を羽衣から作って素振りをし、アンジェラは右の人差し指と中指を舐めながら左で褐色の裂け目を深く浅くと繰り返している。

 もう犯る気満々だ。

 だが待ってほしい。私は今、常識も良識もない駄女神を教育する為に汗水を流している。頑張っている相手にそんな非道をするのは人道にもとり、仮にも神の尖兵としてあるまじき行為と言えよう。

 だからちょっと、ちょっと待とう?

 都合の良い肉人形でも何でもやるから、痛いのは、ね?

 ね?

 そんな目で見ないで…………。


「しなずち様は散々私達を犯してきたんだ。今更犯されても仕方ない」

「シムナは最初から最後までずっと加害者側だったよね!? 被害者になった事ないよね!?」

「私に恥をかかせ続けたしなずち様が悪い。つまりは私こそが被害者だ。当然の代償を要求して取り立てているだけだから、何ら落ち度はないだろう?」

「その論理で言うと私も被害者だねぇ? 坊やに無理矢理犯されて、犯されて犯されて犯されて何回注がれたかわからないよ。少し多めに搾り取っても、何もおかしくはないんじゃないかい?」

「あっ、こ、こっちに来ないでっ! 嫌、やめて、だれか――――っ!」


 こっちが追い詰められている中、追いかけている先でドガの足を触手が捕えた。

 何ていう酷いタイミングだ。よりにもよってという言葉が一番似合い、仕方なく足から腿、胴、胸、肩、腕から手へと四肢を縛る。身動きが取れないようにしっかり仕上げ、特級の媚薬原液を塗りたくって思考も理性も奪い去る。

 向こうに本体を移して、ドガを連れて山中に逃げる?

 ダメだ。山狩りに遭って狩り立てられるのがオチ。何とかこの二人を説き伏せて組み伏せる方が上手くいく可能性は高く、しかし、未だ眷属に出来ていないアンジェラすら、私の捕縛からは容易く逃れて反撃してくる。

 どうすれば良いの……?


(しなずち殿、しなずち殿……)

(!? アンダル殿!? 助けて――――)

(諦めなさい)

(畜生がっ!)


 悪足掻きと知りつつ、私は触手も触腕も全部崩して解して融けた。

 滑らかな液体になり、あらゆる隙間を通って下へと向かう。アンジェラとシムナは追跡を開始し、本当にどういう方法なのか、正確に私の意識が宿る身体の後をついてきていた。

 途中でドガを離れの自室に連れ込むよう見せかけ、気を引いても全く引っかからない。

 水脈に体の一部を流して、遠地に擬似転移する事も考える。だが、どこに行き着くかは全くの不明で、地域によっては『神は直接戦争に参加してはならない』ルールを破ってしまうかもしれない。

 なら次点は――――


「皆っ! ちょっと視察してくるから後片付けよろしく! 二日か三日で戻るよ!」


 水源に注ぐ水脈の一つに身体を送り、流れに逆らってとにかく進む。

 眷属相手には眷属だ。シムカを除いてシムナを抑えられるのは、序列二位の彼女しかいない。

 対価に色々要求されても、きっと今よりはマシな筈。過ぎる不安を必死に抑え、自分に言い聞かせて私は急いだ。

 ナルグカ樹海に。

 アシィナの下に。
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